4.違和感を感じる事が出来たのですね?
翌日。今日はミナヅキと二人で異常レベルの魔物の発生地点に向かう。
昨日のスケルトンの話を聞いてから、何か嫌な感じがする。
異世界知性体の死体が、魔物になる。
なんだろう。俺はルミアの眷属になった事で、死んでも魔物にはならないらしいが。
足取りが重い。
「はあ……」
深く溜息をつく。ミナヅキが声を掛けてくる。
「どうかなさいました?体調でも悪いのですか?」
「いや、なんと言うかさ…」
ルミアもラニも、この世界の法則と考えて一切疑問を持たなかった。
きっとミナヅキもそうなんだろう。けど、それでも誰かに話したかった。
この違和感を共有したかった。
ミナヅキに、昨日教えて貰ったこの世界の異世界知性体のスケルトンについて話す。
「……」
無言で、困った様に首を傾げるミナヅキ。
ああ、やっぱりミナヅキもこの世界の人だからわからないんだろうな…
「シノ様。魔物の生まれる過程を聞いて、違和感を感じる事が出来たのですね?」
「へ?」
思っても見なかった返答。
ミナヅキは、嬉しそうな顔でこちらを見ている。
「ああ、そうですか。そうですよね。ルミアはいい召喚をしましたね!まさかシノ様が世界から外れたなんて!」
■■■■■
魔物の発生地点までまだある。歩きながら、ミナヅキが先程の話の続きをしてきた。
世界から外れる、とは何か。
「順を追って話しましょう。前に、この世界の召喚と魔法について話しましたね?」
「言ってたな」
何かをこの世界に呼び出し適応、固定してしまうのが召喚。
一時的に他の世界の法則だけを持ち込むのが魔法。
「バケツを想像して下さい。色のついた筆を洗う行為が、『魔法』。この世界は他の世界の法則に汚染されています。いずれ真っ黒に染まりこの世界は滅びてしまいます。しかし、人間は魔法を使うことを止められません」
「いきなり大きな話だな。なんで止められないの?」
「精神。個々の持つ力自体が魔法であり異世界だからです。生きる行為自体が、世界を汚染する行為。滅びに向かわせているのです。ゆっくりと、ですが。だから…」
一息置いて
「滅びを抑制する為に、他の異世界の者を、適応させてこの世界に呼び込む。バケツに綺麗にした水を注いで、誤魔化す行為。それが人間たちの多くが行う『召喚』の本来の意味です。世界に疑問を抱かず、そのまま朽ちて世界の一部になる。長い年月で誰もが忘れていますが。世界は広がり続ける事で汚染から逃れているのです」
「本来の意味ねえ」
相変わらず、ミナヅキの話が壮大すぎてよくわからない。
けど、なんとなく聞いた事がある話にも思える。
俺の世界でも、宇宙は広がり続けていると聞いた事がある。
召喚でそれをやっていると言う話だろうか。
しかし、適応の話とどう繋がるかわからない。
ミナヅキは俺に話したくてしょうがないらしく、どんどん話を進める。
「なんとなくわかればいいです。世界は、この世界に適応させ、世界の一部となった異世界知性体の力。世界はバランスを保つ為、無駄な知性体を間引く為。死骸に限らず、死んだ精神は世界に還元され魔物になるのです。更に言えば」
「更に言えば?」
「異世界知性体を大量に召喚し、殺し合わせる。世界に還元されるはずの、その経験値を死んだ異世界知性体に注ぎ込む事で強い魔物になる。これが近年の、唐突に強くなる魔物。即席魔王。唐突に現れる新魔王発生の基本プロセス。召喚の悪用による異常速度での経験値の獲得。精神の拡大。特に無限衆と名乗る者たちの仕組みです。前に私が会った時の無限衆も、ゾンビ系の魔物だと名乗ったらしいですね?」
蠱毒みたいなものだろうか。
異世界知性体同士を殺し合わせて、新魔王が生まれる。
吐き気を催す内容。しかし、聞いていく程に、先の件以上の違和感を感じる。
「スケルトンは、間違いなく新魔王生成の際の残りカスでしょう。そして、同時期に依頼された今から行く魔物は、間違いなく新魔王の類でしょうね」
と、ミナヅキは満足した様に
「ふふ、ついつい話し過ぎました」
「で、世界から外れるってのは?」
「ごめんなさい、本題でしたね。この世界にあって、その精神が適応から外れる。異世界から来たどうかに関わらず、知性体が世界の支配から開放される。それはつまり魔王。超越者の証。世界の管理者たる大魔王と同じ視座。ルミアはまだ気付いていませんが、力は相応の物を既に持っています。そして、眷族となったシノ様が気付けたと言う事は…ルミア自身ではないものの、その延長線上に魔王と同等の精神の質が発生したと言う事。魔王となる資格を得たに等しいのです。魔王候補ではなく、真に魔王を名乗る準備が出来ました」
「適応から外れると魔王の資格になるのはわかった。けど、なんでそれをルミアに直接教えないんだ?」
ずっと聞いてて一番の違和感。
なんで、それを知ってて今まで言わなかったのか。
「それが、魔王のルールだからですよ。違和感も感じていない、世界の法則に塗れた者には明かせません」
「おっけ。魔王ルールがわけわかんないのは知ってる。けど前さ、新魔王のトリドリって奴倒した時。魔王の証を倒す前に奪うのはルール違反だって言ってたんだよ」
「そうですね。奪えないはずですよ?」
「倒した経緯を誰もミナヅキに言ってなかったんだな…俺さ、魔王の証奪えたぞ?ルミアに渡したら、魔力に変えて撃ってた」
「え?」
え?ってなんぞ。
ミナヅキのキョトンとする顔。俺の方がわけがわからない。




