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兵器試験場の殺され役

 即座に俺は売られた。


 売り先は政府の兵器試験場兼訓練場。不死身の私には兵器なんてきかないだろう。という淡い期待は即座に打ち砕かれることとなる。


 上官はスキンヘッドの男性だった。「ではこれが君のスケジュールだ。それぞれの持ち場に行けばやることはわかるだろう。では早速スケジュール通りに動いてくれ」


 まずは射撃場だった。

 正方形の射撃場は遮蔽物がなく、的もなかった。そして、一面には15人くらいの兵隊が俺に銃を向けている。その場にいる隊長風の男が言った。

「皆のもの。いつものように奴隷が逃げ惑うからそれを撃つ訓練だ。命中の多いものには褒賞を与える。奴隷よ命令だ。全力で逃げろ。肺が裂けても逃げろ。痛い時は痛がれ。それでは、撃ち方、はじめ」


 言うが早いが、兵が全員私に武器を向け、撃ち始める。私は避けようと動いたが、今までまともに運動したことのない体ではよろっと歩くのがやっとだった。しかし、狙っている兵隊はずいぶん下手くそで。私に当たったのは一発だけだった。私はほとんど動いていないのに。ただ、その一発の威力に驚いた。右腕が弾け飛んだ。そしておぞましく痛い。

「ああああああああああああ」

 私は叫ぶ。走りながら。腕の回復までの1秒間、俺は死ぬほどの苦痛を味わった。なんだあの武器。正直人体実験された時より痛いぞ。


 華奢な女奴隷である私に、銃を避ける力はない。どこに飛んでくるかもわからない銃弾を避けろなんて無茶な話だ。俺はただ、できるだけランダムに動こうとするだけだった。左足にヒットする。足が弾けとびながら毒でも入ってるんじゃないかと思うレベルで激痛が襲った。俺はバランスを崩し倒れる。しかし避け続けるのが命令だ。両手と片足でなんとか動こうとする。


 いくらエイムが下手とはいえ、ここまで動かない相手に当てられない兵士は少ない。私に数発の銃弾が当たり全身が四散した。痛いと感じる暇さえなかった。


 気がつくと血だまりだった。俺の体は復活していた。

 体調の声が響く。「撃ち方、はじめ」


 再び地獄の始まりだ。

 私は撃つ兵士と銃弾の動きをよく見ようとした。無論見えるはずもなく、なすすべもなく目に一発貰う。脳が半分吹き飛んで、私はバランスを崩す。また四散した。


 何時間逃げ続けて、何回死んで、何回復活したのかは覚えていない。(スケジュールによると3時間のようだ)。私は、健康体で射撃場を後にした。肺と全身の筋肉は痛い。どうやら外的な要因は回復するが、内的な要因に不死身効果はないようだ。


 

 次の訓練場へといく。そこは密室だった。また、隊長風の男が出てきた。

「今から君に情報を渡す。兵士からの拷問に二時間耐えられたら。一時間の自由を与える。もし兵士に情報を漏らしたら、時間まで磔の刑に処す。たとえ不死身でも、杭が刺さりっぱなしであれば痛みがあることはわかっている」

 磔の刑って本来死刑だよね。私が死なないのをいいことに徹底的に苦しめるつもりらしかった。


 火だるまくらいじゃ口は割らないと思っていたが拷問はそんなレベルではなった。

 詳しく書くことはしないが、私は10分で口を割り、2時間50分の磔の系に処された。


 十字架刑というのは特に残酷な処刑法の一つで、神経の集中する手の甲足の甲に杭を打ち、その4点だけで体を支えさせる。そしてなかなか死ねない。人類はよくぞこんな恐ろしい処刑法を思いついたものだ。しかしそれでも私が受けた拷問よりははるかにマシだった。あんな拷問誰が思いついたんだ。


 二つの仕事が終わったら兵士たちの制欲処理係だった。もはや詳しくは言うまい。ただ、この時間が一番楽だった。


 これが私の毎日の日常となった。拷問の方は磔の系が楽なのがバレて、吐いても吐かなくても拷問され続けることとなった。


 こんな毎日がしばらく続いた。時間の感覚というものを失って久しい私は、それがいつのことだかはわからない。その頃には、華奢な体は引き締まり、ある程度の戦闘能力を有するようになていた。ある時、私は気づいた。銃弾がどこにくるかわかる。見なくても銃弾の軌道が手に取るようにわかるのだ。それからは避けるのが簡単になった。下手くそ兵士も進歩していたが、私の上達はそれをはるかに上回っていた。一発も銃弾をもらわずに終える日が多くなった。

 拷問は相変わらず苦痛だったが、いい加減慣れた。


 そんなある日、隊長が命令を下した。

「奴隷よ、今日からは座ったまま一切動くな。ただ全身で銃弾を受け止めよ。飛んできた銃弾に体を動かさずに抵抗することは許してやろう。そんなことができれば、だが」

 私は動けなくなった。

「撃ち方、はじめ!」一斉に銃弾が飛んでくる。そして……


「ぎゃあああああああああ」


 絶叫がこだました。私の声ではない。銃を撃った兵士たちのものだ。

 その時の感覚は不思議だった。放たれた15発の銃弾全てが私の手の中にある気がした。わたしはその15発の銃弾を体を動かさずに向きを反転させ、兵士たちに当てた。頭になんて当ててやらない。わざわざ手や足などに当ててやった。


 これがマッドサイエンティストの言っていたわたしの魔力だろうか。


私は心の中で言ってやった。ざまぁと。

初ざまぁいただきました。

これから反抗が始まるのか、それとも、まだ苦難は続くのか

「私」の明日はどっちだ?

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