表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/51

32話 初ダンジョン④

誤字脱字報告ありがとうございます。



既に死んだものも含めればどれぐらいの数になるのか。


死骸は二十はあるだろうか、だがまだ武器を手に立っているものはその倍はいる。


そしてその中で抜きん出て目立つのはホブゴブリンだ。


体の大きさだけならユエよりも大きく、子供サイズのゴブリンの中では余計に目立つ。


だが今ユエが集中すべきは目の前のゴブリンだ。


位置的にもイクスが近いのでおそらくホブゴブリンはイクス達を狙うだろう。


上位種であってもイクスならば何の心配もない。


「すまない、助かった」


「いえ」


仲間にポーションを渡した男が戻ってくる。


彼が持つ剣を見て、ユエは「失礼」と一言断って洗浄をかけた。


ゴブリンの血で汚れた剣が綺麗になり、さらに刀身に指を当て鋭利化をかける。


「一時的にですがこれで少しはマシなはずです」


剣は汚れれば切れ味が落ちる。


ましてそれが魔物の体液ならば尚の事で、そのまま使えば剣を持つ手が滑ることだってあるし、使い続ければ刃だって鈍る。


なので洗浄でゴブリンの血を落とし鋭利化で切れ味を上げた。


この状況で武器が使えなくなるといった戦力の低下は避けたい。


男は一瞬驚いたものの、口早に礼を言って近くのゴブリンを斬りつけた。


出来ればイクスの方にいる人にもかけたいが、洗浄はともかく鋭利化は武器に直接触れる必要がある。


「イクス!」


視線を寄越すイクスに、ハンドサインで隣の男に魔法をかけることを伝えると頷き、それを伝えた。


男が反応したのを確認して、ユエは遠隔で男に洗浄をかける。


近くにいれば剣のみにかけることも出来るが、いかんせん距離がある。


そのため剣を持つ本人ごと洗浄をかけた。


土針(アースニードル)!」


土が槍のように鋭く尖り、近づいてきたゴブリンの足や腹を刺す。


ユエが魔法で牽制しつつ、二人で確実にゴブリンを仕留めていった。


ドンッと音がして衝撃が走る。


見ればホブゴブリンがイクス達と戦っており、さっきのは太い棍棒を叩きつけたようだった。


驚きはしたが、隙が出来たと思ったのか刺そうとしてくるゴブリンの腕を斬り落とす。


「ユエっ!」


イクスの声にそっちを見れば、何かがこっちへ向かって飛んできていた。


土壁(アースウォール)!」


それはゴブリンで、咄嗟に発動した土壁にぶつかりぐちゃりと潰れる。


どうやらホブゴブリンがゴブリンを投げたらしく、ユエと目が合うと濁ったその目がニヤリと笑った。


こっちにいたゴブリンをほとんど倒した後で良かった、そうでなければ危なかったかもしれない。


「テメェ、ユエに何しやがる」


「ゲギ……っ!?」


低く呟いたイクスが飛び上がり、それに気づいて見上げたホブゴブリンの頭に、躊躇いもなく剣を振り下ろした。


抵抗する間もなく縦に真っ二つになったホブゴブリンが地面に倒れる。


「ギャッギャギャ!」


「ギャギ!」


ホブゴブリンが倒されたからか、残り少ないゴブリンが劣勢を感じ逃げようとする。


しかし、それを許すはずもない。


「逃がすかよ!」


「このっ!」


イクスに圧倒されていた二人もすぐに我に返り、ゴブリンを倒していった。


ホブゴブリンを倒したことと数が減っていたこともあり、残りのゴブリンを全て倒すのにそれほど時間はかからなかった。


周囲を見回し、念の為に探索もかけるが魔物の気配はない。


戦闘の終わりにユエは小さく息をつき、背後に目を向けた。


目が合って頷けば、安堵の表情で結界を解除する。


魔術師だろう男は、怪我をして動けない仲間を守るためにずっと結界を張っていたのだ。


彼には魔力ポーションを、怪我人には治癒ポーションを渡したので、戦闘が終わるまで持ち堪えられたようで何よりである。


「怪我人の容態は?」


「治癒ポーションのおかげで傷は塞がっています。……でも、すぐには動けないですね」


治癒ポーションはあくまで傷を治すだけで、体力までは回復しない。


体力ポーションも手持ちがあるが、ポーションを使うよりはゆっくり休ませて自然回復させる方がいいだろう。


「人を呼んで来ます。これも報告しないといけないし、この人を運ぶための担架も必要でしょう」


「それなら俺が行こう」


ユエと共闘した男がそう言うが、ユエはそれを断った。


「貴方も大きな怪我こそしてなくても疲れてるでしょう。少し休んで体力を回復して下さい」


「俺が行く方が早くないか? ユエ」


「そうだけど、念の為に私よりもイクスが残った方がいいと思う。いざという時、イクスの方が動けるでしょ?」


さすがにまた大量のゴブリンやホブゴブリンが出てくることはないだろうが、他の魔物が出る可能性はある。


一人は怪我人、残りの三人も大きな怪我こそしてないが気力も体力もかなり消耗しているのは明らか。


となれば、四人を守るためにもイクスが残る方がいい。


「……だな。分かった。大丈夫だと思うけど気をつけて。これ地図な」


「うん、出来るだけ早く戻るよ」


地図を受け取り、ユエは来た道を戻った。


報告と怪我人の搬送もあるため身体強化をかけ最短ルートを駆け抜ける。


道を塞ぐ障害物(まもの)は当然排除だ。


人を連れて戻らねばならないのだから邪魔は少ないに越したことはない。


地図を手にダンジョンを駆け抜けたユエは、すぐに門番に事の経緯を報告した。


すると連絡用の魔道具を持っていたようですぐにギルドに連絡してくれた。


さらにその場にいた他の冒険者達に声をかけ即席の救助班を作り、怪我人の搬送を最優先にしてくれたので、ユエは彼らを連れて戻った。


誰もがゴブリンの数に驚いていたが、まずは怪我人の搬送が先だと運んでいってくれた。


説明のために彼らのリーダーであるトーマスと、イクスとユエが残ってギルドの職員を待った。


しばらくして職員が到着すると三人で事の経緯を説明。


それによればトーマス達はDランクのパーティーで、ダンジョン目当てでアリークへ来ていたそうだ。


ユエのようなダンジョン初心者ではなく何度か探索したこともあり、今日もいつものようにダンジョンに入った。


ところがあまり目ぼしい獲物がおらず、奥へと向かっていたところゴブリンが出てきて戦闘。


無難に倒せそうだと思ったら背後からもゴブリンが現れ、距離を取りながら応戦していたらゴブリンの巣へと追い込まれてしまった。


そこからは多勢に無勢ながら何とか必死に応戦するも、盾役の仲間がホブゴブリンの攻撃を受けて倒れてしまう。


魔術師の仲間に怪我人を任せ、二人で必死になっていたところに蒼の星が助太刀に入った、とのことだった。


ホブゴブリンは盾役を潰した後は引いて、傍観していたらしい。


それが出てきたのは蒼の星が参戦したことで状況が変わったからだろう。


と言うより、イクスが参戦したから出ざるを得なかったに違いない。


何しろイクスはBランク、その実力は折紙付きだ。


多少ゴブリンが群れたところで相手になるはずもない。


「ホブが動いたのは俺と、ユエがいたからだな」


「私?」


イクスの思いがけない言葉に聞き返せば、トーマスや職員達もユエに視線を向ける。


イクスはともかく自分もとはどういうことなのか。


「あいつはユエを狙ってただろ?」


「ああ、ゴブリン投げてきたやつ?」


「それもだが、最初からだ。ユエを見てからずっとあいつはユエを狙ってたよ」


「ああ、確かに。ずっとそっちの方を見てたし、あんたは行かせないようにしてたもんな」


イクスの言葉にトーマスが頷いて同意する。


確かにホブゴブリンと目が合った時に笑っていたが、まさか最初から狙われていたとは。


何故と思ったが、ふとゴブリンの生態を思い出す。


「あ〜……そっか。私が女だからか」


大変嬉しくないが、狙われるとしたらそれしか理由がない。


向けられる視線に憐れみが入ってるのも気のせいではないだろう。


「あのクソホブが。頭から割ってやって清々したぜ」


「あ、ああ、そうだな」


舌打ちしそうなイクスの呟きに、トーマスが少し引きながら相槌を打った。


それから蒼の星が助太刀に入った理由も説明し、事情聴取は終了。


詳しい調査はこのままギルドが続けるとのことで、三人はようやくダンジョンを出て街に戻った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ