図書館での1ページ
無い。
こんな本俺以外読まないって思ってたのに……。
俺は今、図書館に来ている。
学校の図書館には普通に読書して見つからないような本がたくさん眠っている。
その中から面白い本を最近見つけたのだが……。
「昨日まであったのに……」
ちょっとショックだ。
なんか秘密基地が、凄く有名になってしまったような……。
「しょうがない。カウンターで聞いてみるか」
俺はカウンターの女の子に声をかけた。
「あの、この本の続きいつ返却されま……」
そう言いかけた俺の目に、彼女の両手に丁寧に持たれている続きの本が……
「あの、それって――これ、ですよね……」
彼女は、少し困った顔をしながらそう言った。
「どうもすいません。借りられていたんですね。ま、また来ますね……」
気まずくなった俺は、そう言いそそくさと図書館を出た。
まさか丁度持っているなんて。
少しの間は読めなそうだな……。
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数日後。
俺は、あの本を借りに行った。
本は……本棚には無かった。
俺はまたカウンターに行った。
「あの、この前の本……どうなって……」
俺がそう言うと彼女は、はにかんだ笑いを浮かべながら
「ど、どうぞ……」
と、俺に本を手渡した。
「どうもありがとう」
「い、いえ。待たせたのは私ですし……」
「ん、今何か言いました?」
「な、何でもありませんよ……」
「じゃあ、ありがとう」
俺はそう言い図書館を出た。
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数日後。
俺はまた図書館に来ていた。
本は……無かった。
そして、またカウンターへ。
「あの、もしかしてまた……」
俺は彼女にそう声をかけた。
「あ、この本――ですよね。どうぞ」
彼女はその手に持っていた本を俺に手渡した。
「いいんですか?」
「は、はい」
その言葉を聞き、俺は「ありがとう」と言って出ていこうとすると、彼女が声をかけてきた。
「あ、あの」
「はい?」
「この前は、その、ごめんなさい」
その言葉の意味を理解できなかった俺は思わず、
「え、俺何もされてませんけど……」
と言ってしまった。
「えっ、え~と、私、その本を読んでいたわけでは無くて……」
「え、そうなんですか?」
俺がそう聞き返すと彼女は申し訳なさそうに、
「はい」
と答えた。
そうか。折角何か話せると思ったんだけど……物好きは俺だけか。
あれ?でもなんでこの本を……。
「あの、じゃあなんでこの本を?」
そう問うと彼女の顔は真っ赤になった。
それから、
「あ、貴方が好き、だからです」
ゆっくりとそう言った。
へ?
「もう!何首傾げてるんですか!私は、貴方が好きって言ったんです!」
彼女は真っ赤になりながら思い切りそう言った。
「そ、それは、分かりましたから、何故その本を持っていたのかを……」
俺がそう言うと彼女は少し頬を膨らませて、
「もう、ほんとに鈍い人ですね」
と、言った。
それから彼女はその理由を話した。
「私、ずっと図書館で受付してます。だから貴方がその本を読んでいることも知っていました」
「はい」
「それで、貴方が珍しい本を借りているものだから、私が直接渡してもいいかなって」
「そう、だったんですか」
「で、貴方の、その、返事は……」
「それなんですが、もう少しこのままでいませんか?」
「な、なんで――ですか?」
「その、そうやって恥ずかしがってるのが、か、可愛いから、です」
俺がそう言うと彼女は恥ずかしさの限界に達したのかカウンターの内側でうずくまり、
「ば、ばかっ」
そう、呟いた。