第4話 夜の誘い
しばらく投稿の間が開いてしまいました。お詫びにちょっと(*´艸`*)なサービス回です(笑)
二人のくそったれを始末した後に、衛士らに囲まれて衛士詰所に直行だ。それから、衛士長のドルンにいつものつまらん尋問を受けることになった。いい加減にしてほしい所だが、刈り込んだ髪に顔の傷、筋骨隆々で強面の彼も私の前では、意外に大人しいのだ。
「ユヅキ。それで、今回は何なんだ」
「いつもと同じさ。斬りかかって来たから、反撃したまでだ」
「まったく、今年に入って何人目だと思ってるんだよ」
「勘定は不得意でな」
「まったくもう。わかったわかった、宿屋や街の奴らから証言も取れたし。懲役はなしだ。だが決まりだから、埋葬費の徴収と今晩は此処で大人しくしてくれ。頼むぜ、牢をブチ壊すなよ」
やっと衛士長の取り調べが終わった。いつもの事ながら面倒なことだと思うが、こんな場所でも管理的な制度やお役人みたいなのがあるって事にそんなに不満を感じなくなったな。
いつの世でも、どんな世界でも秩序維持の仕組みなんてものは、一部の特権階級の者が自分らの都合のいいようにする為の手段の一つだからな。都合が悪けりゃ直ぐに変えるが、もう慣れたし好きにするがいいさ。
それから衛兵一人に先導されて、何時もの汚い豚小屋に連れて行かれた。金銭に短剣やその他装備も決まりだからと全て取り上げられて、残った衣類もへそ出しキャミソール風の一枚と短パンだけの薄着だぞ。風邪ひいたらどうしてくれるんだよ。まったくもう。
そんな事を思いつつも牢に着くと、鍵を開けるその衛兵の横顔が目に入ってきて、なんとなく見ているとまだ若そうだった。この世界の成人は15歳頃だから、それからまだそんなには歳も過ぎていない少年と言ったところだろうか。
「ど、どうぞお入りください……」
この若い衛士、下向いて小声でしゃべるとは、なんかビビってるな。そんなに私の事が怖いのだろうか。ふと悪戯心が湧いてくる。
「お前さん、人に話すときは顔をみろよな」
「はい、す、すみません! ユヅキさんお入りください!」
急に直立不動になって私の顔を見ながらしゃべりだした姿に、彼が緊張しているのが手に取るようによく判る。あれ、でも顔も赤いぞ。さては……。
「そうか、悪いな手間とらせてな。これはその礼だ」
この若い衛兵の名も知らぬが、若い子っていいもんだ。いろんな事を諦めた私と違って純な心がまだあるからな。そんな事を考えながら、彼の目を見つめながら頬を両手でそっと掴んだ。この子のくりっとした目が大きく見開き私を見ている。顔の赤みも増したようだ。
「ふふ、可愛いな」
「えええ、な、んあにおするんです……ふぐうっ!」
この子の言葉が終わらぬうちに、私は彼の頬にキスをするとその顔を引き寄せて胸の谷間にうずめてやったんだ。ほれ、ありがたく窒息しろよ。
「ふががが――っ!」
「ほれ、どうだ。私の柔らかな肌の感触は。ははは」
もう、すでに痴女だなわたし。ま、いいっか。
業を使った後は身が火照るからいつもの事だ。酒か人肌が無性に欲しくなる悪い癖さ。
さらに力を込めて抱き寄せて、彼の感触を楽しんでいたが……おっといけない、坊やがプルプルしてきたぞ。名残惜しいが悪戯もここまでにするかな。腕の力をといて開放してやろう。
「ぷはあ~! はあああ……」
「どうだ、良かったかな。ふふふ」
「……は、はい。あ、憧れのユヅキさんに、こ、こんなご褒美を頂けるなんて光栄です」
「はははは、子供のお遊びはここまでだ。続きがしたけりゃ、いい男になりなよ」
「はい! 頑張ります!」
そんなお遊びの後に、私はシラミのいそうなベッドに横になると、牢の外で名残り惜しそうに去る坊やを見送った。
明かりとりの小さな小窓から、暗い牢屋へ月の光がほのかに入ってくる。横になって一人でいるとそのほのかな明かりに、いつしか私の心を静め欲しいと思っていた。……まだ体の火照りが収まらない事を恨めしくも思う。
なぜなら業を使うと圧倒的な戦力もたらし、色んな能力を向上させるが、その反動は私の生き物としての欲求を刺激してくるんだよ。本能を刺激されると抗いがたくなるんだよ。
好む好まざるなどお構いなしに、いつしか自然と私の手が肌をふれ始めていた。……ほんとに呪いだな。
「……あっ……、く……ぅ……」
止まらぬ手に独りで自分の火照りを癒す自分は、悲しい生き物なのだろうか。ふと、こんな事なら坊やを呼べばよかった……と考えた自分がいた。
それから半時ほどが過ぎて体の火照りも収まり、やっと睡魔もやっては来たが、酒がないと寝つきが悪い。早く寝なければと葛藤していると、少し寝ぼけた頭に周囲の成素『ウィル』が警戒を囁いた。
何か来る! 私はベッドから飛び起きて身構える。
バサバサバサバサ――ッ。
この深夜にお客様だ。音の先に目を向けると、小窓に一羽のふくろうに似た夜鳥が羽ばたきを止めて佇んでいた。……またこいつか。街で乱闘した時に感じた視線の主の使いだろう。
『やあ、ユヅキ。似合いの場所に良い格好だな』
「うるせえな、いつもいつもこんな時間に来るんじゃないぞ」
『そう邪険にしないでくれよ。いい仕事を持って来た」
「お前の依頼はいつもろくなもんじゃない。お断りだ!」
『そう言うなよユヅキ。今回は特別だぜ。さわりだけでも聞いて欲しい』
この声の主とは会った事はないが、高額で厄介な仕事を定期的に運んできた。王都あたりのギルドで、スカウトや諜報活動を生業としているらしいが、こいつも業使いで、動物らを操り言霊を乗せる能力だ。いざやり合えばそれなりに骨の折れる相手に違いないと付き合う中で感じてもいた。
「わかったわかった、で、なんだ?」
『ある国の王女の護衛だ。歳は12歳、なかなかの美少女らしいぞ。どうだ興味ないかな? ふふっ』
「どうせ、つまらん身内の継承争いかなんかだろう?」
『そんなところだが、もっと根が深そうだ。かの姫も業使いでかなりの異能力を操るとの事だが、武力的なモノでは無いため警護をして欲しいそうだ』
業使いか……。それに美少女か……。しかも12歳。ちょっと興味はあるな。
「それで、依頼者は誰だと聞きたいが、教えはしないよな?」
『今回は特別だが、とある教団の重鎮だとだけ教えよう。しかも指名依頼のうえ超高額だぜ。どうだ、美味い酒も飲み放題だぞ』
ちっ! ここまで聞かされたか。業に美少女に美味い酒か。コイツはいつも私の癖を付いてくるのが腹に立つ。が、いいだろう。最近は小さな仕事に飽きてもいた。
なんでも来やがれって気持ちが、いつも自分の墓穴を掘る事にもなるんだが、面白そうだ。
受けてやろう! この依頼!
お読み頂きありがとうございました。