7.最強パーティの結成です!
ゴブリンキング討伐後。
倒した事を感知したらしく、トラックで戻ってきたルミアとラニ。
ミナヅキに肩を借り、トラックの荷台に乗せて貰う。
帰り道、ラニが運転を行い、荷台に乗る俺とルミアとミナヅキ。
「いやー、ルミアさんのお姉さんは凄いですねー!一撃ですか一撃!」
「お姉様なら当然ね。光の巨人型宇宙魔王もゴリゴリ倒す戦闘魔王だもの」
「ルミア、姉を戦闘魔王と言うものではないですよ?強いのは巨大人型機械破壊神である私の異世界知性体、ヒトカタの力に寄るものですし」
巨大人型機械破壊神、異世界知性体ヒトカタ。
あれは凄かった。ルミアのグングニールとは全く別の方向性で凄かった。
ゴブリンキングを右手だけで圧殺してしまったのだから。
すぐに消えてしまったので全貌すらわからないのが恐ろしい。
「うわー!今度見せて下さいね!謙虚な魔族の人って新鮮なのです!遅れましたが、私は大魔王さんのとこのお隣の国、獣人の姫で、ラニって言います!気軽にラニちゃんと呼んで下さいな!」
「はい、ラニ様ですね。ルミアがお世話になってます」
「凄いです!大魔王さんのとこの人なのに超マトモではないですか!敬称が様ですよ!」
「暗に私がマトモでないと言っているのね。いい加減身の程をわからせましょうか」
女三人寄ればなんとやら。五月蝿い。
「ちょっとシノ、いつまで仏頂面をしてるの?いい加減機嫌を直して?」
こいつらとは視線を合わせず、俺は不貞腐れていた。
「やりすぎたわ。ごめんね?ほら、私が素直に謝ってるんだからいいじゃない」
「あの場ではシノさんを呼び出せるルミアさんと、死んでても生き返らせられる私が逃げるのがベストだったのですよ!申し訳ないとは思います!」
「見殺しにしようとした」
「し、仕方がないじゃないの。あんな大物が出てくるなんて予想外だったのよ」
「あらあら皆さん仲が良いのですね。ルミアにもお友達が出来たみたいで安心しました」
微笑んでいるミナヅキ。いや元はと言えばあんたがさっさと来てくればよかったんですけどね。
お友達、と言う言葉に反応するラニ。
「そうです!私たちはお友達なのです!お友達は笑って過去を水に流せる関係なのです!」
「ラニちゃんめんどくせえ。さっさと運転してろ着いたらパーティは解散だ」
「扱いが酷くないですかね!?」
ルミアはラニを一瞥し
「そういえば、さっき貴方なんでもするから、って言ってたわね」
「あー、そういえば言った気がしないでもないです!まあ、ゴブリンキング討伐の現場に居合わせなかったので経験値は貰えませんでしたが命も助けて貰ったので出来る限りは!」
「ほらシノ。この子好きにしていいから機嫌を直しなさいな」
その言葉を聞き、運転中のラニを見る。
金髪碧眼。14歳。性格に難はあるが、これでも姫。
普段はローブを身に纏っているがやたら発育がいいのは見てとれる。
「そうか。給料も出なかった俺に現物支給か」
「え?え?なんか後ろからの視線が怖いんですが何されるんですか私!?」
「ナニをされるかなんて、私の口からは。ちなみにシノの部屋のティッシュの消費量は凄いとだけ」
「あら、シノ様はお盛んなんですね?」
「どういう事なのですかー!?」
■■■■■
トラックを返し終え、ゴブリンキング討伐の報酬を受け取ったミナヅキと共に家に戻ってきた。
そして
「おら、きりきり働けぼっち姫が」
「扱いが酷くないですか!働きますけども!」
俺の趣味に合わせてやたら胸元を強調し、ミニスカのメイド服に着替えさせられたラニ。
エクスなんとかちゃんを背負っているのが少々アンバランスだが、その格好で家の雑巾がけをさせていた。
部屋が余っていたので、住み込みの家政婦とする事にしたのだ。俺の雑用も減るだろう。
床はイオちゃんが綺麗にしてるので正直雑巾がけは無意味だが、まずは形からって事でなんとなくやらせている。
「意気地がないわね。直接手を出せばいいのに」
「馬鹿。仮にもお前もいるこの小さい家で手を出すか。何よりなんかこう、直接手を出すよりもいいだろ」
「直接手を出されるより目線が汚らわしいのですが!」
ミニスカで雑巾がけ。古典的だが良い。
「シノ様はフェチでいらっしゃるんですね」
「それにしても、お姉様はこの後どうするの?」
「そうですねえ…」
頬に手を当てるミナヅキ。
「最近、ゴブリンキングの様に魔物の変異種がいきなり力を持つ事が増えているそうなの。私は既に魔王にもなっているから、今回みたいに傍にいられれば守ってあげられるし、しばらくここにいてもいいかしら?」
「新魔王が出てきたら困るし部屋も余ってるからいいけれど、他の地域は大丈夫なの?」
「お兄様がなんとかするでしょう。私は頑張りました」
「それもそうね」
頷きあう二人。大魔王の家は上の兄弟に大体物事を押し付けたいタイプばかりの様だ。
「じゃあですね!またその辺の強い魔物をパーティ組んで倒しに行くのがオススメなのですよ!魔法使いのルミアさんに、破壊神使いのミナヅキさん、回復職の私と…何が出来るのやらさっぱりわかりませんがシノさん!最強パーティの結成です!熱い友情の物語がはじまるのです!」
「バランス悪いな、なんだそのクソゲー。ほれ、ラニちゃんに待ってるのは雑用の物語だよ。次は洗濯しとけ」
「洗濯はシノに任せられなかったからありがたいわね。私の分もお願いするわ」
「では、私の分も。ラニ様、頼みますね?」
「私、これでも一国の姫なんですけども!」
■■■■■
翌日。
俺たちは正式にパーティを組む事になった。街でちゃんと登録しておくと、色々便宜を図ってくれるらしい。
既に魔王かつそもそも冒険者としては登録されていないミナヅキもいるので、毎度の受付のお姉さんに書類を提出した。
あのお姉さんとのやり取りは無駄に長くなるので省く。
帰宅し、提出時にお姉さんから渡された書面を食卓で見る俺たち。
「登録書類と一緒にさ、ルミアさんがドラゴン討伐ついでに穴あきチーズみたいにした山に魔物の空白地帯が出来て、そこに以前より強力な魔物がボコボコと沸き、まあ大変!さっさとやっつけて下さい!ミッションスタートです…って苦情風の依頼書が入ってんだけどなんだこれ」
地図と、そこに発生した魔物の大まかな分布が記載されている。
被害地域やら何やらが書き込まれている。
「よくわからんが、これって倒したらまた別の魔物がやってくるんじゃないんかね?エンドレスじゃねーの?」
「と、思うのが素人の浅はかさね」
「さいですか。じゃあ倒したらどうなるんだよ」
俺の疑問にミナヅキがお茶を啜りながら
「今回の様に一時的にバランスが崩れただけの場合、別の地域から来た魔物を狙って駆除していけば元々その土地のものではない魔物は寄り付かなくなります。魔物は繁殖もしますが、そもそもはこの世界の土地毎に決まったものが自然から発生するのです。私たちが召喚を行う様に、自然もまた召喚を行って世界のバランスは保たれているのです」
「そういう事。つまり、本来は居るべきではない魔物だけを狙えばその内勝手に元通りになるの」
「バランスを崩した奴が偉そうに」
ラニはお茶請けのおせんべいを齧りながら興味深そうに話を聞いている。
「魔族視点からの魔物の生態系の話ははじめて聞いたのです!自然発生するからいくらでも出てくるのですね!ではでは質問いいですか?」
「はい、ラニ様。なんでしょう」
「そのルミアさんが倒したと言うドラゴンや、今回のゴブリンキングの様な魔王を名乗れるほど強い魔物はなんなのですか?はじまりの街付近に現れるには明らかに不自然なのです!」
「鋭い指摘ね。お姉様、回答をどうぞ」
ルミアもわかってないんじゃないかこれ。
「お父様…大魔王が管理していた時はよかったのですが、人間との戦いが終わってからは魔物の生息分布の異常がよく見られる様になっています。これは人間の居住区域の拡大、もしくは新魔王による大規模な経験値目当ての虐殺を逃れる為、が主な原因と言われていますね。ドラゴンについては多分本来の生息地に今言ったどちらかが起こったのでしょう」
「では、ゴブリンキングはどうなのですか?」
「わかりません」
「えー!一番気になるところなのですが!」
「なんででしょうね?元々人間との和平前から強い魔物が魔王を名乗るならともかく、ポッと出のゴブリンキングが魔王どころか憑依型の破壊神の力まで得ていたのは明らかに異常なのですけれども」
「まあ、わからんことはしょうがない。ともかく、この討伐の依頼はどうする?」
「いいんじゃないかしら?」
「お?遂にダンジョン業を諦めたか?」
「違うわ。私はグングニールによるラグナロク砲撃以外に攻撃手段はないから。オーバーキルでそもそもその依頼に向いてないのよ。つまり、私は何もしなくてもいいの」
そうか。下手にグングニールを使えばまた自然破壊をすると言うことか。
「ちなみに、私も無理ですよ?ヒトカタは見せ場が来た時しか戦闘行為を行えません。そういう契約なんです」
「ああ、お姉様は観客一体型の破壊神使いですものね」
よくわからん。ミナヅキは毎度情報過多で困る。
魔王ってのはどいつもこいつも一芸入試みたいな奴ばっかなのか。
平時は使えない魔王と魔王候補である。いや、平時に使えないもんか魔王なんて。
「えー?じゃあ、私とシノさんだけでやるのですか?それって事実上私一人だけってことじゃないですか」
「そうだな。俺の事は戦力として数えないでくれ。大丈夫お前にはエクスなんとかちゃんがついてるじゃないか。一人と一本だ」
俺は自分の実力はちゃんとわかっている男。ここで出しゃばる気はない。
「雑用の範疇を超えてますよー!流石に無理なのです!」
「そうは言ってもなあ」
「シノ様はそんなに弱いのですか?」
「弱いも弱い。スライムにも苦戦する男だぞ」
「けれど、ゴブリンキングの時にそれなりに経験値を積んでいらっしゃるのでは?一応の新魔王に近距離で本気の敵意を向けられていたのですから勝手にレベルも上がっているものかと」
「は?」
レベル?そういえばそんな概念があったな。
そもそもゴブリンキングの元に行ったのもラニの経験値稼ぎが発端だった。
「ルミア、今の俺ってどのくらいなんだ?」
「イキられても困るから隠していたけれど、まあレベルだけならラニより上でしょうね。昔は大魔王に殺されてから蘇生を受けた人間はそれは強くなったと聞くわ。それに、元のスペックが低い分なのかシノは得られる経験値が人よりも馬鹿みたいに多いみたい」
「えー!ずるいのです!ずるいのです!」
「黙ってろよ俺を見殺しにしようとした奴隷姫。ルミアのモロに喰らって消し炭になればすぐレベル上がるだろ」
「いつからそんないかがわしい称号になったのです!?」
「で、それってこの依頼をこなせる程度には強いって事なのか?」
「どうかしら。流石にスライムくらいは倒せるでしょうけど、エクスなんとかちゃんみたいな破格の鈍器がないからね。武器の差は大きいわ」
「あー、俺虫取り網しか武器ないもんな。なあ、ラニちゃん相談なんだが」
「嫌なのです!エクスなんとかちゃんを奪われたら流石に洒落にならないのです!後鈍器扱いしないで欲しいのです!」
ラニはエクスなんとかちゃんを抱えて離さない。
ふむ。棚牡丹で強くなっていると言うのなら、戦ってみたくなるのが男の子である。
俺は自分の真の実力を知った男。今こそ出しゃばる時だろう。
毎度のヒモ行為でルミアに武器でもねだるか、と考えているとミナヅキが両手を拍手の形にして言った。
「では、私が魔法を教えてあげましょうか?」
二つ返事で頷いた。
俺の物語がこれからはじまりそうな予感がした。




