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世界は異能で溢れているが、それがどうした  作者: 猫も犬も猫目である
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2人のGW

圭に促され、芹はさきほどからずっとゲームをしている指を止めずにGWにあった出来事を話し出す。

「そうですねぇ。GWにあった面白いことと言えば、閻魔大王が新人の門番に手を出そうとして謹慎。それとFPSで上位ランカー三十人をカンガルーが近接戦闘で狩り終えたことですかね」

「さっきからどこの異世界の話!?」

「何ですか、太陽? 高血圧?うるさいので病院行ったほうがいいですよ」

「高血圧とかじゃねーよ!ってか閻魔大王が新人に手を出そうとってなんだよ、それとカンガルーがFPSって!」

絶叫する太陽に芹はジト目を向けた。

なんとも気だるげに見つめるので、太陽をウグっと息を飲む。

「えーとね。泥酔した閻魔大王が新人門番の、山の麓の林の丘の木下さんの家に押し入ったんですよ。そして鉄バットでボコボコにされ、見事なまでに返り討ちにされたんです」

「木下さんの実在を疑ってるよ」

「木下さんじゃなくて、山の麓の林の丘の木下さんですよ。そこまでが名前です」

「知り合いなのか?」

芹はゲーム画面から視線を上げ、ふと遠い目をした。

「……亡くなった源五郎がお世話になってまして」

「源五郎……もしかして亡くなったおじいさんか誰かなのか?」

「昔、使っていたゲーミンパソコンの名前ですよ?」

「ややこしいんだよ! ツッコミ所が多すぎる!」

机をダンっと叩くと、スッと綺麗な水色の液体が入ったペットボトルが差し出された。

さっき汚名返上でもと言うような、舞は薄い胸を張ってドヤ顔をしていらっしゃる。

それがますます不安を掻き立てる。

「落ち着いて、太陽君。クールダウン、クールダウンだよ。ほらクーラントでも飲んで落ち着いて」

「冷却液を飲んでも死にますからね!」

案の定というか舞はナチュラルに毒薬を勧めてきた。

「な、なんだって……」

舞はガクリと項垂れ、床に四つん這いになった。

誰か毒物を奨める舞を止めくれよ。

断ったときの顔が悲しげで可哀そうなんだよ。


そんな舞をニヤニヤしながら眺めている萌花はツヤツヤした顔をしている。

とても人前に晒してはいけないような表情だ。


そして一通り満足したのか、

「そういや、圭は何か見つけたの? さっきからアタシらばっかりに喋らせてるけど」

そう話を振られた圭は、何かを思い出すように顎に手をあてている。

その表情は、言葉にするのも憚れ(はばかれ)るといった具合だ。

ここの部員は連休というだけで面白いことに巻き込まれる呪いにでもかかってるんだろうか。


……人の事は全く言えないんだけども。

「面白くはないが、恐怖体験なら……」

「何があったのよ?」

少し緊張しながらも圭は、実際に遭遇した恐怖の体験をゆっくりと語り始めた。


「夜に喉が渇いてコンビニに行ったときことだ」

コンビニからの帰り道。

途中で催してきてさ公園の公衆トイレへ行ったそう。

そして公衆トイレに入ったそなとき、後ろから声が聞えてきたんだ」

 全員、圭の話を静かに聞いていた。

誘われるような語り口に、その場にいた全員が飲み込まれるかのようだ。

「午前2時くらいで誰もいないような公園でだぞ? 俺はこんな時間に自分以外に誰かいるのかと思いながら、恐る恐る声がするほうへ振り返ったんだ」

圭は一呼吸、間を空けた。

誰かが生唾を飲む音がし、それが余計に怪談の雰囲気を醸し出した。

そして、

「そいつは俺の後ろ、すぐ側までやってきて耳元で囁いたんだ」

 ごくりと、部室にいた全員が喉を鳴らせた。

「あんた、いい男だな。好みだよって」

「振り向くと、白いタンクトップを着た筋肉質の男が笑顔で立っていたんだよ」

怪談とは違う意味でひやっとした。

実際にそんな変質者がそばにいるなんて恐ろしすぎる。

「そして圭はアブノーマルな趣味に目覚めたんだね。わかります」

 芹は圭の話を聞くと、すぐさま俺と圭を見て、何やら恍惚とした表情で頬を緩ませた。その表情を見た俺は、反射的に両手で尻を隠していた。

「目覚めてねえ! 一目散で逃げ出したよ! ちったぁ自重しろ腐され女子!」

「大丈夫ですよ。同性愛は動物的本能で、自然界でもごく当たり前のことなんですから」

「変に理解のある言い方すんな! 太陽、お前からもこの腐女子になにか言ってやってくれ」

 不意に圭から話を振られた。

 真偽はともかく、ここで個人的にセクシャルなことを全否定したら傷つくかもしれないな。

 それに地球上にいる動物の、約千五百種の動物に同性愛の傾向があるようだし、そのうち五百種は既に記録もあると言われているし。

 さらに特に鳥類や哺乳類、霊長類に多いみたいだ。

だから霊長類の圭がホモだったとしても不思議ではないんだが……。

同性愛があることについて納得はできる。

納得はできるけど理解はできないし、したくない。

そうと決まれば――穏便に話を流そう、それがいい。

きっとそれが一番いいはずだ。

「趣味嗜好は人それぞれ、デリケートなこともあるんだから触れないでやろうぜ。それと圭は俺の後ろに立たないでくれよ、絶対にっ!」

「そうですね。すみません、圭。お詫びにそういうコミュニティ紹介しましょうか? 世界は広いですよ」

「俺はいたってノーマルだよ!」

「そうですね。同性愛もノーマルとして認められている地域もありますからね。大丈夫、偏見の目で見たりせず、生暖かく見守りますから」

「鬼か、お前らっ。絶対わかってて言ってるだろ!」 

 さっきから大声を出している圭は、ゼィゼィと息を切らせている。

 それを芹が、なにやら満足げな表情で頷いているが放っておこう。俺にまで腐った視線を向けられたくない。

 芹が迷惑そうに圭を非難する。

「圭、さっきから五月蠅いですよ。誰も圭の倒錯的な性癖になんて興味ないんですから、騒がないでくださいよ。セクハラの罰としてマントルに埋めますよ」

「そうね。それ以上、有害な雑音を出すんなら気管を溶接するわよ」

「とことん俺を苛めるのが好きだな、お前ら!」

芹には同性愛者と認定されて、舞と萌花に貶されて脅迫されて、圭は大変だな。

けど関わらないでおこう。可哀そうだとは思うが、俺にまで飛び火したらたまったもんじゃないし。

「圭が目覚めたかどうかはともかく、会議を進行しうよぜ」

 その俺の言葉に圭を除く全員が納得し、会議は再開された。

「そうね、どうせ圭のことだし」

「圭ごときのために貴重な時間を使うなんて、全くの無駄でした」

「話した分、この星の酸素を無駄にしてしまいましたね」

 萌花、芹、舞の蔑みの視線が、深々と圭に突き刺さった。

「なんでそこまで言われなくちゃならねーんだよ……」

 ……うん。これ以上、圭の傷口が広がる前にさっさと話を流そう。

「ところで、太陽君は連休中になにかありませんでしたか?」

その舞の言葉に、俺はここ数日にあったことを思い出す。

……思い出してしまった。


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