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世界と隷属の秘密 天使、人間、悪魔

 彼は私の体にかけられた拘束を一つ一つ解いていった。その手つきはとても優しかった。


 私を拘束するものは首輪だけになり、そして、ガチャン、と音がして隷属の首輪がはずれた。


「首輪が……外れた」


 私は彼に抱きついて、そしてそのりりしい顔にキスをした。これは刷込み現象というやつだろうか? 長年の幽閉から助けてくれた王子様を好いていけない道理などないはずだ。

 私は、私は、私はもはや自由の身だ。


 彼の魔力を感知すると彼は私と同等の魔力を持ち、その身にドラゴンを宿していることがわかった。


「あなた、名前は?」

「サクラです」

 サクラ、にっくき月島桜と同じ名前だったが私はそれが為にサクラを嫌いになることはなかった。


「私の名前はフェリス。私の今は無き親友がくれた名前」

「フェリス。話すべきことはたくさんあるがまずはここから逃げよう。追っ手が来る」

「追っ手? 今の私たちならそのくらい簡単に退けられるのではなくて?」

「幽閉されていた君は知らないと思うが、元自由民で生き残っているのはもはや一握りの強者だけだ」

「元自由人?」 

「話は後と言ったろう? 逃げるぞ」


 廊下を走り、外に出た。

 外は廃墟であった。


「飛べるかい?」

「飛んだことはないけれど、飛べます」私には飛べるという確信があった。先に宙へと浮かんだサクラを見てやり方を真似る。足に力を込め、地面を蹴り上げると宙に浮いた。

「サクラ、どちらへ行くの?」「空中神殿ニライカナイ。私たち新人類の本拠地だ」


「新人類って何なの?」

「一言で言えば我々魔法を扱える元奴隷が新人類、それ以外の奴隷が人類だ」元奴隷、と言ったときのサクラの表情は複雑だった。サクラにも色々あったのだろう。


「三日前のことだ。我々を一千年に渡り拘束していた隷属の首輪が突如として機能を失った。ガチャンと音を立てて崩れ落ちたのだ。我々を縛り付けていた隷属の首輪が消えた影響は大きかった。旧人類のほとんどが元自由民との戦争状態に陥った。つもりに積もった恨みはとどまるところを知らず、世界中の街はほぼ壊滅。世界は機能を失っている。それが今の世界の現状だ。世界中が二分して戦ったがために、一部の強者を除き世界の8割が死んだと我々は推測している」

「そう。世界中がそんなことに」私は答えた。世界がどうなろうと興味はない。ただ、これからどう生きるか、そればかりを考えていた。

「実は、我々が奴隷の身に落とされていたことには理由があったのだ。そのことは世界の理と、そして我々の将来に影響がある」

 我々の将来、という言葉が気にかかった。私の将来にはまだ黒雲が立ち込めるのだろうか。そう言っている間に目の前に荘厳な神殿が見えてきた。大きな石造りの神殿は樹木で生いしげり、水が地上まで流れ落ちている。

「あれが?」

「そう、ニライカナイだ。ここには500人の同胞が暮らし、君の帰還を待ちわびていた」


 私たちはニライカナイに降り立った。大きな広場には数十人の人々がおり、私たちをたたえた。

「姫の帰還だ」「わー」「我々の勝利に向かって」「自由へ」

 思い思いの言葉は私の心を温める。


「この部屋へ入ってくれ、君の代わりのリーダーを務めていたサダルから君に引き継ぎをしよう」

「なぜ私? なぜ姫と呼ばれているの?」


「その件については私からお話ししましょう。私がサダルです」サダルは隻眼の中年男性だった。引き締まった体は日焼けしていて、サクラほどではないがかっこいい。


「人類には3種類いる、ということをご存知ですかな?」

 いきなり意味深な質問だった。

「3種類、というと? 元奴隷と元自由民の2種類ではないのですか?」

「うむ、やはりご存知ないようですな。説明いたしましょう。

 まずは、新人類。我々のことですな。魔法を扱い、すべての人より強靭な肉体を持ち、最も強くしたげられていたもの。次に、元奴隷その他。彼らは、一般的な人間です。全てにおいて平凡。ただやたらめったら数が多い。

 最後に元自由民。奴らは悪魔だ。比喩ではなく、文字通り悪魔の血族でまちがいないでしょう」

「悪魔の血族?」とわたしは問い返した。

「そうです」とサダル。「悪魔の血を引いたものです。今まで気づいたことはありませんかな? この三種の人間同士違う人類の間では決して子供ができないのです。我々の中の誰一人として、悪魔からの性的な辱めによって、妊娠したことはありません。ただ、奴隷同士を交配、この単語は昔使われていた言葉ですが、あえてそのまま使いますよ。交配することでしか増えないのです。これこそが三種の人類が別種族であることの証明です」

 わたしは疑問を口にする。

「「我々」と「普通の人類」を奴隷として「悪魔」が支配していたということですか?」

「その通りです」

「では、『我々』の正体はなんなのでしょうか?」

「神、あるいは天使だろうと推測しています」

「神か天使……」そうなのだろうか、いまいち半信半疑だ。


「しかし、支配が終わったのならそれで良いではありませんか。人類と悪魔が戦争をしているのは勝手にさせておいて、私たちは私たちで平穏に生きていけば良いのではありませんか?」

 私はもうつらいことはごめんだった。サクラと一緒に幸せになりたい。


「それはできぬのだ。我々は隷属の首輪によって封印されていた。封印を施した正体を見つけなければ再び封印、あるいは殺害されてしまうだろう。恐らくは悪魔の手によって」

「それに差し迫った危機もあります」とサクラ。

「『悪魔のいたずら』と呼ばれる存在です。元自由人・悪魔の中にたまに現れる異常に高い能力を持ったものを我々は『悪魔のいたずら』と呼んでいるのです」

 それはもしかして私のような転生者をいうのでは? とは言わなかった。

「近年の悪魔のいたずらの中で最も目立っているのが、アルフォンス・ド・フリードリヒ5世。伝説の中でひっそりと暮らす神獣を次々と抹殺し、何千もの女性奴隷を集めてハーレムを作り、その全員を斬首刑にした。その悪逆非道は悪魔の間でも話題になるほどで、その悪名は知れ渡っている。とにかく美しい女性を憎み、子供を作れない体に切り刻んでから、手足を捥ぎ、じっくりといたぶった後に斬首刑にするという」

 月島桜。恐ろしすぎる。女でなくなったのがよほど嫌だったと見える。

 私が悪魔のいたずらでこの体になったことは黙っておかないと。いつ敵と思われてもおかしくない。


「現在、50人程度の悪魔のいたずらが確認されていますが、それが差し迫った脅威です。悪魔のいたずらは我々に匹敵する強大な力をもち、我々とて正面戦争をしては絶滅は免れないでしょう」


「なるほど、理解しました。それで、私が姫というのは?」

 サダルが答えた。「あなたさまは女神の祝福を受けておられる。それが我々があなたを姫として迎え入れる理由です」

「女神の祝福とはなんでしょう?」

「はぐらかすのはおやめなさい。あなたも『悪魔のいたずら』を受け、逆に女神の祝福を勝ち取ったのでしょう?」

 ぎくっとなった。

「私は確かに悪魔のいたずらの現場に居合わせました。しかし、みなさんの敵というわけではありません」

「わかっていますとも」その場にいた全員が首を縦に振った。


 悪魔が自分の眷属を強化する方法は実は神の力を使っているのです。いずれかの神から奪った力で強化しているのですが、神の力は契約が基本。どんなに不利であっても契約通りに履行しなければなりません。どういう経緯かはわかりませんが、あなたはそこで、強化された奴隷という身分を勝ち取った。それこそが女神の祝福なのです」


「これで話はだいたい終わりです。疲れたでしょう。ゆっくり休んでください」

勢いに任せて書いていたら別の話になってきました。

今回の話、なんか微妙な気がするのですがどうでしょう?

感想欄から感想お願いします。

この展開はないわーって反応が多かったら書きなおします。

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