5 いざ実戦へ
アウレは叔父に家を出ることを伝えた。
怒り狂う叔父に、突然仕事を放り出す謝罪料としてお金をいくらか置いて、二人はその場を後にした。
そして宿を取った。
翌日からアウレの特訓の日々が始まった。
午前中は魔力を見極める訓練をして、午後は体づくりと体術、ゼノから譲り受けた杖を使った杖術の訓練をした。
そして一週間が経った。
「これの順番は?」
ゼノはアウレの前に三つの魔石を並べた。
それらは全て同じくらいの魔力を宿していた。
常人では見分けがつかないだろう。
でも、
「右、左、真ん中です」
アウレは見極めた。
わずかだが右が一番魔力を宿していた。
「だいぶ形になってきたね。そろそろ実戦へ行こうか」
ゼノは言った。
「それってつまり……」
「うん。クエストを受けるよ」
「はい!」
二人はギルドへ向かうため宿を出た。
「どんなクエストを受けるのですか?」
道中、アウレが聞いた。
「栄えある第一回のクエストはね……」
パアアンッッ!!
もったいぶったゼノの発表は、突如酒瓶で後頭部を殴られたことによって遮られた。
瓶は割れ、ゼノは酒で水浸しになった。
振り返ると顔を赤くした冒険者が二人いた。
「魔無しが道の真ん中歩いてんじゃねえよ!」
ギャハハハと高笑いして歩いていく冒険者は、一人は口だけになった酒瓶を持ち、もう一人は酒が半分入った瓶を持っていた。
「おい、なんで殴ったんだ? 死ぬこともあるんだぞ?」
ゼノが問いかける。
「ああ? カスが偉そうに歩いてるのが悪いんだろ!? 魔無しは端歩け、端。社会に迷惑かけてんじゃねえよ」
冒険者の一人が言い返す。
「昼間から酒飲んで、ふらふら歩くのこそ迷惑じゃないのか?」
「なんだとてめえ!!」
怒った冒険者が殴りかかってくる。
その二人の手首をゼノは掴んで捻る。
二人は仰向けに重なって、地面に転がった。
その腹をゼノは踏みつける。
二人はウゥッと苦悶の声を上げた。
「真面目に働けとは言わない、昼間から酒を飲むなとも言わない、だけど…人を傷付けるな!分かったか!?」
ゼノは二人を睨み付けて言った。
「「は、はい。分かりました……」」
二人は口を揃えて言った。
「じゃあ、行っていいよ」
ゼノは二人から足をどけて言った。
「「は、はい!」」
二人は逃げるように去っていった。
「だ、大丈夫ですか?」
アウレはゼノに声をかけた。
「うん、大丈夫」
ゼノは頭や服に着いた酒を手で払った。
「んんっ」
咳払いするゼノ。
「仕切り直して、栄えある第一回のクエストは……ワイトキング討伐です!」
「ワイトキング!? A級モンスターですよ!?」
「さあ行こう!」
驚くアウレを尻目に、ゼノは冒険者ギルドへと歩を進めた。