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10.この世界の真実って借金の事だろ

何者店主と共に俺とルミアは昼からお酒も出る飲食店に来た。

と言っても、俺とルミアはソフトドリンクだが。


「なんと付き合いの悪い。察する力も悪ければ付き合いも悪いとは」


「私、お酒の味が好きじゃないの」


「で、何者店主ほんと何者なんだよ」


ビール風の酒を一気にあおった何者店主。

ラニより幼い容姿なので、飲酒していると抜群に違和感。


「っぷは!では答えましょう。何者店主とは仮の姿!私は父は元勇者パーティの勇者!母は同パーティの大魔女!我が名はハープ!」


「ああ、大魔王を倒せなかったでお馴染みのアレか。芸風は魔王家とあんま変わらないのな」


「なんと失礼な。大魔王の末娘、異世界知性体ビジターのしつけがなっていない」


俺の発言に食って掛かって来るハープ。

って言うかそもそもルミアは大魔王の末娘だって名乗ってないよな?察する力なんだんだ。


「だって本当のことじゃないの」


「我が母である大魔女は私よりも察する力が強過ぎた故に、この世界の真実に気付き、そして大魔王は何もしなくても良いと考えたのだ」


「この世界の真実ってなんだよ」


「真実については母は私に教えてくれず…その内、父と母は私にあの店を任せ旅立ったのだ。ちなみに店には借金があった。指輪の売り上げは返済に充てさせて頂く」


「この世界の真実って借金の事だろ」


会って少しの時間だがとりあえず変な娘なのはわかった。

酒で勢いが増している。


「ちなみにこの街には勇者邸跡地と言う観光名所があるが、あれはただの借金の抵当に持ってかれてる土地だ」


「どうしようもない勇者だな。って言うか、その察する力があれば稼げるんじゃないのか?」


「察する力はあっても、うちは代々商才はない。言わせないでよ恥ずかしい」


「察したよ。お前もやばい奴だな」


「シノ。お前も、とは。他は誰のことを言っているの?」


俺はじっと見てくるルミア。俺は目線を逸らし話題を変える。


「それはともかく、ルミアの素性とか欲しいものとかなんでそこまでわかるんだよ。察するとかとは別次元だろ」


「いいところに気付いたわね。私もそこは気になってたの」


ステーキにがっつくハープに問いかける。


「この辺じゃ大魔王の末娘のダンジョンとは名ばかりの家がどれだけ噂になってると思ってるんだ」


「あーね。忘れてた」


そうだ。そういえば、イカれたダンジョンだとかなんとか噂になってるんだった。


「それに、ここ最近、力を持つ魔物がやたらと増えている。そんな中、はじまりの街付近なんかで新魔王ゴブリンキング討伐に関わったお前たちを、察する力全振りの私が知らないはずがない。欲しいものがわかったのは企業秘密だ」


「そこは全部察する力でないんだな」


「ゴブリンキングには私たちは何も出来なかったけどね。と言うかなんでそこまでわかって何故商才がないの」


「それな」


「商才は、うちの家の呪いみたいなものだ気にするな」


って言うかゴブリンキングの件も噂になってんのか。買い物と申請関連でしか街の人と関わってないから知らんかった。

そこでハープはルミアを、いや性格にはプカプカチェアーを見て


「その玉座は魔王の資格には達していない。魔王を名乗るものは、同格以上の魔王か勇者でないと完全には倒せんからな。大方、身内の長女魔王が倒したのだろ?」


「そうそう。どんな情報網だよ。気持ち悪い」


ハープは得意げに笑う。笑うとこじゃない気がするが酒が回っているのだろう。


「うんうん、気持ち悪いはともかく。そんなお前たちにこの場を開いて貰ったのは他でもない。私が指定する魔物を倒して欲しくてな」


「借金まみれでよく依頼とか出来るな。ついでにうちらは別の依頼を抱えてるんだ。察しろ」


「察した。あんな山に住み着いた外来種なんぞ、そこの大魔王の末娘が指輪つけて討伐に加われば一日で終わる。何より、これは依頼じゃない」


そう言って、俺たちがまだ受けるとも言っていないのに唐突に何か地図を出して来た。

手に取るルミア。


「…何これ。新魔王の発生予想地点とか書いてあるけれど」


またか。この世界来た時点では関わる事がないと思っていた、新魔王。

そんなにそこら中にいるもんなのか。と、言うか


「そもそも新魔王ってその辺の強いモンスターと何が違うんだよ」


「それは私が説明しよう。大魔王の庇護下を離れ、勝手に力を付ける為に人間に平気で危害を加える個体はまだまだ後を絶たないが…強いだけのモンスターは魔王を名乗れない。強いモンスターと新魔王の決定的な違いは魔王の証と呼ばれる、他者の血肉を喰らう装備。魔力ブースターであり、自身の力と共に姿を変える強力な装備を持っている」


「つまり私のプカプカチェアーや、ゴブリンキングの王冠みたいなものを持っていて、好き勝手に魔王の証を成長させようと暴れまわっている個体が新魔王、ないしは新魔王候補よ」


「ああ、あの王冠、ミナヅキが回収してたけど魔王の証だったんだ」


確か、ミナヅキの破壊神らしいヒトカタの手が回収していたはずだ。


「そうよ。それ自体が魔力の塊だからね。倒して奪えばその分力も増すの。私の場合、それこそまだ魔王候補だから、うまく私より弱い中途半端な魔王とかと当たらないと奪えないから現実的じゃないけど」


そこで、飲み食いを終えたハープが


「魔王の証を奪えれば魔王としての覚醒も近付くのだろう?長女魔王と二人掛かりならさほど苦戦もしないだろうさ。この手の魔物に本格的に動かれると、近隣の村なんか一瞬で潰されるだろう。早々になんとかして欲しくてな。ついでに新魔王連合所属の疑いもあるんで、大魔王の末娘が来てくれて助かった。誰に頼もうかと思っていたのだ。私は払えないが報告すれば国から謝礼が出るはずだ」


「おい、新魔王連合とか聞こえたぞ。大魔王も言ってたけど連合ってなんだよ連合って」


「そのまんまだ。大魔王に対抗すべく徒党を組んだ新魔王だ。まだ人類を滅ぼそうとか全時代的なことを言っている厄介な奴らさ」


「貴方本当に何者店主なの。この情報出所はどこよ。指輪にしたって、私クラスの力を抑えるアイテムなんて普通取り扱わないはずよ」


ルミアが問いかける中、ハープは席を立つ。


「まあ、そこはそれであれだ。察しろ。私はイオで最も察する力のあるはじまりの街イオの魔女の雑貨屋さん店主にして勇者と大魔女の娘ハープ。次回の食事までその話題は取っておく。育ち盛りの私を哀れに思うなら毎朝ご飯に誘いに来てくれてもいい。ごちそうさまでした。本当にありがとうございました」


肩書きの長い何者店主ハープは礼儀正しくお辞儀をして店を出て行った。


「…どうする?この世界ってこういう曰くつきの奴しかいないのか?」


「さあ?私も出不精だったから何が一般的かはわからないわ」


「そか。で、薬は?」


「…面倒くさくなったわ。その辺の店で適当に買って帰りましょうか」


「俺もお腹いっぱいだし帰りたくなってきた」




本質的には物臭な俺たちである。

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