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世界は異能で溢れているが、それがどうした  作者: 猫も犬も猫目である
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友達ってなんだろう

部室でダラダラしている皆を見回し、太陽はふとを口走った。


「そういえば、みんな部室に早くから来てるけど用事とかないの?」


太陽も授業が終わったら早めに来るようにしている。

しかしクラスメイト達と話したりして遅れることもある。


芹とかはゲームの発売日があるとかで来ない日もあるが。

それでも全員、早い時間から部室にいるのである。


「私はクラスにいても特にすることもないですしね」

「アタシはたまに遅れるけどね。早く舞ちゃんに会いたいし、早めに来るようにしてるわ」


「友達と遊んだりしないのか?」

そう言った刹那、ピシッっと空気が凍る音がした。

萌花と芹が目を見開いている。


そして、

「……トモ、ダチ? なぁに、それ?」

「字面なら見た覚えがありますね。創作物ですよ。つまりはフィクションです」


そんな二人の会話にあっけにとられた。

そして舞が自信満々に、まるで諭すように肩を叩いてきた。


「太陽君。友達なんて存在を信じていいのは子供の時だけですよ。ドラマや漫画にもこれらはフィクションですって書いてるじゃないですか。つまり友達なんてものは作り物、想像の産物なんですよ?」


そう話す舞の目は真剣そのものであり、かつ憐みにも似た声で太陽に言い聞かせる。


これは会話が通じないんじゃなくて、共通認識に齟齬があるような感じとでも言おうか。 


太陽は自分が異次元に迷い込んだような錯覚に陥った。


もしかして友人だと思っているのは俺だけで、相手にとってはただ単に話す人と思われているんじゃないか。

そもそも友達ってのはちゃんとした定義もないし、自分や相手の認識によるもので……そんな哲学的なことなのかと思考の渦に落ちそうになっていく。


混乱した太陽が、ハッとなって部室にいる人達を見渡した。


そして重大なことに気がつく。俺が間違っていた、と。


この人達は本当の友達や友情などについて言っているんじゃない。

とどのつまりコイツらは――。


「友達いないのか」


その言葉に舞と萌花は目を泳がせ、しどろもどろになりながらもまくし立てた。


「み、みんなの見る目がないだけなんですよ。もしくは高値の花って言うんですか、話しかけ辛いって感じです」


「そうそう、アタシもそんな感じよ。孤高に咲き誇る一輪の花って感じでさ、クラスの皆が物怖じしちゃうんじゃないかしらね」


この二人の言い訳を翻訳するなら、同じ教室にいるのに目を合わせても逸らされて声もかけてもらえない。

そして自分から声をかけても逃げられる、と。


「つまりボッチなんだな」

「「はっきり言うなっ!」」


それだけ言うと、舞と萌花は机へ突っ伏した。


 よほど本当のことを言われてショックを受けたようだ。


圭が横から話に入ってきた。

「萌花のほうは知らないが、舞はクラスで浮いてるな」

「余計なこと言わないでくださいよ、圭」


「浮いてるってか、引かれてる」


 そう言った圭は、嫌なことでも思い出したのか急に遠い目になる。


「何したんだよ?」

「私は変なことなんて、し、してませんよ?」


そう言って明後日の方を向き、口笛を吹いてた。

けど上手く吹けないようで、口でぴゅーぴゅー言ってるだけだ。


そんな舞を怪訝に見ていると、げんなりしながらも圭が教えてくれた。


「手遊びで消しゴムちぎるのがあるじゃないか。舞の場合、消しゴムの代わりに教科書や辞書をちぎってるんだよ」


「……それは一ページづつだよな?」


「教科書って言っただろ?」

聞きたくなかったんだよ。


「だって、全部覚えててもういらなかったんですもん」


そう言いほっぺたを膨らまして可愛くむくれる舞だが、この小柄の少女が素手で辞書を引き裂いていると可愛さよりも恐怖だ。


夏場の動物園で氷にじゃれつくシロクマを見て可愛いと思う。

しかし目の前でそれを見ると恐怖、という感じだろうか。


距離があれば可愛いけど、近くだと恐ろしいんだ。


「うん、それは引かれるな」

「うぅ……」

しゅんと項垂れている姿は可愛いとは思う。

……机を掌で抉りさえなければ本当に。


「わ、私のことはいいんです。それより先輩として一年生のことが気になります。芹はどうしてなんですか?」


舞は自分の話を避けるために、部内でただ一人の一年に話を振った。

「ボクはクラスで話す人がいないだけですよ。学校にいる間は基本的にヘッドフォン着けてゲームしてるから、声かけられても気づかないからってのもありますが」

「おい」


「つまり誰もボクの内側にまで気持ちを届かせられなかったと」

「自業自得のボッチじゃねぇか」

「大丈夫です。三日に一度はメル友の幼馴染に生存確認のメールに返信してますから」

「それ何も大丈夫じゃねぇよ、いろいろ末期だよ!」


この部活はダメ人間の巣窟なのか。

唯一、マトモな一般人として耐えられるか心配になってきた。

もし時間を遡れることはできるなら、過去に戻って入部届にサインする自分をぶん殴ってやりたい。


そこへ舞が、やり取りが終わるのを見計らって声をかけた。

「そんなことよりも、そろそろ部活始めますよ」


この部長、自分から芹の交友関係が気になるって言っといて、そんなこと扱いかよ。


本当にいろいろひどい部員たちだ。


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