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3.シノ出してみて!出して!

死霊悪霊の類が跳梁跋扈する霊地。この場所に異常発生したモンスターの討伐。

それが今回の依頼だ。


俺たちは、スケルトン群生地にやってきていた。


「うわ、グロ」


スケルトンと言えば骨の魔物。

骨と言っても、完全に白骨化しているわけではなく少し、なんというか肉が残っている。


「ああ、あの辺が異常発生の奴ね。骨になりきっていないのに動いてるわ」


「あれは、前に言ってたみたいに地域毎に自然発生するんじゃないのか?」


「それもあるけど…一定条件の死体をベースにスケルトンは動き出すの。さっきも言った様に、普通は完全に骨になって動き出すわ。今回の場合、スケルトンなのに完全白骨化していないで動いてる。鮮度のいいスケルトンなのが異常な点ね。世界のバランスが悪いわね」


ゾンビとスケルトンの中間みたいな魔物。鮮度のいいスケルトンとは。

いい得ているのやら、いないのやら。とにかく妙。


「さてさて、頑張るのです!」


久しぶりの依頼なので、屈伸をして身体を温めているラニ。

ルミアもグングニールの調子を確かめる様にしている。


「あれ?ルミア?俺のナイフがないんだけども」


俺は荷物を探すが、最近よく使っていたナイフが見当たらない。

ラニが侮蔑の目で


「うっへり。甘えてるのですか。最近は武器の管理もルミアさんに頼んでいるのですか?そういうとこですよ」


「一切言い返す事ができないな。最近、俺は依頼あっても出かけてなかったしなー」


うちに持ち込まれる依頼で俺が役に立つ事は少なかったので春になってからは書類仕事ばかりしていた。

最近はルミアが身の回りのものを積極的に管理してくれているのもある。


「ふふ、大丈夫よ。武器がなくても今回は」


言って、俺の背中に手を当ててくるルミア。

魔力が服越しに流れ込んでくる。


「さあ、シノ!今こそチートを授けるわ!口上を述べてみなさい!」


「チートとは。口上とは」


「いつも私がやってるやつよ。…そうね。右手を前に出して『ルミアの眷属シノ、スケルトンよ地に還れ!口上終わり』とでも言って見ましょうか。はい復唱」


いまいち理解が出来ないが、とにかく何か起きるんだろう。

俺は右手を前に出し、


「えー、ルミアの眷属シノ。スケルトンよ!地に還れ!口上終わり」


言い終えると、魔法を使った時の様に何か精神が世界に干渉するのを感じる。

そして、春風トリックの使い方を感じた時の様に、頭の中に情報が流れ込んでくる。


「はい、シノ出してみて!出して!その右手に!」


俺がルミアに言われるままに右手に力を込める。

すると、俺の右の手の平から何かが出てくる。


「うわ、なんですかそれ。グロいのです」


俺の右手には、俺の魔力が形になった2メートル近くある棒が生えていた。

グロい。しかし、なんか見たことある様な


「ふふ、シノの身体は今や私の血と魔力で構成されている部分が多いわ。加えて言えば、新魔王を倒した時の魔王の証の魔力。ほとんどは取り込んですぐに砲撃で使っちゃったけど、少しだけシノにも流れ込んでる。それを利用すれば、あいつが使っていた新魔王の破壊神の力をシノに還元出来るの!」


「ええ?これあの破壊神の力なのか?なんか嫌なんだけど」


確かに。言われてみれば破壊神から出ていた棘に似ている。

あー、そうか。それ棘か。


「私も取り込んだものだし、文句言わないの!さあ、下手な武器より強いからそれでやってみなさい!」


「おっけーやってみるわ」


棘を両手で構え、スケルトンを突いてみる。

すると


相手に刺さった瞬間、棘の先が分裂して相手を内部から八つ裂きにした。

骨を砕き、肉を裂き、相手が完全に動かなくなる。


「グロいのです」


「思ったよりグロいわね」


「そうな。なんか…あ、これもっと伸ばせそうだわ」


「やってみせて?魔力をもっと回してあげるから」


ルミアが後ろから抱き着いてくる。

スケルトンを沈黙させた棘が更に伸び、周辺のスケルトンを八つ裂きにする。

最初は2メートル程だったのが、複数に分かれ数十メートル伸びていた。

そして、周りのスケルトンは完全に動かなくなった。


予想以上の効果に呆然とする俺たち。

その内、魔力が切れたのか棘が短くなり、俺の手に収納されていった。


「ルミアの魔力込みだけどやばいなこれ。なんか全部倒しちゃったけど」


「そうね。ラニ、貴方今度から書類仕事だけしてなさい」


「や、役立たず姫とは言わせませんよ!土地の浄化くらいはしとくのです!」


役立たず姫とは言ってない。

ラニはその辺の骨をかき集めて一箇所にかため、浄化の魔法を唱えている。

その姿を見て、なんとなく、俺は違和感を覚えた。


「あれ?魔物なのに光にならないのか、スケルトンは」


俺の言葉を聞いて、ルミアとラニが顔を見合わせる。

そして、何かに気付いたかの様に


「ああ、またシノさんの勉強不足なのです」


「そうね…シノ?死霊系は基本的に、ベースがあって、それが魔物になるの」


「ああ、さっきも言ってたな。死体が動き出すだけで、自然発生してるんじゃなってことか?」


「肉体を持っているタイプの異世界知性体ビジターの死体。それが動き出すの」


「え?何それ」


「この世界の法則では死体は本来動かないの。召喚された異世界知性体ビジターも、この世界に適応しているけれど、死んだら別。死体が動き出す世界の法則に汚染されてしまう事があるの。本来は骨を砕いて散骨するのが人間の異世界知性体ビジターの弔い方なんだけどね」


「これは違法に破棄された死体なのです。悲しい話なのです。何故か後を絶たずにどの地域でも死霊系の魔物は定期的に現れてしまうのです」


言いながら、悲しそうな顔をして丁重にスケルトンの骨を浄化していくラニ。

ルミアは俺に抱きついたまま




「シノは私の血が混ざったから。私より弱い世界の法則なんかには支配されないわよ?安心して?」


二人にとっては、この世界の事。当然の事なのだろう。

やがてラニの浄化も終わり、岐路につく。




しかし、この件は。俺はこの世界ではじめての感覚。

強い違和感を感じていた。

感想ありがとうございます。一件の感想が、こう細々とやっているとどれだけ嬉しいか。震える。

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