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虹を超えて  作者: 夜宮
第一章 出逢い
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02 初登校

 やってきました!

 私は今日から王立学院に通う学生だ。


 数日前に寮に入り、同じく新入生となる何人かの生徒とも挨拶を交わすなど順調に過ごしてきて、入学式等の行事も恙なく終えた。そしてついに今日から授業を受けるのだ。


 この学院は数年前に設立されたばかりの新しい学校で、二年間に渡って領地経営や新規事業に関わる法律や経営方法などを学ぶことができるようになっている。


 王都には他にも歴史ある学校があるが、それらは騎士になるための学校や淑女のための学校、官吏になるための学校や専門的に学問を学ぶ場所などであり、この学院のように爵位継承者向けの実務的なことを教える学校はこれまでなかった。


 ここで学ぶようなことはこれまでは爵位を持つ親から子へと伝えられるものであったが、だんだんと法律も複雑化し、外国との付き合いも増えるなどの環境の変化もあった。


 そして数年前に女性にも爵位の継承を認めるなどの大幅な制度変更があった折に、新たに爵位を得る若者が時代に取り残されて困ることがないようにと新設されたのだ。


 生徒は貴族の跡継ぎとなる男性や数年前に認められた私のような跡継ぎとなる女性が優先されるが、後を継げない男性や女性も入学は可能だ。


 爵位を継げない子でも血縁者の補佐をしたり、下級貴族であれば雇われて大貴族の領地で働くというようなこともあるのでかなりの需要があるらしい。


 というか、名目上は跡取りのための教育機関となっているとはいえ爵位を継げない子供のほうが圧倒的に多いため、実際には跡取りである入学者を探すほうが難しいくらいの人数構成になっている。


 しかし、入学にはある程度厳しい審査があるし、通学期間中の勉強も多岐にわたる高度な内容になっているため、領地経営に関わる可能性の低い女性はあまり入学してこない。


 跡取りでない貴族の女性にとって将来爵位を継ぐ予定の男性がいる環境とに身を置くいうのはある程度魅力的ではあるものの、必要になるかどうかもわからない勉強に時間を割くよりも淑女教育に身を入れて、正攻法で良縁を得るほうが効率的だと考えられている。


 それに、跡継ぎの男性というのがそもそもそんなに沢山は入学してこないのだ、あまり効率的な出会いの場にはならない。


 その代わりに跡継ぎでない男性の入学が多くなっているのは、あわよくば爵位を継ぐ女性徒との縁談目的の意味もあるとか言われているが真相は定かではない。


 どちらかというなら学院の男女比からみて、跡取りでない男性より跡取りの女性にとってより良い相手を見つける場所のように言われていることのほうが的確な指摘かもしれない。


 跡取りの女性はそれでなくとも女性の数が少ないこの学院で、男性たちからかなりの優遇を受けるというのは本当なのかな?


 逆に、まだまだ古い考えを持つ貴族の中には、女領主の存在を認めないという人たちもいるようだから、そういう考えをもつ家の男性には気をつける必要があるとも言われてもいるのだけど。


 女が上に立つのはけしからんと言いながら爵位持ちの女性の伴侶になる気はある人もいるから、と。


 私は、どうせなら私の代でもっともっと領地を栄えさせるというのも面白そうだと入学を熱望した……という気持ちが全然ないわけじゃないが、実家の重苦しい雰囲気に辟易していたのもあるし、同世代の同じ立場の人や違う目標に向かって努力している人と知り合ってもっと広い世界を知りたかったというのが入学を希望した一番の理由である。


 もちろん、貴族の跡取りであるからには私だって結婚相手のことを全く考えていないわけではない。


 それに小説などに描かれているような素敵な恋愛にあこがれがないわけではないが、学院ではそういうことはあまり意識せずに過ごせればいいなと思っている。


 結婚相手については社交界にデビューしてから考えればいいと割り切っているし、なんといっても幼少期からあの両親を見ていると、そういったことを敬遠したい気持ちが強いのも仕方がないだろう。


 それよりも数少ない同じ立場の女性とできれば友人になりたい、気持ちの良い男性の友人が出来ればもうけもの、更には彼らを通して他の学校に通う人達との交流もできるのではないかというようなことを期待しているというのが本音だ。


 貴族で私のように子供が一人というのは珍しい。


 親族に少し年は上だが従兄弟がいないわけではないのだが、祖父の意向もあって交流はあまりない。幼い頃などはそれでも機会があったのだが、今では王都ですれ違っても誰だかわからないくらいだろう。


 それに私はほとんどの時間を領地で過ごしていたから、王都の貴族令嬢のように茶会やなにかを開いて広がる交友関係というようなものとも縁がない。


 これまではそれでもよかったかもしれないが、これからはそうはいかない。

 それを祖父もわかっていたからこそ私を学院に入れることに同意したのだと思う。


 私は祖父の期待に応えるためにも、今後の自分自身のためにも学院の中で良い友人を作るだけでなく、そこから更に彼ら彼女らの近しい別の環境にいる人達を紹介してもらうなどして今までの分まで取り戻す勢いで効率的な人脈開拓をする必要がある。


 社交界にデビューすれば女性同士の付き合いというものは自然と生れるだろうが、それまでに同じ立場の気を許せる友人を作ったり、自分とは違う目標を持つ人達ともできるだけ交流を持っておきたいのだ。


 そういうわけで、この二年間は勉強はもとより人脈作りや新たな体験をすることなどを通して新しい何かを得たいと思って学院生活に臨むつもりだ。


 人より遅れている分を取り戻せるようできるだけがんばるぞ! という気持ちでいっぱいだった。

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