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19.大好き

「それは大変に酷いのです。召喚されて、この世界の勉強を怠りましたね?せめて召喚士サモナーの種族的な特性くらいは一緒に生活する上で学ぶべきだったのです。いやほんとない。ないない。素直に吐き気がするのです」


「私も日常会話に察する力を使う事はないのでな。本当に酷かったぞ。いやむしろ話の流れから察しろ」


ハープから事の顛末を聞いたラニ。

ラニなんか未だかつてない嫌悪感を孕んだ目で俺を見てくる。

受け付けない、と言う表情である。メイド服を着せても、下着を見てもそんな顔はしなかった。


二人で俺を責めて来る。

いや流石に責められるのはわかる。言い訳するのはよくないと俺も思う。


「ルミアに謝りに行きたいんだけども、身体が本調子じゃないんだ。ラニちゃん、補助魔法かけてくれないか」


「はいはい。エクスなんとかちゃん強めシールドーからのエクスなんとかちゃんフィジカルアタック身体補助アシスト!!!死ねえ!!!」


エクスなんとかちゃんで殴って補助魔法を物理的にぶち込んでくる。


「いってぇ!おい!酷いのはわかったけどもラニちゃんが殴る必要はねぇだろ!」


「いや、酷いのです。私が同じ事されたら死罪にする事すら頭をよぎるのです。何より本調子でなくてもさっさと出て行くのですクソ異世界知性体ビジター


「ほんとそれだ。さっさと行って来い。行き先くらいは察してやるぞ」


言われたい放題だが、魔法の効果あって身体を起こせる様にはなった。

春風トリックを唱え、


「いや、それくらいは自力で大丈夫だ」


「格好つけて、見つけるまで時間かかる方がクズなのですよ?それくらいはわかった上での発言ですよね?」


ラニの発言に、頷いて俺は飛んで行った方角に向けて走った。

正直言えば、ルミアが行きそうな場所に心当たりがあるわけではない。


しかし、この近辺でルミアが知っている場所は限られている。

感情的に窓から飛び出して行ったので、いきなり方向転換する事は考えられない、と思う。


で、あれば行き先は飛んで行った方角の先。先日のドラゴンがいた山だと俺は推測した。

普通に歩けば半日はかかる距離だったが、俺の春風トリックならそこまでかからない。




■■■■■




山頂だった場所。ラグナロク砲撃でクレーターになっている場所。

そこでルミアがプカプカチェアーの上で体育座りをして、顔を伏せていた。

やっぱり、ここだった。


「…ルミア?」


俺が声をかけると、びくっと肩を震わせる。

そのままプカプカチェアーが浮きかけるので


「待ってくれよ!」


言って、ルミアの正面に立ち両手で椅子の背もたれを抑える。

顔を伏せたまま、くぐもった声で


「…椅子に手をかけないで欲しいんだけど」


「ちょっと話をさせてくれよ」


ルミアは黙っているが、とりあえず飛んでいかないでくれた様だ。

こういう時、感情で話すと碌な事にならない。俺は言葉を選びながら


「その…血を分けて貰うって意味がそういう事だとわかってなかった。ごめんな?俺、女性に好かれた経験とかなかったから、最初に聞いた時は正直訳がわからなかったけども、そういう意味だって分かったら、凄く、嬉しかった」


言って、顔を伏せたままのルミアの頭を撫でる。

抵抗される様子もなく


「ルミアは、可愛くて、綺麗だし。召喚してくれたからって訳じゃないが、話もし易いし、これからずっと一緒に居られるのは、嬉しい。夫婦、ってのは…正直実感が沸かないんだけどさ」


俺が緊張する場面じゃないのに、途中から少し声が震える。

喉を鳴らし、


「俺とずっと一緒居てくれるか?」


言って、沈黙が訪れる。

数秒が、何時間にも感じられる。


ルミアが顔を上げる。目が赤い。泣いていたみたいだ。

そして、ゆっくりと口を開き


「私、家族以外の人と会話したこと、ほとんどなかったの。ずっと城にいたから。お父様は、私を人間の学校に通わせたかったみたいだけど、行かなかった。人間とは力が違い過ぎるもの。何かの拍子で、簡単に殺してしまいそうで、怖かった。だから、力を制御できる様にはずっと練習していたわ」


目元を拭いながら、たどたどしく


「シノはね、私にとって家族以外ではじめて話した人。それに、あの時危険を顧みず、弱いのに、助けてくれた。だからね、死んで欲しくなかったの。必死で、助けたかっただけ。私だって、本当は夫婦なんて実感はないの」


そこで、俺の目を見て


「けど、私は…シノの事が…」


最後までは言わず、ただ


「…困る、かしら?」


言われて思わず、ルミアの事を抱きしめた。

両腕で、強く。華奢な身体が、身を震わせている。


「困るはずない。むしろ、俺なんかには勿体無い。俺もルミアの事が好きだ」


抱きしめられたルミアが力を抜く。

そのまま、ずっとこうしていたいと感じる。


ルミアが、俺も耳元で、本当に、小さな、囁く様な声で


「   」


本当に小さな声。聞き取れはしなかったが、

俺が両腕の力を強めると、ルミアが俺の背中に手を回して抱きしめ返してきてくれた。




この日、俺は正当な魔王の眷属となった。

次回で第一章終わり、のはず。のはず

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