08.はじめてのダンジョン~鳥野~
鳥野のダンジョンは南のエルフ達の森の中に作成されていた。
入口は大きな木の根の洞の部分。立て看板にはこう書かれている。
<<初心者ダンジョン:蜘蛛の迷宮>>と。
「ダンジョンはシンプルにしてみたで!」
鳥野の宣言通り、ダンジョン自体はシンプルであった。
森型ダンジョンで1Fが地上、2Fが樹上、樹木内が階段になっており、
1Fと2Fの間と樹上の所々に蜘蛛の巣がはっている。
蚕産業のないこの世界ではシルクといえばスパイダーシルクであり、
高級品として珍重されている。
無駄知識ではあるが現代日本においてもスパイダーシルクのほうが
高品質・入手量希少のため高級品である。
そんな蜘蛛のダンジョンに一人の男がやってきたのであった。
瑞「なあ鳥野、エルフって何が違うかわかる?」
鳥「んー、地味というか気配が薄いというか影が薄い。
そのせいで狩りは狙撃で一発か短剣で頸動脈をさくっと即死やね」
やべえ、強いわ。暗殺稼業一直線?
鳥「ただし森の中限定」
そうですか。森以外でもそこまで弱くはないだろう、いくらなんでも。
瑞「期待して見てますか」
鳥「期待してるとこ悪いけど、強さとしては村人A程度や」
ほう、あれで村人Aですか。なんかすいすい魔物を避けて侵入してるんですが。
なおB1Fの魔物は働きアリと働き蜂、ウネちゃんである。
竜「レベルたけーな、おいw」
軍「初心者用ダンジョンとしては問題ないだろう」
九「鳥がいない…」
一人だけぶれない奴がいる。
1Fは何事もなく通過し、2F突入である。
1Fでは蜂蜜しかおいしい素材は無いし、その場合戦闘必須になるからねえ。
2Fの蜘蛛の巣集めがやはり狙いなんだろう。
冥「あのエルフ、常時風魔法使っている?」
鳥「匂い抑制と音・気配探知に風魔法常時使ってるでー。
風魔法は攻撃向けじゃないからな」
つまりゲリラ戦が得意か。軍曹が喜びそう。
時折カラスや小蜘蛛が襲い掛かってはいるんだが全く話になっていない。
冥「鳥野ちゃん、やる気ないでしょー」
鳥「初心者ダンジョンに何ゆうてるのよ。殺す気はあらへん。
一応落ちたら重傷確定やし蜘蛛の巣にかかったら終わり。
しびれ茸もあるから長居するような不注意物は死ぬで?」
軍「熟練者は死なないダンジョンか。考えてある」
俺のダンジョンよりはるかに温情だな。勉強になる。
結局彼は蜘蛛の巣をけっこう回収して無事帰還した模様。
これは千客万来もあるんじゃないだろうか。
今後の活躍に期待である。
とりあえずこの世界のエルフは強い。これ豆知識な!




