03.六人の共犯者
一旦この世界について説明しよう。
この大陸はひし形の形状をしていて、東西南北を各四神が支配している。
神殿はひし形の奥にあるわけだ。
そしてひし形の中央には中央湖と呼ばれる大きな淡水湖があり、その更に中央に火山がある。
洞爺湖や屈斜路湖のようなカルデラ湖と火山を想像するとわかりやすいだろう。
もっとわかりやすく言うと、大陸は北海道みたいな形状なのである。
大陸の北は高度の高い地域であるために他の地域に比べ寒冷となっており、
山と針葉樹の多いエリアとなっている。
それでも神殿のある北端はそれなりに高度が低く、人が住みやすい暖かな地域だ。
大陸の東西は草原地帯であり、まばらに森が存在する程度の快適と言っていい地域。
特に東は小型船なら使える程度の大きく緩やかな川が存在し、運搬に寄与している。
東の神殿はその川の河口に位置している。
大陸の南は森林地帯だ。北と違い、広葉樹がメインで複雑な様相を見せている。
下草はある程度刈られ、管理されていることが見て取れる。
なお、中央湖と火山は上級神管理ということで緩衝地帯である。
そして俺達6人と1柱と1匹は火山の中にあるはずの上級神の拠点に集まっている。
どう見ても内装は喫茶店にしか見えず、上級神の見た目は喫茶店のマスター。
窓の外には大きな湖。どう考えても火山の途中にあるとしか思えない。
そして極め付けに名前が喫茶マウンテン。これはきっと訴えられるレベル。
ちなみに妖精ナヴィはウェイターをしている。
どう見ても中学生にしか見えないので労働法違反で捕まりそうである。
なおこの小説の登場人物は全て18歳以上だ。たぶん。
「どうも上級神です。サポートとして集まっていただきありがとうございます。
私のことはマスターとお呼びください。」
腰の低い上級神であった。なりきりプレイなのか趣味なのか調査が必要である。
「あなた方の仕事は各国にダンジョンを設置し、練度を高め、素材とレア装備を与えることです。
悪い言い方をすればやられ役をやっていただきます。
そのため、いくつか条件が緩和されています」
死亡した場合、ダンジョン内ボスと同様に4時間で蘇生されること。
ダンジョンコアが破壊されても死亡せず、そのダンジョンが1年閉鎖されることを説明された。
気になった点について念のため確認をしておこう。
「上級神様、質問してよろしいでしょうか」
「マスターとお呼びください」
「…マスター、いいでしょうか」
「はい、どうぞ」
早くも心の中でイメージダウンである。嫌な予感しかしない。
「なぜ資源として設置されるダンジョンにコアがあり、破壊可能なのですか」
「資源ゆえに敵国としてはそれを無効化したいと考えるからです」
「つまり、ダンジョン内で勢力戦争が起こると?」
「ええ、起こるでしょう」
「その場合、どちらの勢力につく、あるいは放置することについて制限はありますか」
「どのようにしてもかまいません。ただ、コアを守ってくれるとこちらとしては助かります」
予想とある程度は一致。意外と考えてあるようだ。少し見直そう。
「ところで喫茶店の名前はどうして?」
「それは日本で素晴らしい喫茶店に出会ったからですよ!」
決めポーズを付けてそう宣言するマスター。
あかん、全然あかん。
駄目だこいつ…早くなんとかしないと…
その後、ダンジョンの振り分け作業になった。
俺はスライムをいじりたいから属性は水、種族は水棲・魚介類の担当となった。
スライムで色々実験をしてみたいんだよねえ。
あとはマーメイドやカエル、リザードマン、ピラニア、キラーシャーク、蟹、イカなんかも使用可能。
ダンジョンを作るのが楽しみである。
理由は理解出来なかったが、精霊については無理と注意された。
小さな精霊であるスプライトについては外部調査用として使用の許可を得た。
精霊とは自然そのものであり、従えてしまうと問題が発生する。
また、精霊が何かしていても邪魔せずほっといて置いてほしいそうだ。
触らぬ神に祟りなしである。そもそもマスターは神のはずなんだがねえ。
あと、本名はまずいからわかりやすい別名を頼むということで瑞野と名乗ることにした。
名前を考えるのが面倒だったからでは決してない。
友人のシンは竜系を選び、火属性とついでに爬虫類を押し付けられた。
名前は竜次を名乗っている。そのうち火山にダンジョンを作るに違いない。
最後の男性メンバーは軍曹と名乗った。雰囲気的にも自衛隊か警察あたりと予想。
軍曹は亜人と土属性を選んだ。軍事行動を取るゴブリンやオーガの集団か…世も末である。
女性メンバー3人のうち、もっとも若い娘は九尾の名前を選んだ。
もふれればなんでもいいということで獣と鳥を担当。属性は火である。
九尾、フェニックス、サラマンダーあたりを狙ってるんだろうな。
燃えているけどもふもふ出来るのかあれ?
女性陣二番目の方は名を冥佳とした。吸血鬼をやってみたいらしい。
もっともこの世界の吸血鬼は自分のマナを相手の血液を体に流し、人形と化すものだそうだ。
意識を残したり自由行動にも出来なくもないが吸血鬼に感染するわけではなく、不浄でもない。
パンデミックなんて起こらないし、制御を解除すると人間に戻るとのこと。
彼女はついでということでゴーレムやスケルトン、ゾンビも含めた人形遣いとして役を振られた。
ゴーレムの担当ということで属性は土とされた。
ゾンビといいゴーレムといい、押し付けられて涙目だったのは見間違いではないと思う。
最後の女性は鳥野と名乗った。世界樹のダンジョンを作りたいので植物、鳥、虫の要求である。
属性は風を選択。世界を見て回りたいと言っている。
ダンジョンマスターと魔物はダンジョンから出られないから
風のスプライトで観光するのだろう。残念だが視覚と聴覚しか共有できないが。




