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予知し続ける男

作者: ひろまる
掲載日:2016/09/12

俺はもうダメだ。

何をしても失敗する


男はマンションの屋上に立っていた。

己の無力さに絶望し、自殺を図ろうとしている。


くそ、高い…無理だ

そう思い、振り返ると1人の老人が立っていた。

男は驚き足を踏み外す。

あぁ、終わった。そう思い目を閉じた

しばらくして、目を開けると

男は屋上に立っていた。

恐る恐る後ろを振り返ると

先ほどの老人が立っていた。老人は口を開く


どうだね。未来予知は。


未来予知…今のが?今確かに落ちて。


いま君は未来を予知し後ろに立っている私に

驚かず足を踏み外す事を回避した。

君は未来予知に興味はあるかね?


男は少し時間を置き小さく頷く


それでは、この眼鏡を渡そう。


そう言うと老人は霧のように姿を消した。

老人が居た場所には、眼鏡が落ちていた。


まじか…

男はそう言うと眼鏡を拾った。

信じ難いことだが、すぐに確信した

これは、本物だと

彼は眼鏡をかけ、マンションを出た。


すぐに、眼鏡は能力を発揮した。


男は歩き始める。マンションを出てすぐにある交差点、青信号で渡る男

勢い良く左折してきた軽トラックに

はねられる。という未来


彼は交差点に立っていた。


青信号、男は立ち止まる。

ふと、後ろから小学生くらいの少年が

走ってくる。


危ない!


ドンッ、鈍い音とともに先ほどの少年が

宙に舞う。


軽トラックの運転手が急いで出てきて

少年を見る、そしてすぐに男の方を見てから

救急車を呼んでいた。


男はそそくさと、その場を離れた。


なぜだ、予知したのは自分が轢かれる未来

しかし、少年が轢かれる未来は見えなかった

わからない。未来予知はしているはずなのに


男は怖くなった。ふと1つの可能性が浮かび上がったからである。

自分が回避した運命は他人に降りかかるのではないかという可能性が。


男は走る、家に向かって走っていく。

ふと、遠くをみると再び眼鏡が反応する。


走る男、50メートルくらい先にある

古本屋の前を通る時に、古本屋の看板が

落ちてきて下敷きになるという未来。


彼は立ち止まる。ゆっくりと歩き始める

古本屋の前に差し掛かる時、男は立ち止まる

すると、店の中から大学生くらいの男性がでてきた。次の瞬間、古本屋の看板が落ちて

その大学生は看板の下敷きになった。

慌てて出てきた店主が、ふと男の方を見て

救急車を呼んでいた。


なぜ、こうも立て続けに危ない事ばかり

しかも、予知して回避しているのに

他の誰かが……やっぱり、俺は未来予知して

回避しているが、車に人が轢かれる運命や人が看板の下敷きになる運命は回避できないという事か?


その後も、家に帰る道中

何度か男は危険を予知しては回避し

その度に、他の誰かが悲運に見舞われた。


男はやっとの思いで家に着いたのであった。


実家暮らしで4人家族、父と母と弟と男という家族構成である。


おかえり。どうだ?就活は…


………。


平日の昼間に父がいることに違和感を感じたが、男は自分の部屋に逃げるように入った。


眼鏡が反応する。


大好きなオンラインゲームに熱中している男。下の階から男を呼ぶ声、しかし男は気づかない。トイレに行こうと男は部屋を出ると

そこは、火の海になっている。という未来


例えば、俺がこの惨事を回避し

助かったとして、代わりに犠牲になるのは

親父なんじゃ…


男は恐る恐る部屋を出て下の階に降りた。

すると、台所の方から焦げるような臭いがした。男はすぐさま台所に足を運ぶ。


うわっ!


コンロの魚を焼く所から黒い煙が出ていた。

男はすぐに中身を取り出そうと、開けた。

なんと中に魚と共に、焦げた台拭きが出てきた。


くさっ!なんだ?


酔っ払っているのか顔の赤い父親が

キッチンの方に歩いてきた。


あちゃー、完全に焦げてるな。

こりゃ、参った。わはははは


ふざけるな!ほっといたら

火事になってたんだぞ。


なんだ、父親に向かって!

バカヤロー!!


そう言うと、父は俺を殴った。

俺は、睨みつけ逃げるように家を出た。


しばらくすると、何台かの消防車とすれ違った。


まさか!!


男は一目散に家へ向かって走った。


案の定、実家は炎に包まれていた。


危ないから近寄らないで下さい。


野次馬の前の方で俺は叫んだ。


中には親父が居るんです!


しかし、男が家に着いた時はすでに、

家は完全に炎に包まれており、手遅れであった。

焼け跡から1人の男性の焼死体が出てきた。


次の日、父の通夜が行われた。


男は、たった1日で何度も死にかけ、

回避する毎に、他人や父親が犠牲になっていることに、絶望していた。


外の空気を吸いたくなり

会場から出て、外を散歩することにした。


そして、また眼鏡が反応する。

しかし、今までと全く違った…


父の通夜に参列したであろう、喪服の少女。

男を後ろから追い抜く。建設途中のビルの工事現場に差し掛かる。

男は、ここで最悪の事態を予想する。

その瞬間に、少女の悲鳴と

鉄骨が落ちた音が響き渡る。


俺じゃない。


男の後ろから、少女が走ってくる

男は追い抜かされたと同時に我に返る。


そっちは……


男は我に返ってすぐ少女を追いかけた。

工事現場に差し掛かる


くそっ、くそぉおお!


男はダイブして少女を押し出した。


ガシャーン。鉄骨が落ちる音が響き渡る。


少女は無事であったが、

代わりに男が鉄骨の下敷きになっていた。


薄れゆく意識の中に、あの老人が出てくる。

男はゆっくりと目を閉じた。


男は目を覚ます。


えっ?ここは……


男はマンションの屋上に立っていた。

振り返ると老人が居た。


どうだね。その眼鏡は気に入ったかい?

かなり、未来を予知できたみたいだね。


未来予知?ふざけるな

命に関わるような危険に何度も…

不幸を呼ぶ眼鏡じゃねーか!


老人は笑みを浮かべ言った。


それは、君がここから落ちて死ぬという運命を一番初めに回避したからさ。

運命というのは残酷でね。

運命を変えようとして足掻いても、

その過程が変わるだけで

最終的には決められた末路を辿るものだよ。

つまり、君は死ぬ運命であり

未来予知して回避しても、また新しい死が

君に降りかかる事になっている。

さらに、君が運命から逃れようとする事で

他者が、その死を請け負う事になる。

簡単に言えば、歩く死神って事かな。

なかなか、センスあると思わないかね。


歩く死神か…老人、この眼鏡は

お返しいたします。


男はそう言うと、眼鏡を老人に渡し

マンションを出た。そして、

あの交差点に差し掛かる。青信号

男はゆっくりと歩き始めた……



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