プロローグ
夢を見ているのとは違う。
でもなんか現実味が無いというか、まるで目の前の出来事がテレビの中に映る景色の様に見える。
今、隣を一緒に歩いている幼なじみの顔もテレビに映る芸能人を見てる様で感情移入が出来ない。
そう、目に見えるすべてのものに情が湧かないのだ。
自分の家族、自分自身にさえそうなのだから困ったものだ。
「なにがこまったの?」
左横から見上げる二つの目。
自分より頭ひとつ背が低くまだ見た目中学生にみえる、幼さをたっぷり残した大きな瞳が不思議そうに尋ねてくる。
金色の瞳。
そして少し緑がかった髪の毛。
ほんの数年前までではありえなかった、いやまあアニメとかゲームの中だけの存在だった外見の女子高生が目の前にいる。
「むー」
無視されたと思ったのか、ほっぺたをリスの様にふくらせながら上目遣いでにらんでくる。
「ナビア」
黄金色の目をなんとなく眺めながらそう呟く。
統一言語でインゴット、純金という意味だ。
2年前、2つの世界が融合した。
その時全てのものがまったく新しい形として生まれ変わり、再構成された。
元素原子なんてものは否定され、かわりにK波という生命を形作ることを神に許された小さな波の一種が自分の存在する世界の基礎となった、んだけど...
それを今の人類がなんの抵抗もなく全部受け入れて、新規加入した、僕たちの側から見た異世界人と共存共栄する道を躊躇することなく選択するなんてことがおきているのが今の現実だったりする。
でも、そんな事どうでもいい。
「だって僕リア充だからね!」
ビクッとなった幼なじみが
「こんなに可愛い女の子がそばにいるもんね」
言って少し照れたのか、頬を桃色に変化させて笑いながら同意してくれた。
うん、たしかに可愛い。
そしてこんな可愛い幼なじみだけではなく、学校に行けばツンデレな美人委員長やアイドル顔負けのルックスをもつ生徒会長おしとやかで大人の魅力に溢れた担任、家に帰れば2つ年下のろり可愛い妹。
そのみんなに明らかな好意を受けつつ、あらたにフラグを増やしてくという現状。
「運動、勉強は出来るしイケメンだし家は裕福だし、」
「可愛い幼なじみもいるし」
僕の独り言のような呟きに本日2回目のとってもキュートな反応がかえってくる、
うん、やっぱりヤバい位可愛い。
なにがヤバいってそりゃもう、心の奥底にダイレクトにアクセスしてくるような可愛さだ。
そんなやりとりをしながら、いつもと同じ道を歩いて学校へ行く。
今、梅雨の中休み。
青い空が広がり夏を意識せざるを得ないまぶしい太陽が僕の頭を熱くする。
世界は変わったけど
平和で
なにもかもが順調すぎるくらいな毎日
夢のような現実
...夢じゃないよね?