うそでしょ!?
会社からの帰宅途中、駅の階段を下りていたら突然右の足裏に激痛が走った。
「っ!」
思わず声が出そうになってぐっと唇を噛んで堪えた。うう、今日は力仕事ばっかりやったから腰も痛いのに・・・・・だが!痛いそぶりは見せへん。
何事もないふりをして歩いていると、徐々に右の靴が窮屈になってきて踏みしめた時の感覚もおかしくなってきた。
あー、いてぇ。腫れてきてるな。普通に歩くのが厳しくなってきた。靴の許容量を超えて腫れたら、筋肉でシャツが裂けるヤツの靴バージョンになったりして。やべぇわ。靴が裂ける前に私の足がつぶれる。しゃーない、病院へ行くか。人と話すのって苦手なんやけどなぁ。
人と話をするのが苦手な私は、健康に気をつかってバランスの取れた食事、適度な運動、早寝早起きを心掛けてきた。
病院へ行かなくてすむように。(人と話さなければならない状況を少しでも減らしたい。)
なのに階段を下りていただけで足に激痛と腫れ。ないわーへこむわー。
私「そういえば近所に建ったビルに整形外科が入っとったな。あそこに行ってみるか。」
受付「こんにちは」
私「初めてなんですが」
受付「こちらの問診票にご記入ください」
えーっと名前、住所、誕生日、電話番号と、重い病気なんてしたことなし!受診に来た理由を詳しく?その部位にまるをつけろ?ああ、全身の絵がある。これに〇をつければいいんか。
持っているシャーペンの芯を出して引っ込めてを繰り返しながら問診票をじっとみる。
受診理由を詳しく書けって、このスペースじゃ狭くね?かなり文字を小さく書かな入りきらん。
「えーと、階段を下りていたら突然右足裏に激痛がおこり、我慢してそのまま歩いて帰宅しようと思ってたけど腫れてきて靴の中がパンパン・・・・・とこんなんでいいか。全身の絵に足の裏がないけど足指にまるっと。よしできた」
問診票を受付に渡し受付で名前を呼ばれるのを待つ。
受付「私さーん。診察室へお入りください」
私「はい。」
ああ、どきどきする。うまく話せますように!(神さまとか信じてへんけど。)
医者「こんにちは。足の裏が腫れたのは何かにぶつけて?」
私「あ、いえ。階段を普通に下りてただけなんですけど急に痛みがきて腫れてきて・・・」
緊張しながらも状況を話し、靴を脱ごうをするが腫れた足肉が詰まって脱げない。うーんうーん。いてて。
医者「手伝いましょう」
私「あ、すみません」
せーのっで医者が靴を引っ張り、私は足を引く。足肉ギッチギチ。抜けない~。何度目かの『せーの』っでやっと靴が脱げた。ソックスも脱げていて靴の中に残った。穴の開いていないソックスを履いてよかった。
私「やっと脱げた。ってあれ、見た目にはあんまり腫れてへんな。あ、触ったら腫れた感覚があるわ。」
医者が足首を動かし、足裏や指を抑えて触診をしてそのたびに痛みがあるかないかを確認してレントゲンを撮ることに。
医者「レントゲンの準備ができたら呼びますので待合室で待っていてください」
私「はい。」
あ、靴に足が入らん。まあ、指先だけでも入ってたらええか。しかし緊張したぁ。靴を脱ぐときは痛みで緊張がどっかにいってたけど。でもやっぱ知らない人と話すのはしんどいわー。
待合室に行くと人が増えていた。骨折した人や車いすの人が目立つ。
見てたら怖くなってしまうわ。どうか私の足にひびとか入っていませんように。(神さまは信じてないけど!誰に祈ってるのかツッコまれても答えられへんけどな!)
受付「私さーん。レントゲン室へ入ってください。」
私「はい。」
早く帰りたいなー。
技師「では仰向けに寝てください。足はこの位置で、そうそのままじっとしていてくださいね」
・・・
技師「はい、終わりましたので待合室でお待ちください」
私「ありがとうござました。」
後は結果を聞いて終わりだ。早く順番こいー。
受付「私さーん」
私「はい」
意外と順番まわってくるのが早かったな。
受付「千七百円になります」
私「へ?」
え?え?レントゲン撮った結果を聞いてへんけど?先払い?先払いなん!?でも金払って帰されたら・・・オロオロ・・・オロオロ・・・・が、がんばれ私!思い切って聞け!
私「あ、あの!レントゲンを撮った結果を聞いてないんですがっ。」
受付「え?あ??もう一度待合室でお待ちください。」
待合室へ引き返して椅子に座った途端に呼ばれた。
受付「私さーん、診察室へお入りください」
私:やっぱりかい!受付の人が間違えてたんやな。
医者「すみません、カルテが間違って受付のほうへ行ってしまったようで」
私「あはは。」
診察が終わる前に請求されたん初めてやわ。
医者「レントゲンを見る限り骨に異常はありませんし、シップを出しますので様子を見ましょう。腫れがひかなかったり痛みが続くようでしたらまた来てください。」
私「はい。ありがとうございました。」
今度こそ終わった。明日までに腫れが引かんかったらどうしよう。履ける靴がない。履けそうなのってビーチサンダル・・・・。
仕事にビーチサンダル・・・・・スーツにビーチサンダル・・・・
受付「私さーん」
私「はい。」二回目のお会計やな(笑)
受付「千七百円です。」
釣りなしピッタリ千七百円を渡して領収書などを受け取る。
あれ?枚数が足りない。領収書と保険調剤証明書・・・・
処方箋がない。
私「あ、あの、シップが出されているんですが・・・・」
痛いんねん、今すぐシップを貼りたいくらい痛いねん。
受付「・・(考え中)・・すみません、一度全部お返しください。」
そういって全部を持って奥へ行ってしまった。
今度は待合室でお待ちくださいのセリフも無かったな。でも、待たされそうやし座っとくか。金、レジに入れたまま返してくれへんかったな・・・・嫌な予感するなー。
受付「私さーん」
私:「はい。」
お会計、三度目の正直や~。
うむ、処方箋もちゃんとあるわ。なんか余計なところで長かったなー。
受付「千九百七十円です。」
私:なんでや。
予感的中!初対面の人と話すのが苦手でもさすがに声だしてツッコミそうになったわ!領収書に記載の金額を請求してきたよ受付。
受付「・・・・」金を払うのをじっと待つ。
私:この受付の人、マジ気づいてないし!
受付「・・・・」まだ待ってる。
私「先に千七百円を払っているので」
これを私が言うんかーい!
普通、千七百円を受取ってる側が差額を伝えてくるやろ?
初対面でよう言えへんけど心ん中で受付の人に、ツッコミが止まらんようになってきたわ。
受付「はっ!二百七十円です。」
私:あー、ちょうどは無いわ。
三百円をトレーに置いて、領収証をカバンへ入れてと。
視界の端に、受付の人が三百円をレジに入れたのが見えた。処方箋を手にもって顔をあげるとこちらをじっと見ている受付の人。
受付の人は微動だにせず。
私:ちょっと・・・・え?マジで???
受付「・・・・・」
私「・・・三百円渡したので」
受付「あっ!」
私:あっ!じゃないやん。自分で二百七十円って言っておいて釣りを忘れるって!コントかよ。
無事、釣りの三十円を受け取り、調剤薬局でシップをもらって帰宅。
私:疲れた、足痛い。あの受付の人は面白かったなー。友人にラインしよ(笑)
ラインだと、内容を細切れに入力していくのと、次の文を入力してる間に友達の相槌が入るのとで本当にコントのネタ帳っぽくなった。
友人からは面白かったけど二度と行くな。他の病院でもう一度見てもらえと助言された。私もそう思う。
翌日、別の病院へ行ったら、レントゲンと腰から足裏までを触診。
昨日の病院じゃ足首から足指までしか触診せぇへんかったのに医者によって違うもんやなぁ。
医者が指で押しながら、
「ここは痛いですか?こっちは?」
「いえ、何ともないです。あーそこ痛きもちいいわー。」
うわ、初対面の人なのに素がでてもうた。でも今のトコめっちゃ気持ちいい。もっと指圧して欲しかった。
診断結果:足の腫れは腰のあたりで神経が炎症を起こしていてそれが足にきている。だった。
おーい昨日の診察ぅ。
作者の実体験をもとに書きました。
受付の人とのやり取りを重ねるほどに可笑しくて面白くてw
このネタを埋没させることはできなかった。
[事実は小説より奇なり]