お出かけお出かけタノシイナ 映画
週末の土曜日。
俺達は舞の誘い――もとい、脅迫により駅前に集合していた。
部員達の私服は初めてみたが、圭は全身、黒を基調とした服で地味にしている。
逆に萌花はセンスがいいのか流行のファッションを着こなしている。
予定はどうなってるのか尋ねようにも、
二人揃って神妙な顔して下を向いたまま微妙に震えている。
待ち合わせ時間から五分ほど待っていると、制服姿の舞が着ぐるみパジャマの芹を引きずってやって来た。
俺達が呆然としていると、舞はウキウキしながら駆け寄って来た。
そして何かを思い出したように手を打つと、
「ごっめ~ん、遅れちゃった。待った?」
いかにもわざとらしく言ってきた。
「待ったとかは割とどうでもいいんですけど、その右手に持っている芹はどうしたんですか?」
舞は右手にぶら下げている芹へ目をやり「コレがどうしたの」というように首を傾げた。
「最後まで頑なに忙しいって言うもんですから……仕方ないので持ってきました!」
仕方ないって、持ってきたって、あんた……。
やべぇ、ツッコめねぇ。
寝てるのか失神してるのかは判断できないけど、無理やり連れてきたのか。
話題かえよう。
「そ、それで今日はどこに行くんですか?」
「まずは映画ですね。流行りの映画を調べて、ちゃんと前売り券も買ってきてますよ」
「それってどんな映画ですか?」
流行ってて事前に調べたのなら、そんな変なとことじゃないだろう。
そう思ったのはやっぱり甘かった。
「エド・ゲインvsゾンビ~ズ、腸をぶちまけろって映画ですよ」
「部長、食事前ですし、そういうのは止めておきませんか?」
「太陽君はゾンビとか苦手なんですか?」
「別にゾンビ映画どうこうじゃなくて、昼飯前にこのチョイスはどうかとですね」
「はいはい、そんなに怖いなら私が手でも繋いでてあげますから。行きますよ~」
舞は右手に芹、左手に俺を掴んだまま映画館へ向かった。
後ろからついてくる圭と萌花は無言のままだ。
舞の笑顔に脅されるように重い足取りで。
俺達は映画館でたっぷりと三時間半〝エド・ゲインvsゾンビズ、腸をぶちまけろ〟を観る羽目になった。
その内容は最初から最後まで、内臓が飛び出したり、頭が弾け飛んだり、ゾンビの体を器にゾンビがゾンビを食べていたりと、ずっとスプラッタでグロテスクだった。
「内容はともかく、爽快感が良かったですね!」
「だねー。まさか最後に全員がゾンビになって爆死とか、爆笑しそうになったわよ!」
女子二人、舞と萌花はとても楽しかったようで、二人で映画の内容を楽しげに話し合っている。
後ろから付いていく太陽と圭は、口を押さえたまま黙り込んでいた。
映画の内容もショッキングだったこともあるが、舞達が具体的に映画の内容を話すものだから、鮮明にそのシーンを思い出しいた。
「……」
「どうしたんですか、二人とも?」
女子と男子の間を着ぐるみ姿のままポテポテ歩いていた芹が振り返る。
映画館でずっと眠っていて、映画が終わった時に起きたようだ。
そして舞達の会話からどんな作品であったかを推察していた。
「そういえば、二人は先ほどの映画のCM見たことありますか?」
「さっきの映画にそんなのがあるなんて初めて知ったぞ」
「んだんだ」
「観客が『凄い爽快感、最後があんなになるなんてって』言うくらいで中身が伝わらなくて有名ですよ。
予告の内容も〝先の読めないストーリー、そして衝撃のラスト〟って大字で画面覆うくらいですし」
「衝撃すぎるのも限度があるだろうよ!」
圭のツッコミが木霊した。
前を歩く女子2人がこれからの行動を話しあっている。
「で、次はどうするの?」
「次は食事ですよ。有名なホルモン焼きのお店に予約入れています!」
「楽しみね。アタシお腹空いてるから、いっぱい食べるわよ~!」
舞が後ろにいる俺達へ振り返った。
青い顔をしている男二人の様子がおかしいことにやっと気づいたようだ。
「どうしたんですか、二人とも? 青い顔でブンブン首を振って」
「あんな映画観た後にホルモンなんて食えるか!」
「主人公がゾンビや人間の内臓食ってるシーン思い出しちまうじゃねーかよ」
「人間くらいでなんですか今更」
「「「えっ!?」」」
「普段食べるような牛や豚も同じ哺乳類なんですから」
「舞ちゃん、驚かせないでよ、びっくりした…」
「悪食でもカニバッたりはしてないよな、なぁ?」
「かにば?」
「知らないなら知らないままにしとこう!」
「まぁいいですけど。さっきから何ですか? 好き嫌いはいけませんよ?」
「確かにそうだけど! あの映画観た後は流石に食いたくねーよ!」
「もう予約取ってるんですから、わがまま言わずに行きますよ」
「「やめてくれー!」」
太陽と圭は舞に引きずられてホルモン焼き屋に連行されて行くのだった。




