これがこの部活らしいよ
部室の扉がタイミングよく開かれた。
「遅れましたー、って何見てんのよ」
長い髪をパタパタと飛び跳ねさせ慌てた様子の萌花が入ってきた。
「なんでもないよ」
汗が光るスポーティな魅力があった。
そう魅せられてしまった。
「そう?まぁアンタのことなんてどうでもいいわ。舞ちゃ~ん会いたかった~」
こんなやつに……。
舞は飛びついてきた萌花の頭を片手で掴み、そのままガンっと机に叩きつけた。
「早く席に着いてください。今日の部活を始めますよ」
そしてさも何も起こってないと言わんばかりに自然に話を初めだした!
圭と芹は「は~い」と返事をしていた。
萌花が飛びついて叩きのめされるまでが習慣になっているようだ。
そして復活したが鼻血を流したままの萌花が席に着く。
舞は教壇に立ち皆を見下ろした。
「まず最初に、入部届け貰ってたけど放置していた岸部太陽君について説明したいと思います」
小さな胸を張りながら、やっとそのことを説明してくれるようだ。
ブンっと、何かが顔の側を通りすぎた……。
「何するだ!?」
「イラっとしたので。何か変なこと考えませんでした? 主に胸部の辺りについてとか」
「滅相もない!」
ということにしておく。
勘が鋭いにもほどがある。
まぁいいでしょう、と舞は話の続ける。
他の部員達も「そういえば突然だな」と口を揃えている。
教員からの書類とはいえ不用心に書類にサインなんてするもんじゃないな。
そうすればこんな目にあわなかったのに……。
教訓、書類はちゃんと読んでからサインしましょう。
ってか教師が率先して詐欺紛いなことしてんじゃねぇよ!?
「去年、部室に来ていた人たちは幽霊部員を含めて、一週間足らずで全員辞めてしいました。今どきの若者は忍耐がありませんね」
舞は虫でも見るかのように俺と芹を見て嘆息してくる。
「部の長としてはいい迷惑でした。嘆かわしい!」
芹と太陽はイラっとしている。
喋っているうちにさらにヒートアップしてきてゆき、ボルテージが上がるに連れて舞の口調が悪くなってきた。
「そして新学期に新しい生徒会長が部費の調整するからと、部員のリスト作って提出しろとほざきやがったんですよ。部員数が少なかったりすると部費減額って。何様ですかあいつは!?」
生徒会長様だろ、とは誰も言わない。
口答えすれば暴力で返されるから。
ちなみに俺たちの通うのは私立八百万学園だ。
科学、宗教、神道、密教、超能力、魔術、陰陽術、霊能力とありとあらゆるものを学問として扱っている。
資産家の理事長が十年前に開校し分け隔てなく様々な分野を取り入れたため、とても珍妙なマンモス校となっている。
一部の界隈では理事長の道楽学校とも呼ばれている。
当然、生徒数が多いとそれだけ部活も多種多様になってくる。
メジャーなもので野球やサッカー、バスケットなど。
珍しいものではペタンク、エクストリームアイロン、セパックアピ、ウィジャ盤研究会なんて突飛すぎるのもある。
「なんでそこで俺が呼び出されたんですか?」
「もう部活の勧誘期間も過ぎてましたし今から探して入れるのも面倒でした」
何を当たり前のことを、とでも言いたげに小首をかしげキョトン顔だ。
「春から部員リストに名前が載っていた太陽君を幽霊部員から正部員に引き上げました。はい、みんな拍手―」
「おいおいおいおい
急展開すぎるだろ」
パチパチとまばらに拍手をする部員たちの顔は、実に面倒そうである。
その中で圭が舞に尋ねた。
「どうして部員リストに太陽の名前が残ってたんだ? 新入生はお前が全員歓迎したせいで全滅したはずだろ」
圭は目線を下げ疲れた顔で言った。
その疲れた目で言う歓迎ってのは、いったい何なのか……。
「未だに部どころか学校にも来なくなったやつが数名いるしよ……」
心身ともに大きな傷を負ったんだろうな。
そう言われても舞はケロッとした顔で圭の言葉を無視し、続いて俺を招いた理由を説明した。
「太陽君は部員リストを見て思い出したからです。教師から入部届けはもらってたけど、一度も部室に来てなかったから存在を忘れていました。謝罪します」
幽霊部員だったとはいえ、ぞんざいな扱いすぎる。
「んな軽い謝罪で納得できるかっ!」
「ごめんなさい」
あっさりと舞は驚くほど素直に謝罪した。
なんか子供に無理やり謝らせたようで罪悪感が半端ないんだが。
「ちゃんと謝ったからこれでいいですね。しかし反省や後悔は全くしていません!」
「少しはしろよ!」
胸を張って堂々と答える様は貫禄すらある。
少しでも感じた罪悪感なんて、全部吹っ飛ばすほどの清々しさだ。




