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気ままに掌編  作者: 春山 隼也
3/12

思いの末に

 ある日、息子が病気になった。


 最初はなんてことないただの風邪だと思っていた。

 しかし、息子の容体は悪化するばかり。

 幸い、この病気は治りずらいが死に至ることは少ないらしい。

 しかし、この病気に効く薬はまだ見つかっていなかった。


 このまま何もせずにはいられない。


 そう思った俺は、薬を探す旅に出ることにした。


---


 最初のうちは、何も分からなかった。


 山に入り、ただ生えている草をむしり、保管する。そんなことを続けた。


 そのうちに一ヶ月がたった。


---


 俺は、どんなものが薬としての効果があるのかを知るため本を買い勉強した。


 読んでいくと、今まで集めた草の中に薬草であるものがいくつかある、ということが分かった。

 俺はそれ売り、更に勉強した。

 勿論、草集めも続けた。


---


 俺が旅に出てから、半年。俺は『放浪の医師』と呼ばれ有名になった。

 俺が欲しいのは名声じゃなく息子を助ける薬なのに、それは中々手に入らない。


 旅の途中、家族から手紙が届いた。


 手紙には、『お父さん、頑張って。ありがとう。』とても弱々しい字でそう、書いてあった。


 俺は『頑張れ』とだけ書いて手紙を出した。


---


 旅に出て一年。すっかり薬草には詳しくなり、放浪の医師は知らない人の方が珍しい。そんな存在になっていた。


 そんな俺の下に速達便が届いた。妻からだった。


 急に息子の容体が変化したと言う。


 俺は急いで家に向かって出発した。


---


 それから家に着いたのは一ヶ月後の事だった。


 息子は……亡くなっていた。

 俺が、早く薬を開発していれば。もっともっと出来ることがあったはずだと、自分を責めた。

 いっそ旅に出ず息子のそばにいてあげたほうがよかったのだろうか。

 俺は旅に出て、色々なものを得た。知識、名声、資産。

 そして、息子を失った。


 俺は何を選択すべきだったのだろうか。


 俺のしたことは正しかったのだろうか。


 そんな思いがまた、頭を駆け巡る……

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