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13.ご機嫌なお姉様の魔王ジョーク

また数日後、小さな村に辿り着いた。


「この辺りは獣人の国境に近いのです!私と同じ種族の村です!」


「割と近いのな獣人の国」


「はい!宿の場所も知ってるのです!こっちです!」


村に入ると、外からの人間が珍しいのか奇異の視線に晒される。

ラニの案内を受た宿に入り、宿の入り口で新聞を読んでいるおじさんに声をかける。

確かにラニと同じ国の人なのだろう。ケモノ耳が生えている。


「はい…うわ、姫様じゃないですか。旅立ってまだ数ヶ月なのに何しに来たんですか?」


「ふふん!近くに新魔王が出るとの情報を聞きつけて狩りに来たのです!」


「そんなのがいるんですか?被害の噂は聞きませんが」


「よかったのです、何も起こってなくて!」


「しっかし、金に物言わせてこんな何人も雇って…」


嫌そうな顔をする宿のおじさん。


「違うのです!今回はちゃんとした仲間!パーティなのです!」


「おい。ラニちゃんってどこでもこんな扱いなのか?仮にも新魔王討伐に来てんのに」


「うわ、って言ったわよ」


「いやあ、姫様は昔から世直しと称して勉強もせず、何人か冒険者を雇って国の周辺を遊び歩いてましてね。旅立つ前から年中レベル上げをしてるお人でして。武勲を挙げて王位継承権をー!とか。王位継承権ってそういうものじゃないんですけどね。なんで、新魔王も正直半信半疑ですわ」


「ラニ様、やっている事が今と変わりませんね」


「い、一応、人を襲う魔物を倒すのは役に立ってるはずなのです!」


「まあ、金払いはいいですし仲良くして差しあげて下さい」


「そうね。金払いがいい子が全部払ってくれるわね?」


「えー!今回はルミアさんの用事でもあるのですから割り勘ではないのですか?」


「お友達の皆さんの分も姫様が払って頂けるんで?」


「お友達であれば支払うのはやぶさかではないのです!」


「ラニちゃんさあ…まあいいか」




■■■■■




宿の一階は食事と取れるスペース。二階が宿泊施設になっていた。

何人か冒険者がおり、酒を飲んでいる様だ。

俺たちも、テーブルに座り夕食を取っていた。


「リクトビウオの余りを引き取って貰ったのです!多少お金になったのです!」


「貴方、お金持ってるのにマメね」


「お金はいくらあっても困らないのです。少しでも貯め込んでおかないと。他人より上にいきたい時の一番の方法は財力なのです」


「あら、ラニ様はマウンティングがしたいのですか?ケモノ的ですね。そういうの滅びればいいと思ってしまいます」


「出たわよ、ご機嫌なお姉様の魔王ジョーク。獣人の村でこれをぶっこむ辺り私も笑いを禁じえないわ。と、言うか何故お酒が出ているの。お姉様弱いから断ったはずよ」


「相当なのですけども!」


魔王ジョークってなんだろう。ブラックジョークみたいなもんだろうか。

いやしかしそれよりも、さっきからミナヅキが凄い勢いで酒を飲みながらけらけら笑っている。

明らかに強そうなお酒の瓶が何本も置いてある。勝手に頼んだのだろうかこの人。


「おい大丈夫なのかミナヅキは」


「ええもちろん駄目よ。ここまでご機嫌になったお姉様は最早駄目お姉様」


「ふふほんと滅びればいいと思ってしまいます。ヒトカタ出します?出しますか?ちょっとだけですよ?」


「ちょ、ルミアさん止めて欲しいのです!カジュアルにカタストロフするのはほんと勘弁なのです!」


「大丈夫よ。その内寝るから。明日の朝にはすっきりした顔をしているはずよ」


寝る前に魔王の口上を終えたらこの宿壊れるのだろうか。

ミナヅキは笑いながら、手元の酒が切れたらしく他の客の卓の酒まで滅ぼしに行った。

ラニが止めようとしたが簡単に振り払われている。

全額ラニが払うからいいか。

と、俺たちが馬鹿をやっていると、突然宿の扉が開いた。服の汚れた男性の獣人の冒険者が入ってくる。


「こ、ここに魔王はいるか!仲間が…仲間が!!!」


宿のおじさんが水を渡す。水を呷る冒険者。


「どうした、何があった」


「…仲間が変に強い奴に捕まって!魔王がこの宿に泊まってるから連れて来いって!」



この場で魔王を名乗れる奴やつは……

俺とルミアとラニが目を向けた先。


ミナヅキは寝ていた。

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