17.デメリットは最後に伝えるのが魔王の基本よ?
暗闇だった。
何も見えない。それどころか何かある様には思えない。
まぶたの感覚がない。開いているのか、閉じているのか。
どういう事だ?俺はさっきまで、新魔王を名乗るトリドリと言う魔物と戦い、
それを倒し、ルミアに抱きかかえられて…
そこで意識が途切れていた。
どうなってるんだ?と考えていると…
ルミアの声がした。
「あら、意識が戻ったのね。今動ける様にしてあげるから」
動ける様に?どういう事だ?
しばらくすると全身の感覚が戻ってくる。少し痺れているが、熱を感じる。
ゆっくりと目を開く。イオにあるはずのいつもの家。
ルミアが俺の顔を覗き込んでいる。
「どう?見えるかしら?」
「ああ…見えるよ。回復してくれたんだな」
「ラニがなんとかね。私の治癒じゃ間に合わなくて、失血で本当に死に掛けてたのよ?」
「マジか。そんなに酷かったか、俺」
「ええ、それこそ穴開きチーズみたいになってた。おかげで私の服も血塗れで着れなくなっちゃったわ」
確かにルミアがいつも着ていた学生服ではなく、黒いワンピースを着ていた。
「ごめんな?」
「まあ、服なんてどうでもいいの。お気に入りだったけど。それよりも、心からお礼を言うわ。ありがとう、シノ。後、私の方がごめんなさいね?」
「何がごめんなさいなんだ?助けてくれたのに」
すると、ルミアが窓越しに遠くに視線を向けて
「いやまあ、なんというかね。蘇生はあくまで前にお姉様が説明した、精神を呼び戻す力。肉体の損傷が激しいと、そのまま蘇生不可能な死を迎えることもあるの」
「あー、ラニちゃんもなんか言ってたなそんなこと」
「そう。だから、肉体の補填の為に私の血を使わせて貰ったわ」
ルミアの血を?輸血みたいなもんか?
血液型とか大丈夫だったのだろうか。
「んん?ルミアの血で助かったって事だよな?それ、なんで謝られるんだ?」
「ああ、理解していないのね…シノの世界には、血を吸う魔物みたいなのはいなかったかしら?」
「何それ。魔物はいなかったけど、ヴァンパイアみたいな?」
相手の血を吸い、仲間を増やす有名な怪物。
「そう、それ。それよ。ヴァンパイアみたいな。魔族の中でもうち、大魔王家は血すらも力を持つ」
「つまり?」
自分の身体を見てみるが、穴が開いたであろう場所の肉が盛り上がっている以外特に変わりはない様に見える。
ルミアが覚悟を決めた様に口を開き
「シノの身体は!私の力の影響が大き過ぎて!ほぼ100%私の魔力補助なくして動けない様になってしまったのよ!」
ああ、さっき目が開けなかったのはそういう事か。
ルミアの魔力を貰ってないから動けない的な。
「で?それはどういう事になるんだ?」
「ここは一回驚いてから質問してくれないかしら」
「な、なんだとおうどういうことだよお!!!」
「無駄に大声で棒読みとは恐れ入ったわ。何故驚かないのかしら?」
いや、だって、なあ。
「異世界知性体の適応力?もしくは召喚された時点で驚いたから、その程度ではもうそこまで驚けないと言うか。そもそも考えてみろよ、魔力補助以前にルミアの指示ないとこの世界で何したらいいかわからんのだが」
「そ、そう…けど、魔力補助がないと動けないということは、私が大魔王になってもずっと一緒にいるって事よ?」
「あーね。まあ、目的も何もないしそれでもいいよ」
そういうと、ルミアは少し頬を赤らめて
「そう。なら、いいんだけど。これからもよろしく。シノ」
「おお、あらためて言われると照れるな。よろしくな、ルミア」
「後、私が魔力を定期的に与えないと、肉体の私が補填した部分が壊れて世にも恐ろしい痛みと共に死ぬから。今後は太陽の様に扱って頂戴」
「おい一番驚くべき重大発表を最後に持ってきやがったな」
「あら、デメリットは最後に伝えるのが魔王の基本よ?」
トリドリを倒した時にも見た笑顔を返された。
床をイオちゃんがずりずりと動いていた。
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何を言っても、なってしまったものは仕方ない。
気を取り直して、俺はルミアに聞きたい事を聞く事にした。
「そういや、なんで家に戻ってきてるんだ?」
「お姉様の酔いが冷めたから、ヒトカタでここまで運んでもらったの。流石にシノがあんな状態であの村に留まるのはよくなかったから。ラニは新魔王討伐の報奨金を貰いに行ってるわ。お姉様はまた村に戻って、一人で馬車を連れて数日後に戻ってくるわ」
「まあ、そうな。それくらいはやってもらわんと。助けた人は?」
「私は話さなかったけど、ラニから聞いた話だと無事でシノにもお礼を言いたがってたそうよ」
「そっか。ならよかった」
そんな会話をしていると、部屋の扉が開いた。
「目が覚めたのですね、シノ様」
「あら?駄目お姉様。こんなに早く戻ってきたの?」
ミナヅキの声。視線を向けると
「長女魔王だと思ったか。じゃじゃーん声帯模写もお手の物。我が名はハープ。そろそろ起きるかと思ってな。朝ごはんの誘いがなかったので、こちらから来たぞ」
立っていたのは得意げな顔をしている小さな魔女っ子。
何者店主ハープだった。
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