貧乳どもめ
つい貧乳に貧乳と言ってしまったことに後悔した。
萌花は目頭を吊り上げ、髪が怒りで逆立っている。
「今なんたつった!?」
「すまん。正直な質で、つい本音が」
そう言った瞬間、萌花がその場で回転し、ビュッと風を切る音を響かせる。
脚を鞭のようにしならせたな見事な回転蹴りだ。
太陽は息もできず、その場で悶絶した。
「なお悪い!」
この部の女子たちはどうして急所ばっかり狙うんだろうか。
太陽が息を整えゼーゼーする横で、萌花は虫でも見るような冷たい眼で見下ろす。
「これでさっきの戯れ言はチャラにしてあげるから、残りはアンタが食べなさい」
そう言って太陽に食べかけのフランスパンを差し出した。
「日持ちするパンなんだから、サンドイッチとかにすればいいじゃないか」
「……」
太陽がさも当たり前のことを言うと、萌花は頬を赤く染めながら視線を反らした。
「気づいてなかったわけじゃないんだからね!」
「思いつきもしてなかったのかよ」
やっぱバカだこいつと、言いそうになったが太陽はグッと言葉を飲み込んだ。
取り敢えずパンのことは後で考えるとして、萌花の頬の色が落ち着いてから部室へ入った。
……何故か当たり前のように太陽がフランスパンを抱えながら。
部室に入るなり萌花は芹をビジっと指差した。
「芹、あんたのせいで恥かいたじゃないの」
唐突に言われた芹は、当たり前のように携帯ゲームをプレイしながら視線だけを向けた。
「開口一番なんですか、エセ萌女。自分自身が恥ずかしい存在だってことをやっと自覚できたんですか? 今更ですよ? そんなこと学園で知らない人はいませんから」
それはもう実に辛辣な返しだった。
萌花はいろんな意味で恥の塊だろうとは思う。
しかしそこまで言うことはないんじゃないだろうか。
太陽がフォローする間も無く、
「ぶっ飛ばすぞテメェ!」
「ふっ。ボクに危害を加えれば……国が動きますよ」
芹は萌花を鼻で笑い飛ばす。
萌花はそんな芹の言葉を無視し掴もうと腕を伸ばした。
「妄想垂れ流すのは――」
「知りませんか? 傷害罪は立件できるんですよ」
そう言って萌花の腕を軽く躱した。
そして芹は失笑しながら携帯電話を取り出し素早く通話画面を表示する。
「……えっと、つまり?」
「ボクみたいな、いたいけな一般市民は一歩下がって110。変態の相手は国家権力さんの役目です」
現実的なんだが、やり方が邪悪だった。
貧乳共は心の余裕が胸と同じく慎ましいらしい。
無言で萌花からローキック、芹から缶ジュースをぶつけられた。
「なんで俺!?」
「イラっとすること考えたでしょ」
「不愉快な電波を受信した」




