続くカオス
急に仁王立ちで立ち上がった少女は腰に手をあてどう堂々としている。
横にいる2人の反応は、
「おい、なんだ俺とは今の。何が言いたかったんだこのチビすけ。シャラップの後にザ・子供って言わなかったか?」
「雑魚共って言いたかったんじゃなかしら。ちょとあんたの方が付き合い長いんだからちゃんと翻訳しなさいよ」
仁王立ちしてる少女を挟んで、何とも残念なものを見る目をしている。
少女は少女で顔を赤くしながらプルプルしてる。
「映画かなにかで聞きかじった言葉を使いたかったんだろうな。子供みたいだ」
「ねぇ、舞ちゃんって本当に三年生だっけ?」
「見た目はともかく年齢的には一応」
あの見た目で上級生なんだ。
言い間違いや台詞より、そっちに驚かされるな。
そして発言した本人はというと、目の前でダメ出しされて恥ずかしのか両手で顔を覆ってプルプル震えている。
小動物みたいで保護欲が刺激されるな。
率直に言えば、可愛い。
具体的にはクッションみたいに膝に抱き抱えたい。
プルプルしてるとこなんて小動物を思わせるほどだ。
周囲の冷めた視線や俺や萌花の慈愛の視線に耐えきれなくなり、
「私帰る!」
と、捨て台詞残して扉から出て行った。
出ていってしまった…。
そう、一触即発の2人をそのままに。
「おい、萌花、部長を慰めにいってやれよ。同じ貧乳同士だし、いろいろ共感してやれるだろ?」
「しつこいよ変態クソ童貞野郎。鼻から万年筆ぶっさして脳ミソ抉ってやるからビビってないで、かかかってきなよ」
まさに一触即発。
両者が動き出す刹那、バチっと音がして2人が体制を代えたり。
そして奥に座っている生徒に、
「何すんのよ、ゲーマーっ!?」
と指先を突きつけた。
その先にはパーカーを被り机の上にあるノートパソコンの前で携帯ゲームに興じる小柄な少女がいる。
最初からいたのに、さっきまでの流れは一切お構い無しに淡々と抑揚のない事務的な様子で答えた。
「さっきからギャーギャーと五月蠅いんですよ、強気受けにエセ萌女。こっちが集中できないじゃないですか」
「だからって不意打ちする!?」
「今良いところなんだから。ボクのゲームの邪魔する奴は、誰であろうがどんな手を使ってでも静かにさせますよ」
凄まじいジト目を向ける少女には有無を言わせぬ迫力があった。
あれはやると言ったら本当に何が何でもやる目だ、思わされる。
「おい強気受け、今すぐ両手をあ上げないと鼻に電極ぶっさして高圧電流流すよ」
「2人して俺の鼻に何の恨みがあるんですかねぇ!?」
そしてチっと舌打ちしたものの双方、矛を収めてくれたようだ。
萌花はいつの間にか握りしめていた万年筆を笑顔で懐にしまい、圭は両手を上げ無抵抗を示している。
つまり物理的に矛を収めたってことか。
……てかさ、いつ万年筆を取り出したんだよ。
それ以前に、あの舌打ちは本気で突き刺す気だったんじゃないの?今時の若者怖ぇ……。