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15 勇者がいれば

 盗賊8人を引き連れて、ゼノたちは村長の家に戻った。


「あっ……」


 出てきた村長は捕まっている盗賊を見て、全てを察して青ざめた。


「中で話しましょう」


 そう言ってゼノは、村長を連れて中に入る。

 アウレとムスキルはカイネと一緒に外で待機した。



「すみませんでした!」


 部屋に入ると、すぐに村長が謝った。


「でも脅されていたんです。言うこと聞かないと村人を殺すって」


 村長は必死に釈明する。


「でも俺たちが死ぬ可能性もあったんですよ? 依頼の難易度に合った冒険者が来ていれば間違いなく死んでいた」


「すみません……」


 村長は項垂(うなだ)れる。


「まあ娘さんの勇気に免じて、今回は不問にしますが」


「カイネ?」


「ええ、カイネちゃんが教えてくれたんですよ。それだけじゃなく盗賊のアジトまで助けに来てくれたんです」


「カイネが……? すみません……すみませんでした……!」


 村長は泣き崩れた。


 ゼノは村長を一人にするために外へ出た。


「! お父さんは!?」


 出てきたゼノに気付いてカイネが聞く。


「大丈夫だよ。ただしばらく一人にしてあげて。少ししたら出てくると思うから」


「う、うん」


「かわりに待ってる間、強くなる方法を教えてあげるよ」


「あっ、今教えてもらいました」


「そうか、なら何しようか?」


 ゼノの言葉にカイネはおずおずと質問する。


「あの、ゼノさんは魔王を倒した一人ってホントですか?」


「!教えたのかアウレ」


「はい。カイネちゃんを安心させるために」


「ということは本当でしたか。でもそれなら先生が強いのも納得です」


 ムスキルは感心したように言った。


「では魔王退治の旅の時のことを話してあげよう」


 待っている間に、ゼノは勇者たちとの思い出を子供向けに面白おかしく話した。

 カイネはそれを夢中になって聞いた。


 やがて村長が出てきた。


「お父さん!」


「カイネ、すまなかった」


「私に謝ることなんてないよ?」


「そうだね、ありがとう」


 村長は泣きながらカイネを抱きしめた。

 それから少しして立ち上がった村長は、


「皆さん、すみませんでした。お詫びになるか分かりませんが、精一杯豪勢な食事を用意したいと思います。どうぞ中にお入りください」


 ゼノたちに謝罪した。


 その後ゼノたちは豪華な夕食を食べた。

 ここでもゼノの魔王退治の話で盛り上がり、カイネは目を輝かせた。


 翌日。


「私、大人になったら皆みたいな強くて優しい冒険者になります」


「そうか、楽しみにしてるよ」


 ゼノは拳を差し出した。

 カイネも出して、二人で拳を合わせた。


「私も娘に恥じない父親になります」


 村長が言う。


「ぜひお願いします」


 とゼノ。


「それじゃあ、もう行きますね」


「バイバイ」


「さらばだ」


 ゼノたちは別れの挨拶をした。


「うん、バイバイ!」


「ありがとうございました」


 カイネと村長に見送られて、ゼノたちは旅立った。



「また盗賊が襲ってきたらどうしましょう」


町へ戻る途中でアウレが呟いた。


「大丈夫だと思うよ。カイネがいるから」


 ゼノが答える。


「人は弱い生き物だけど、勇者が一人いれば、なんとかなるもんだから」


 言いながら、ゼノは昔のことを思い出した。



「くそっ、いつまで続くんだ」


 魔大陸に入り、度重なる魔物との戦闘で疲れ果てたゼノは毒を吐く。


「生きて帰れるでしょうか……。それとも私は恋も知らず、このまま聖女として死んでいくのでしょうか……」


 聖女もため息を吐く。


「…………」


 武闘家と戦士も疲れ果てて、フォローする余裕もなく押し黙る。

 そんな時に勇者が口を開いた。


「皆、未来のことを考えよう」


「未来?」


 聖女が聞く。


「そうだ未来だ。魔王を倒して平和になった世界で何がしたい? それがあれば辛い戦いも乗り越えられるはずだ」


 勇者は言う。


「フィヤネイトは何がしたい?」


 聖女に聞く。


「私は……私は恋をしたいです。ずっと聖女として生きてきたから、それ以外のことをしてみたいです」


「いいね、きっといい相手が見つかるよ。ゼノは何がしたい?」


「俺は……分からない。分からないけど、とにかくのんびりしたい。もう戦いたくない。昼から野原で寝るような生活がしたい」


「それがやりたいことだ。魔王を倒して戦いのない世界を作ろう」


 勇者はゼノに笑いかける。


「ああ」


 勇者に言われてゼノは自然と勇気が湧いてきた。


 そんなありし日のことをゼノは思い出した。


「俺もいつか誰かの勇者になりたいなあ」


 ゼノは呟いた。


「何言ってるんですか? 先生は私の勇者じゃないですか」


 アウレが言った。


「本当かい? なら嬉しいよ。ありがとう」


 上機嫌で歩き出したゼノ。

 その背中を見てアウレは思う。

 いつか私も誰かの勇者になろうと。



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