これが世界の日常です?
不定期に投稿してきます。
誰か読んでくれたら嬉しいです。
やっぱりまだ馴染めないなぁ。
夕暮れの帰り道、周囲を見渡して改めて思う。
転入してからの生活は今までと少し違うが、
世界が一遍したと言うより、半歩ズレた感覚がある。
前と同じでもあるし、些細な部分が違ってもいる。
道には徒歩て歩く生徒もいれば、自転車で走っている生徒
バスや電車で通学している生徒もいる。
変わっているのじゃ翼を生やして飛んでいる人もいれば、車より早く走っている人まで様々だ。
前にいた場所じゃ考えられないよなぁ。
改めて、違う場所に来たんだと実感させられる。
慣れればこれが普通なんだと思えるほど、周囲の人は異能者に対して特別な視線を向けていなかった。
そう環境は変わったが、自分の生活に起きた変化はほとんどなかったのだ。
あるとすれば、普段なら話のネタにも登らない異能の話題や、学校の授業に『異能』という科目が増えたくらいだろう。
前にいた場所は異能なんてろくに見かけなかったしな。
もしかして前にいた所の方が特殊な環境だったんだろうか。
今さら考えても仕方ない事だ。
いつか両親に尋ねてみよう。
新しい環境に馴染むこと。
それを目標に帰路についた。
そんな話をした日から数日だった月曜日。
朝から実に奇妙な状況下に置かれていた。
登校してから教室で、鈴木やクラスメイトたちにどんな部活があるのか教えもらっていたんだ。
そして、けど気づいたらここにいた。
……。
そう言ったほうがしっくりくる。
見覚えのない教室だ。
普通の教室の半分の広さもない。
おそらく部室棟の一室だろうか。
瞬間移動のようなことでもされたのだろうか。
「何が起こったんだよ」
パニックになりそうだったが、深呼吸をして辺りを見渡した。
変にパニックになるより、落ち着いて周囲を観察しろ!
自分にそう言い聞かせて、部屋の中に目をやる。
部屋のあちこちには、アニメのキャラクターのポスターが貼られていたり、いくつかの本棚や棚の中にはマグカップなどがあった。
普段は普通に使われている部屋のようだ。
誘拐とは思えない。
別に手足を縛られてるわけでもなく体の自由だって利く。
問題なのは「どうやって」ってことじゃない。
瞬間移動だって異能だ。
だからこそ問題は「どんな理由で」「俺を」「何の目的があって」ここに連れてきたかだ。
部屋を見渡して、ゆっくり視線を目の前の人に向けた。
机を挟んだ席には俺と同じ制服の男子生徒1人と女子生徒が3人座っている。
先に断っておくと、知人、友人、久々に会った親戚の人とか、そういった関係も面識も一切ない。
まったく顔も知らない赤の他人と、何故か部室塔の教室にいる。
はっきり言おう。怖い!
1人の女子生徒だけが俺をジーっと品定めするように見てくる。
マジで怖い…。
こんなことになった原因に心当たりなんてない。
ただ見られているだけなのに、妙な威圧感がある。
そのせいで恐怖で体が震えてきやがる。
たぶん俺は物凄く理不尽なことに巻き込まれた気がする……。
恐怖に頬をひきつらせながら
「ちょっと今日のログを確認していい?」
そう言うので精一杯だった。
その日の早朝は眩しいほどの朝日がカーテンの隙間から部屋に差し込んでいた。
連休明けの学校くらいダルいものもないよなぁ……。
溜息をつきベッドから身を起こしす。
それなりに日数のあったゴールデンウィーク。
日数が多い分、明けたときの倦怠感も大きい。
自堕落な生活を送っていたせいか日常へ戻るのが億劫で仕方がない。
学校ってヤツは病気でもない限り、容赦なくやってくる。
学生って身分を持っている以上は仕方ない。
とは言えだ。学校提携のマンションで一人暮らしをする身には朝の支度なども合わせれば面倒なことこのうえない。
朝食の支度をしていると、付けっ放しにしていたテレビから朝のニュースが垂れ流していた。
それを適当に耳に入れ、黙々と登校の準備に手をかける。
『昨日の深夜に超能力者と霊能力者が結託し、覗きを行おうとしていた所を警察に検挙されました。
近くを飛んでいたアホウドリが覗きを企てていた現場を目撃し、通報した警察によって取り押さられたようです。
当初、警察は鳥目なんだから見えてなかったんじゃないか、と言われていたアホウドリですが「全ての鳥が暗闇の中を見えない訳がないだろ」と説教をなされたそうで、念のためと現場へ向かったようです。――続いては今日の占いです』
今日も世界は平和だ。
アホウドリの通報で阿呆が捕まっとる……。
異能ってのは人だけが持つものじゃないんだな。
準備を終えてテレビを消そうとしたとき、画面には星座占いをランク付けされた表が映っていた。
俺の運勢は見事なまでの最下位。
『ラッキーアイテムは運命の出会い!
運命の人に出会っていると思ってるなら恋人や夫婦でもOK!
いなけりゃ御愁傷様(笑)
生きてたら来週また会いましょう~』
と、なんとも腹が立つ解説がされていた。
占いを全面的に信じるわけじゃないが、勝手に占われた挙句に最下位と言われれば複雑な気分だ。
ましてやあの伝えようよ。
占いは気休めの子供だまし。
そんなことは理解してる。
だけどそんなのでも、良いとか悪いとか言われるなら良いと言われたいもんだ。
溜息をついてテレビを消し鞄を掴んで部屋を出る。
どれだけ世界が変わっても「占いのせいで遅刻しました」なんて言い訳は通じないんだから。
何の変わり映えもない通学路を一人歩く。
月曜日は憂鬱だ。
そして朝からテレビでテンション下げられて億劫だ。
「いやいや異能だらけなのに朝から前時代的な占いで気分落としてどうするよ!
気分なんてのは考え方一つでどうにでも変わる」
無理矢理にでもテンション上げないと学校になんて通えない!
気持ち悪いと言われようが、青春に夢見るくらいらいいだろうよ。
「例えばそこの角で食パンを咥えた美少女転校生とぶつかる、というシュチュエーションはどうだ?」
自分に言い聞かせるように呟いた。
「健全な男子なら最高だろうし、俺だってそうだ。
しかし、さらに深く考えるとどうだ?」
食パンを咥えた美少女と衝突した挙句、パンチラとかあったら……。
痴漢呼ばわりされはしないだろうか?
いやいや、それでも美味しい展開に変わりない!
そんな運命的出会いがあることを願い、
「よしっ、行くぞ」
掛け声と共に、少しドキドキしながら踏み出した。
その曲がり角の先には、
焼きそばパンを咥えた中年のオッサンが原付バイクで走って来た!
「あっぶねぇな、坊主っ!!」
間一髪。
後ろに尻餅ついて接触は避けられた。
……薄々、わかってはいたさ。
現実はそんなに優しくも甘くもない。
曲がり角から運命のヒロインが現れるとしてあんなオッサンは絶対に嫌だ。
そんな朝から泣きたくなる月曜日。
その後もまったく運命的な出会いや展開なんてなく、いつも通り校門についてしまった。
昇降口を目指す生徒の流れに乗り自分の下駄箱へ向かう。
転入して一月程度経へて、すでに見慣れた靴箱を開ける。
すると靴箱から手紙が落ちてきた。
手紙を拾い上げると、それには蛍光ピンクでやけにファンキーなのウサギのシールと妙にリアルなカマキリのシールが貼られていた。
(まさか運命の人からのラブレター!?)
そんな期待を抱くが、こんなラブレター送る人物は流石にどうかととも思う。
「不幸の手紙や悪質なダイレクトメールのほうがまだ可能性あるな」
手紙なんて貰うの初めてだ。
俺は昔から平凡な学生生活を送っている。
転入してからも適度に距離感を保って周りに合わせている。
自慢じゃないが、異性として好かれていることや極端に嫌われているなんてことはないはずだ。
けれど可能性として「ない」と断言できないのも事実。
もしかして俺を好きだなんてことはないと思うけど、転入する人なんて珍しいからお話したいってのかもしれないし。そう思えば異能者なんてこの学校に入るまでは周囲に居なかったから、このシールとかの感性もイタズラってより好意的な解釈をしてもいいんじゃないだろうか。
だけど本当にイタズラってこともあるかも……。
まぁ転入してから特に目立つようなことも目をっつけられるようなことをした覚えもないし。
そんな事を思いながら、ゆっくりと手紙の封を開け中に入っていた一枚の便箋を開く。
そこに書かれていたのは一言だけだった。
『ざまぁ(笑)』
「何がだよ!?」
便箋を封筒ごと廊下にペイっと叩きつけた。
出人の名前もなければ、他の内容すらない。
その内容はまるで今朝から俺の様子を心象込みで観察してたのような一言だった。
……手紙の主はあのオッサンを運命の相手と言うつもりじゃないだろうな。
中年のおっさんとか御免こうむるぞ。
ペイした手紙を拾い上げ、そのままぐしゃりと潰しゴミ箱へ叩き込んだ。
そのままい教室へと足を向けた。
教室の前に二人組の男子がガードマンのように仁王立ちしていた。
(知らない顔だし、関わらないようにしよ)
そそくさと通り過ぎて自分の席へ着く。
「おはよう岸辺。なんか憂鬱そうだな。何かあったのかい?」
「おはよう鈴木。あったあった、あったからその胡散臭いスマイル引っ込めてほしい」
「当たりキツイなぁ。前に言ってた部活のこと。パンフレットとかあったから持ってきてあげたのに」
「GW前に言ってたやつか。気分転換がてら読むから貸してくれ」
「ありがとうございます鈴木さまって言えば貸してあげよう」
「お前が言えば受けとってやるよ」
「なんで借りる方が上から目線!? まぁいいけどさ。はいこれ」
「ありがと。って分厚いな何個部活あるんだよ」
「生徒数も多いってのもあるけど、本当に色んな部活あるからねぇ。学校の方針らしいよ?」
なんだその方針。
そんな話をしていと、教室の前にいた1人が肩を掴んできた。
「岸辺ってお前だよな?お前なんだよな?」
「え?そうだけど、なん…どうした、お前大丈夫か?」
急に名前を確認されて何が何だかわからない。
けど俺を掴んでいる生徒は顔面蒼白で、額からだらだらと滝のように汗を流していた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。こうするしかないんです。ごめんなさい」
「急になに!?」
何の説明もなく謝罪されるって無茶苦茶怖いんだが!
っと声を出したら、見える景色が違っていた。
部室棟一室。
背後には先ほどの生徒と一緒にいたもう1人が居た。
そいつは恐怖からか、顔を引きつらせたまま綺麗に敬礼し無言で部屋から出て行きやがった。
こうして現在にいたる。
ここに連れてこられる理由がわからない。
朝からの出来事思い出しても本当に理解出来ない!
俺がいったい何をした。
未だジーっと見てくる女子生徒に向け、言葉を投げかけた。
「何のようでございましょうか?」
机を挟んで真ん中に女の子。
右隣にいるのは大柄な糸目の男子。
左にはポニーテール女子。
そして俺の後ろ側にはパソコンの前で黙々と携帯ゲームをしているメガネ女子。
俺の問いに答えたのは糸目の男子生徒だった。
「何故ここに連れて来られたかわかんないって顔だな、おい?」
体格がゴツい糸目の男子がふて腐れるように言ってくる。
よく見えれば、机に名札のプレートが貼ってある。
『副部長兼ゴミ 仁美圭』
(ゴミってなんだ!?)
そもそも副部長の後のゴミってつく意味は解らない。
わからないが糸目は仁美圭というらしい。
とりあえずゴミの意味は置いておこう。
俺はふてくされている圭を横目に思っていることを答えた。
「全然まったくこれっぽっちも理解してない」
そんな俺の答えに、圭はキョトンとしていた。
「えっとな、お前を連れてきたのは部活の集まりだからだよ。岸部太陽」
集まりも何も、部活に入った覚えなんてないんだけど。
頭をひねっていると、
「部長から連絡回ってたろ。メールはアドレスまだ知らないから、手紙とか来てなかったか?」
当たり前のように俺のフルネームを言われ少し警戒した。
「部活の集まりって俺はここに来たのも初めてだし、そもそも入った覚えなんてないんだけど?」
「GWに入る前に入部届けをお前の担任から貰ったぞ?」
そう言われてもな。
GW前に担任から書類?
そういえば転入の手続きの書類がまだあったって、特に確認せず担任に何か書かされたような……。
契約書はよく読みましょう。
それが学校の担任の先生からのだとしても!
俺はその事を誤魔化すようまくし立てた。
「ま、待て、入部届はともかく手紙だって。
イタズラみたいなのなら今朝、靴箱に入ってたけどさ。
まさかそれじゃないだろうな?」
「もしかしなしなくてもそれだろうな。
部長自らちゃんと下駄箱に入れたって言ってたし。
内容は知らないが……知りたくもないが、
手紙を受け取ったんなら多分そうなんだろ」
「あんな『ざまぁ(笑)』って手紙が呼び出しなんてわかるかっ!」
心からそう叫んだ。