04.人を外れるもの
「さて、ダンジョンマスターになるにあたって最後の要件があります」
相変わらずカッコつけ全開マスターである。あえて突っ込まないが。
「皆様には人をやめてもらいます」
よくわからなかった。
その後の説明でようやくわかったが、種族を人以外に変える必要があるらしい。
隣で竜次が「竜を愛する、それは俺自身が竜になることだ…!」と燃えている。
相変わらずわかりやすい奴である。
どんな魔物を選んでも人化のスキルによって人型をとることは可能にすると説明があった。
また、基本的にダンジョンマスターは戦闘しなくていいため戦闘力も不要。
明らかに戦う前提で選んだ奴もいるが以下のようになった。
瑞野:スライム 便利なことは間違いないだろう。戦闘する気はない。
竜次:古代竜 やる気満々である。ただ、まだ若い竜のようだ。
軍曹:鬼神 鬼軍曹降臨です。ありがとうございました。
九尾:九尾狐…らしい でも尾はまだ一つでした。本当は部下にする予定だったとのこと。
冥佳:吸血鬼 不遇担当と思わせてやっと本懐達成。だが現実は非情である。
鳥野:ハーピィ この人は観光が好きなんだろう。四神側のほうが幸せだったのかもしれない。
さて、いよいよダンジョン生成の時間である。
この世界のダンジョンとはやられ役であり、素材と装備の産出ポイントであり、
要するに資源であるため、有利不利が極端に起こらないよう調整する必要があるのだ。
「では第一回ダンジョン設置協議会を開始いたします!」
このマスターのりのりである。一応拍手してあげよう。
「今回のダンジョンは初心者向けです。お手柔らかにお願いします。
入ったら即死トラップとか、入口に竜設置とかは却下ですからね」
竜次と冥佳がビクっと反応する。
竜次は昔から雑魚相手に最大火力叩き付ける奴だったからなあ。
「初回の監修は私が行います。次回以降は各自にサポート妖精をつけますので
相談しながら作成してください。終わった人から地域決定していきます。
でははじめてください」
『ダンジョンクリエイト』
そう宣言することにより、目の前に立体図と平面図が表示された。
配布された簡易マニュアルを見ながらの操作である。
今回のプロットはスライムの巣SIMPLE1500。
本当に簡単にするつもりだ。
そもそもスライム自体物理耐性が高いから風・水・土魔法がほとんど効かないのはわかっている。
スライムの倒し方講習会として作成するのだ。
スライム自体はノンアクティブとし、本人が攻撃を受けるか仲間が攻撃を受けた場合に反撃とする。
B1Fは洞窟状の小部屋を直列に6部屋、中にスライム1匹x3、2匹x1とし、
2匹の小部屋は倒さないと扉が開かないように設定。
その先には人数制限用のエアロック部屋とし、3人以上なら開くとする。
初心者ソロ防止と中級者乱獲予防だな。
最後の部屋はB2Fへの階段とした。
んー、ちょっと物足りないから2匹小部屋の左右に二部屋ずつ追加して宝箱部屋にしよう。
宝箱には罠は設置せずおいてボーナスにしておく。
見た目は十字架だな。悪くない。
B2Fは大広間+ボス部屋+宝箱部屋+コアルーム。
大広間は明かりなしでスライムの溜まり場とする。
攻撃されると全員で反撃するからこれも一つのデストラップである。
B1Fは一応ヒカリゴケでうっすら明かりは付けている。
ボスは定番のスライムキング。
宝箱部屋には宝箱と帰還用転移魔法陣、そして奥にわかりづらく落とし穴を設置し、
落とし穴の横穴にダンジョンコアを隠しておく。
積極的に破壊しに来ないとはいえ、念のため、ね?
あと、B1Fには排水口と換気口を用意した。
換気口はスライムの補充経路を兼ね、排水口はスライムの遺体処理のためである。
マスターにチェックしてもらい、西エリアへの設置許可とサポート妖精を一番にもらった俺は
さっそくダンジョン設置…ではなくスライムの研究に入るのであった。




