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1.春だもの

ここから二章です。

章管理とかは追々やります。

この世界に於ける街は、結界の中の、更に防壁の内側に作られる。

結界は弱い魔物の進入を防ぐ。防壁は、強い魔物が侵入してもある程度耐えられる。


建造には莫大な費用がかかる為、『はじまりの街』周辺の開発は遅れている。

有能な人材もまた、『はじまりの街』に留まりはしないので尚更。

つまり、コストに見合わない行為なのである。




■■■■■




季節は春。木々は色づき、心地の良い風が吹いている。

居住区も設けた、ダンジョン型商業施設の計画を持ちかけてから数週間後。




俺たちの家の周辺は多くの労働者に溢れ、たくさんの建設中の建物が並ぶ。

イオの街の近くに、巨大なダンジョン施設を作る為である。


いつもの食卓の椅子に座り、俺は計画書を見ていた。


「これはぼろい商売だな」


冒険者たちに支払う賃金を見ながら、呟く。

計画自体はほぼラニがまとめてくれた。地味に万能である。


俺が提案したのは冒険者に賃金を支払った後に、希望者にルミアのラグナロクで経験値を積ませること。

冒険者たちの能力が向上して作業効率はアップ。

ダンジョンのボスとして負けた(正確には勝てないのですぐ降参する)冒険者に、ダンジョンの代金として手持ちの資金の半分を支払って貰う。

費用対効果コスパが抜群らしく、希望者は後を絶たない。


つまり、単純に支払う額が半分で大量の労働者を雇えたのである。

この世界はレベルによって明確に能力が向上する為、給与の平均額もレベルに比例するらしい。


しかし、レベルが上がっても最初に結んだ短期の雇用契約の支払いのまま。

それでもいいと、後を絶たない参加希望の冒険者たち。


「いや、ルミアの言ってた通りだな。経験値が凄まじいから。うまく回れば左団扇じゃないか。この商売」


「ふふ、そうでしょう?」


大魔王の末娘にして、魔王候補。

加えて俺を眷属にして夫婦みたいな関係となった少女。


後ろから抱き着いてきているルミアが得意げに言う。


「早く新しい家が建たないかしら。楽しみね?」


新居は建設中の為、俺たちは、ルミアが最初に出した家に住んでいる。

何がどうとは言わないが、この家は壁が薄いので何も出来なくて困っている。

俺の顔を覗き込んできたルミアが、俺の考えを察した様で


「ねえ、シノ?我慢できないなら、その辺の宿でもいいのよ?」


「埋まってるだろ、どこも」


実際、未だにイオの街近辺の宿泊施設は冒険者過剰で埋まっていた。

だからこそ、今回の計画があるのである。


「はじめて同士はよくないって言うし、リードして欲しいし、ラニで練習してもいいのよ?私はそういうの気にしないから」


ルミアの言葉を聞き、俺の対面で書類とにらめっこしていたラニが噴出す。


「いや、ほんとそれはよくないのですよ!冗談にしても過ぎるのです!」


「春だもの」


「俺、許可出てもそこまでは出来ないわ。ラニちゃんのスカートに顔つっこむくらいにしとく」


「シノったら謙虚ね」


「かー!わけわからないのです!脳内お花畑なのですね!そんなルミアさんは見たくなかったのです!」


今回の計画で一番頑張っているのはラニだ。

書類仕事は元より、作業現場の冒険者たちへの効率アップの為の支援魔法。

現場での怪我人への回復魔法。家の中での雑務。ほぼ全てを行っている。


ラニ。獣人の国の姫にして、うちの雑用係。攻撃魔法以外は大体なんでも出来る。

ぶっちゃけ、なんでもするって約束をしたとはいえ付き合いがいいよな、こいつ。

まあ、その分ルミアやミナヅキの近くにいる事でモリモリレベルは上がっているらしい。


「あら、私はそろそろ慣れましたよ?ルミアはずっと私たち家族としか会話していませんでしたから、きっと刷り込みみたいなものだと言い聞かせてます」


ミナヅキ。うちのパーティのちゃんとした魔王。ルミアの姉。大魔王の長女。

他の面子もおさらいしてるので、あらためて言うと

巨大人型機械破壊神を駆る観客一体型の破壊神使い。

何を言っているのかよくわからないが、とにかく俺もよくわからない。


よくわからないものの、防壁の外の作業の希望者が後を絶たない点には、ミナヅキも一役買っていた。

何が出てきても倒してくれる絶対の抑止力。


この近辺に出た新魔王ゴブリンキングを一撃で倒しているのは冒険者界隈で知れ渡っている様で

また似た様なものが出てきても大丈夫、むしろ下手な場所よりも安全。

魔王の庇護下は駆け出しの冒険者のレベル上げにうってつけの場所なのだ。


「ミナヅキさん、自分に言い聞かせてるじゃないですか!正気に戻って下さい!ルミアさん最近やばいですって!淫乱処女!淫乱処女になってるのです!」


「そこまでいくといい加減不敬よ貴方」


いつも通りのやり取り。

俺は手元が手元の書類を見ていると、玄関の扉をノックする音がした。


「開いてるから入っていいぞー」


この流れはきっとあいつだろう。何者店主ことハープの来訪だと考えた。

足音が近付いてきて、食卓に現れたのは


「皆様お久しぶりですー!いかがですか事業の方は!」




予想が外れた。

来客は、ギルドの受付のお姉さんだった。

先日、更新もしていないのに数十アクセスがある時間帯がありました。

何が起こったのか。不思議でなりません。

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