妹
魔族。
それは、はるか昔から人間が対立している種族。
魔族は戦闘力が高く、魔族を超える人間族は中々いない。
しかし、その戦闘力に、人間は技術で対抗してきた。
様々な武器を作り、道具を作り、今もなお、魔族と人間は対立している……。
そして、その魔族に去年、俺の妹がさらわれた。
妹はそこらの女の子ではない。魔族を超えるほどではないが並みの戦闘力を持つ。
暴れたりして、怒りを買ったりしないだろうか……。
魔族にさらわれた人間は、大抵の場合、奴隷として働かされるのだそうだ。
クソッ。
---
俺は、妹を助けたい。
その思いだけで、鍛錬を積んだ。
俺は……強くなれるのだろうか。
---
鍛錬を始めて一週間。
そんなに早く成果が出るものじゃないのは分かっている。
だが、悠長にしている時間も無い。
いつまでも、こんなことだけで強くなれるのだろうか……。
---
鍛錬、二週間目。
成果は一向に出てこない。周りの人には焦りすぎだと言われている。
このまま何もできずに終わるのは嫌だ。
---
鍛錬を始めてから一ヶ月が経った。
成果は満足できるほどではないが、ましな方ではある。
しかしこのままでは何も変わらないのだろう。
俺は魔族のいる地に向かいながら、実践で鍛えることを決めた。
俺の旅立ちを応援する人は家族だけだった……。
---
旅に出て一週間。
俺は始めて、魔族の使役するモンスターと、戦った。
戦ってみると俺は意外にあっさりと勝利した。
もしかして俺は強いのではないのだろうか……。
---
旅に出て二週間。
俺は、窮地に陥っていた。
焦りすぎたのだ。大分、魔の地に近づいたからだろう。
モンスターは強くなり、俺は休む暇なく、戦闘を繰り返した。
だが、確実に俺も成長している。それが、モンスターとの戦闘で実感できた。
---
旅に出て三週間。
俺は一週間前と、同じところでとどまっていた。
修行のためここらのモンスターと戦闘を続けていた。
成果はそこそこだ。
---
旅に出て一ヶ月。
俺は修行のおかげで一気に魔の地までたどり着いた。
魔の地はこれまでとは違う。モンスターを相手するのはもう終わりだ。
そう思い、俺は魔族の国に入り込んだ。
---
少し町の方に進むと城らしきものが。
人間たちに作らせたのだろうか……。
さらに進むと何やら広場が。
そしてそこには何人もの、魔族ではなく人間が。
「解放されたのか?」
俺が疑問に思っていると、一人の男が近づいてきてこう言った。
「貴方も人間、ですよね。あの方には感謝せねば。我々を救ってくださったあの方に」
男はそう言って城の方を指さした。
その先には……
「あれ、俺の妹なんですけど……」