序 突然のクビ
「お前は今日でクビだ」
それは突然の解雇宣告だった。
十八で騎士団に入り、半年の訓練期間を終えて配属されたのは故郷から遠く離れた東のイスト騎士団だった。
配属先の希望など新人の、それも平民のとなれば通るわけもなく。
ユエは配属先の辞令を受け取った翌日には、騎士団の用意した馬車で同じ辞令を受けた同期と共に東へ向かった。
それから五年近くなるだろうか、仕事にも慣れ後輩も出来、忙しいながらもそれなりにやり甲斐を感じていたのだが。
ユエの仕事は補給物資の管理や設備の維持など裏方仕事で、前任者が持病の悪化で辞職後、誰もやりたがらなかったせいで何故か今や責任者のような立場にいる。
ただし、手当てもつかないただの肩書きであり、必要な事だし別に嫌いな仕事でもないからいいかと引き受けていたのだが、仕事である以上はしっかりこなしてきたつもりだった。
だから、自分がもしや何かとんでもないミスでもしたのかと考えたユエだったが――
「雑務など誰にでも出来る。戦わない騎士など必要ない。役立たずの穀潰しはとっとと失せろ」
裏方仕事など誇りある騎士の仕事ではないと馬鹿にする奴もいるが、まさか役立たずの穀潰しとまで言われるとは。
だが、誰にでも出来ると言われればその通りだ。
しかもとっとと失せろと追い出されるということは、自分はもうここには必要のない存在なのだろう。
「そうですか。お世話になりました」
こうして、ユエは騎士団をクビになったのだった。