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16.俺たちはパーティなんだぜ?

作戦をラニに伝え、人質だった冒険者を横たえる。

ラニは俺に出来る限りに身体強化の補助魔法とシールドをかけてくれている。

この作戦は一発勝負。そもそもこんな自体想定していない。

ぶっつけ本番のチームワークが試される。


「ほ、本当にやるのですね!そもそも魔王にどこまで意味があるかもわからないのですよ!ルミアさんに確認とった方がいいのでは!」


「いや、トリドリとか名乗ってたあいつに気付かれたら意味ないだろ?不意打ちするんだぜ?」


「確かにそうなのですけども!」


「このままじゃジリ貧だ。ミナヅキ起きないし。本気で逃げたらラニちゃんとそこの冒険者置いてけぼりだぞ?」


「た、確かに!ありがとうございます!お礼するのです!」


「今後はスパッツ履かないでくれればいいよ」


「えー!ここで言いますかねそんなの!」


「何よりな。今ここでルミア助けられるのは、俺たちだけだ。俺たちはパーティなんだぜ?あんなぽっと出のよくわからん新魔王にやられて黙ってられないだろ?」


「うわ格好良い。はじめてシノさん格好良いと思ったのです!そんな性格の方でしたっけ?さっき落ちた時に頭打ちましたか?回復足りませんか?雰囲気に飲まれてませんか?一時の功名心とかアドレナリンやらドーパミンが人生を狂わすのですよ?」


「止めてくれてるのか?よくわからんめんどくせえ。ラニちゃんぼっちだからチームプレイ苦手だろ?失敗するなよ?」


「うるさいのです!」


軽口を叩くが、指先が少し震えている。

目の前ではルミアとトリドリが空中戦をしている。ルミアの方が分が悪い。

アドレナリンとかね。その通りだ。

なんでこんな中に飛び込もうと思ったのか、自分でもわからない。

けれど、


「この世界に来てようやく見せ場が来た気がするぜ、俺」


「死んだら見せても意味ないのですからね!せめて蘇生出来る程度の死体になって下さい!跡形もないとかは無理ですから!ぐちゃあ、とかくちゃあ、くらいにしといて下さい!」


「くちゃあ、ってなんだよ。ガムか」


しかしそうか。跡形もないと無理か。そりゃそうか。

しかし、相手が相手なのでどうなるかわからん。

ラニの補助魔法で強化済の俺は集中薬を飲み、春風トリックを重ねがけし

ラニの持つエクスなんとかちゃんの先端にしがみ付いた。


「ちょっと重いですが、私も今滅茶苦茶補助魔法で強化してますからなんとかいけそうなのです!頑張って下さい!」


「しゃおらあ!ぶっつけ本番だ!気張ってけラニちゃん!!!」


「しゃあ!仲間を守る為に力を貸して!エクスなんとかちゃん!!!」


俺がエクスなんとかちゃんにしがみ付いたまま、

ラニが、エクスなんとかちゃんを大きく振りかぶり

一気に振り上げる!




「いっけえええええ!!!エクスなんとかちゃん即席カタパルト!!!!…今!離して下さい!」




手を離す。


ジャストタイミング。


飛ぶ俺。浮遊感。

ゴルフで打たれたなら、きっとこんな感じなのだろう。

放物線を描くこともなく、目的地へ一直線。


異形の塔。無限建築イチヤジョウに乗るトリドリの方に跳んでいく。


少し離れた位置からは、俺の様子に気付き驚くルミア。ちょ、何してるのシノ、とでも言いたそうな顔。

付き合いは浅いが、なんとなくわかる。あいつ最初表情薄いと思ってたが、割と顔に出る。

俺は塔から伸びた棘の一つに着地した。周りからルミアに向かった様な棘が湧き出てくる向かってくる。

上からは俺には当たらない様にしてくれてるが、ラグナロクが降り注ぐ。

けど、今の春風トリックを覚えた俺なら


『貴様、何をしようと言うのだ!死んでおけ!』


湧き出た棘が俺に殺到する、が


「うるせえ!避けるだけならな!今の俺ならなんとか!」


春風トリックはただ速くなるだけの魔法じゃなかった。

そもそも、ルミアのラグナロクの余波で飛んできたものを払っていた時に気付くべきだった。

そんな動体視力俺にあるはずがない。

この魔法は判断力もや思考も速くなる。

どこまでいけるのかわからないが、意識すれば少なくとも今の俺より遅い攻撃は


「いける!ガチで避けられるぞ!」


避けられる!明らかにやばい攻撃だけど避けられる!


足を動かす。動かす。動かす。巨大な棘を踏み込む。走り抜ける。

追ってくる棘。突き出してくる棘。全く意図しない方向から現れる棘。縦横無尽に迫り来る棘。

しかし、今の俺にはスローに見える。テレフォンパンチだ。

量だけはやばいけど、棘の殺傷能力があるのは先端だけ。

そこにさえ当たらなければ!


避け続け、塔を昇って行く。目指すは…!


「てめールミアに何してくれてんだよ!このタコ!棘を足に見立ててタコって言ったんだよ笑えよクソが!」


『なっ!』


急に距離を詰められて驚くトリドリ。

一発、思いっきり殴る。

けど、俺は速くはなっても火力はない。ザコならともかく、こいつに効果は大してない。

ラニにもそう言われた。実際、トリドリは驚いてはいるが微動だにしない。

そもそもナイフも使わずただ殴ってるだけだし。この一発は気分の問題。

本命は


「ルミア!!!こいつの仮面剥いだぞ!いけるか!?」


大声でルミアに問いかける。

トリドリ自身が言っていた。魔王の証、仮面。

ルミアはそれほど力の強い新魔王ではないと感じていた。

それであれば、トリドリとの力の差はこれ、のはず。

それを殴ったついでに奪ってやったのだ。

ルミアも椅子から立ち上がる時もある。

顔に直接のり付けされてるわけでもなし、簡単に奪えた。


遠くでルミアが右手で親指をぐっと出している。ナイスアシストってことですねわかります。

合ってる。この考えは合ってたみたいだ。


それを奪い、颯爽と来た道ならぬ棘を引き返す。


『な、き、貴様!人間の異世界知性体ビジター如きが!魔王を倒さずに証を奪うなど!ルールを守れ!』


「その魔王のルール初耳だけどもさ!今この瞬間魔王の証持ってない奴が魔王を名乗っていいんですかねー!?」


仮面を剥がされ、顔を覆いうろたえるトリドリ。

余裕こいてた新魔王が三下っぽい台詞を吐いている。笑える。

俺に向かってくる無数の棘。棘。棘。

それを器用に避けていくが、これ帰り道に死ぬかもしれないの想定してたんだった。

つまり、俺が考えていた作戦はここまで。作戦と言うのもアレだが、やる事はやった。


棘を避けていくが、結局


塔自体が揺れ、宙に浮く俺。

あ、駄目だ。宙に浮いたら走れない。春風トリックがいくら速くなれても足をついてないと動きの速さも意味がない。

先程、冒険者を抱えて落ちた時、随分とゆっくり時間が流れた気がしたが、つまり魔法の効果だった。

周りから棘が向かって来る。空中でじたばたするが意味はない。

俺にとっては、スローで向かって来る棘が俺を刺してくる。

少しずつ肉が抉られる感触。刺された場所が熱い。

何箇所も刺されていくので、熱過ぎてどこを刺されたかもよくわからない。

熱いのに、血が出て少しずつ冷たい感覚になっていく。

気持ち悪い。今は熱いで済んでるけど、早く回復して貰わないと洒落にならない感じがする。

意識が飛びそうになる。





けれど、その瞬間。


俺に一斉に棘が向かったことで、

ルミアに向かう棘はなくなっている。


サモンブランケットが発動する。

一度でも召喚したものを手元に出すルミアの魔王便利アイテム。

それは、家とかだけではなく。俺も召喚されたものとしては例外ではなく。


俺は瞬間的に刺されている場所から消え、

少し離れた空中、ルミアの元に呼び出される。

ミナヅキもいる辺り椅子に対して定員オーバー気味だが、ルミアが引き寄せてくれる。


「魔王ルール的にはなしだけど、よくやってくれたわ。ありがとう」


そして、ルミアは俺が持っていた仮面を手にする。

黒い霧が発生し、薄くなって消えていくトリドリの仮面。

消える魔王の証。


『なっ…我が魔王の証がっ!』


プカプカチェアーが、ドラゴンを倒した時の様に変化していくかと思ったが変わらず。

代わりにグングニールの先端が、強い光を放ち始める。

無限建築イチヤジョウの棘が殺到してくるが、どんどん椅子と共に上昇するルミアに追いつけない。

ルミアが高らかに本日二度目の口上をはじめる。


「我が名は大魔王の末娘ルミア!我が眷属の名はシノ!未だ魔王に至れぬ身なれども!」


グングニールを構える。


「魔王の証を、そのまま魔力に変えたならば…流石に耐えられないでしょうね?」


光が収束していく。

トリドリの仮面の魔力も取り込み、過去最高の光を放つ。


「格下と侮ったのはそちらの様ね。貴方は二度と起きられない。自身の溜め込んだ力と共に、永久におやすみなさい。はい口上終わりラグナロク!」


眼下に光が放たれる。

グングニールが軋みをあげる。

傘の骨が歪む。

悲鳴の様にも聞こえる発射音。


瞬間。

トリドリと無限建築イチヤジョウが、今まで見た事がない火力のラグナロクの白い光に包まれていき








跡にはクレーターが残った。

それを確認した瞬間、意識が切れかけそうになる。

下ではラニが冒険者を背負って手を振っている。

ルミアが治癒ヒーリングで俺を回復しながら語りかけてくる。


「最悪逃げても良かったのに、どうして無茶したの?」


「…まあ、なんだ。一回くらい俺つえーしたかったんだ」


「てめールミアに何してくれてんだよとか言ってたけど」


「言ったなそんな事。どうだったよ」


「うん、素直に格好良かったわ。ラニにもっとちゃんと治して貰うから、今は休みなさい?」


意識が薄れる中、この夜最後に見たのは、ルミアが俺に向けてくれた笑顔だった。

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