その2
今目の前にいる少女、年の頃12才くらいだろうか。髪はなんかバサバサのショートカットなんだけど、逆にそれが少年のような印象を見るものにあたえ中性的な魅力を引き出している。黒目がちな瞳は満月のようにまんまるで大きく、すっと通った鼻筋の先にはぽっちゃりとしたかわいい口が、おおきくひろげてオレが作ったメシをがつがつと食ってる。よっぽど腹が減っていたのだろうか、時おりこっちを睨みつつもその箸を止めることはない。
「ゴフッ!」
思い切りむせやがった。かわいい口から発射したご飯粒がオレの鼻の頭に着地する。
少女が着ていた水色のレインコートはハンガーにかけてカーテンレールからぶら下げてある。なんとレインコートの下は素っ裸だった。はだかだったのである。まあ、相手は子供だしオレロリコンジャナイシ、おっぱい大きいのが好きだし...
「...てな訳なんだけど、いい?」
「んぁ?ああ」
頭の中に焼き付いた2つのピンクのポッチを必死に振り払おうとしてる間に、箸を止めてなんか話しかけられてたみたいだ。思わず生返事しちゃったけど、まいっか。多少の頼み事くらいは。
うつむいた顔をあげたその表情が最高の笑顔だったから。
あと生乳首も見せてもらったしね。
「じゃあ、とりあえず乗り物を用意して。なるべく速いヤツ」
「用意してといってもそんな簡単に出来ないんだけど」
年相応の子供っぽい少しかすれたような声で、親にねだるみたいに言ってくる。服はオレが貸したTシャツにパーカー、ジャージのズボンだ。もちろんブカブカで裾は折り曲げてるんだけど華奢な身体にビッグサイズを着た女の子ってなんか良いなー。なんて思いながらボンヤリと答える。
「む!じゃあ、おんぶ」
無茶を言う。
「千葉から大阪までおんぶしてけっての?」
「じゃあどうすれば良いか考えといて」
その場でゴロンと横になり寝てしまう。
どうしても公共機関は使いたくないようで、とはいってもオレ車なんか持ってねーし。こんな調子で一方的なもんだからもちろん大阪にいかなきゃならない理由も説明なんてしない。
まあ、深く訊いてもないけどね。
しかし困った。旧世界史ならともかく今のこの世界では一般人が乗り物を持つことは非常に難しい。高級品だ。オレみたいな底辺じゃあとても手が届かない。
「どうすっか」
そう呟きながら考えていると視線を感じる。横になって寝転びながら、たたんだ座布団上の左腕を枕にし興味深そうにじっとこちらを見ている。
「ねぇ、なんで私に協力してくれるの?」
まぁ、そうだよな。普通に考えたら初対面で何のメリットがあるのかよく解らないってのに無条件で協力するなんて、怪しいし絶対裏があると思って当然だ。
「お嬢ちゃん上流層だろ。良くしてあげたら見返りがあるんじゃないかってね、上手くいけば今の暮らしから脱却できるんじゃないかってさ」
疑り深い目でこっちをみている。そらそうか。あ、いまフンッて鼻で笑いやがった。ちょっとムカついたゾ。
「お嬢ちゃんって呼び方キモいから止めてくんない?あとイヤらしい目で私の豊満な身体をなめ回すように見るのも」
ヒドイ言いぐさだ。そんな目でみてねーし。...見えたと見るは違うよね?
「解ったよルナちゃん。あとオレ未発達の女性には興味ないからね?見に覚えのない事でヒドイ言いがかりだよそれ、おにーさん傷ついちゃったな」
うん、おとなの対応だ。
「乳首見てたくせに」
はい?
何て言ったかよくきこえなかったな。さっきのご飯のお礼かな?
「私の乳首を穴が開くほど凝視してたくせに!」
「みみみみてなんかねーし!凝視ってなんだよ!ちがうし!そーゆーんじゃないし!ちがうし!」
誤解だよ誤解!だって見えちゃったんだもん。かわいいぽっちが、しょうぎゃないぎや...
噛みながらの必死の説明を高音のハスキーな声が遮る。
「ちゃん付けもやめて気色悪い、ルナでいいから。お兄さんのこともダーってよぶから」
もしかして、いやもしかしなくてもオレの名前がダイバだからか?
「いくらなんでも目上、年上に対してそれは...」
「じゃあロリコンチクビマンにする?」
「ダーで良いです、是非そうしてください」
こうしてオレの呼び名が決まって、不満だらけの気持ちでルナを見やるとこれまた屈託のない無邪気な笑いでこの空間を満たす。
そして全てを許して受け入れてしまうのだった。