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20.電撃作戦

決戦が始まる―――なんて言ったけどあれは嘘だ。




「て、敵襲だー!起きろー!」


ここは東軍神殿。東軍は今、東南戦線へ大部分を派兵しており防衛が手薄になっていた。

しかし平和ボケしているとはいえ東軍がサボっていたわけではない。

彼らだって国境線は警戒していたのだ。

敵は国境線を経由せず、空から飛行船によって強襲したのだ…。


ズドーン!


擬音にするとシンプルだがとても嫌な音が神殿全体に響く。

既に防衛拠点となるはずの門はカノン砲によって破壊された。

銃音が響く度に人が死んでいるのは間違いないだろう。

いくら死ににくいとはいえ頭を吹き飛ばされたら死ぬ。

回復力が高いとはいえ部位破損は長時間行動できない。

戦闘音がどんどん近づいてくる。


(アルファ、ブラボーは儀式の間を制圧、チャーリーは神殿の制圧、デルタはチャーリー支援)


敵は無線を光魔法で使っている。ほとんど音は漏れていない。


「残っているものは全員儀式の間に集まれ!籠城するぞ!」


もうほとんど残ってはいないだろうがな、と自重する。

何もかも遅かったのだ。

今になって思うと巻き込んでしまった住人達に悪い事をした。

召喚者達はまだ復活できるが住人は死んだら終わりだからな…。

少しでも有利を得るために足場を水浸しにし、水中歩行アクアウォークをかけて準備をする。


「いいか!これが最後の戦いだ!」


「おう!」


しかし、相手は最後まで冷徹であった。

合図によって突入してきたのは手榴弾の山であった。




(儀式の間は制圧した。アルファは儀式を開始、ブラボーは儀式の防衛を開始せよ。

 各隊被害状況報告せよ)


儀式は開始された。30人による2分間の儀式。もう止まらない。

弱く光の柱が東神の女神像を中心に立ち上る。


(カウント60…30…10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、クリア)


<<北神が東神を撃破しました。北神が水魔法及び東神の恩恵を取得しました>>


東神の女神像が粉となり崩れ去る。懸念事項の一つが消滅する。

女神像が残ってたら防衛もしなきゃならなかったからな…。


(目的は達成した。全軍、ポイントBへ移動。殿はデルタが担当だ)


(了解)


5年という短い期間だが優秀な連中が揃った。

むしろそういう連中が北軍を選んだのかもしれない。

何も残っていない神殿を後に我々は堂々と帰還していく。




<<北神が東神を撃破しました。北神が水魔法及び東神の恩恵を取得しました>>


それは南軍神殿を攻める直前の出来事であった。

東軍全員は神託により強制的に目覚め、1時間以内に転属先を決めなければならない。

決められなかった者は勝利者である北神に所属する。

今死亡中の召喚者は蘇生後1時間以内だ。

そのせいで東軍はおろか、西軍、南軍も混乱の極みにあった。




「俺は帰る!帰るぞ!」


「俺もだ!家族が待ってる!」


東軍の住人は東神の恩恵を失う事を恐れ、帰還することを選んだ。

それは召喚者も同じ事。家族に縛られたほとんどの召喚者は北軍に所属することを選択した。

わずかな召喚者のみが西軍となることを選び、西軍に吸収される。


北軍に吸収されたとはいえ、元東軍は既に南軍を攻める目的を失っていた。

彼らは全軍一斉に引き上げていくことになる。




「どうする?引くか?攻めるか?」


西軍も迷っていた。南軍に対して押し込めていたのは東軍がいたからだ。

競争相手ライバルがいなくなって奪われる心配が無くなる…というわけではない。

現存の西軍勢力では南軍神殿を落とすことは厳しいからだ。


「どうするも何もここまで来て引くわけにはいかない。援軍もいずれ来る」


いずれ来る…いつ来るんだ?という疑問を誰も口にしない。口にしてもしょうがないと理解している。

北軍は東神の力を得たんだ。それに対抗するには南神の力を得なければ負ける。

それは簡単に推測できる未来だ。


「明朝、すぐに攻める。準備せよ」




南軍もまた混乱していたが選択肢が無かったことから逆にまとまることができた。


「獣人は宿敵であり、徹底抗戦以外ありえません」


西軍は獣人のみではないがほとんどが獣人である。

数年の工作合戦によりお互いに染み付いてしまった感情。


歴史学者がもし存在したのなら、こういうだろう。

南軍が即座に降伏し、西南神で組んで東北神に対抗するべきと。

しかしその選択肢は既に失われていたのだ。




そして五日後、北軍の飛行船が南神殿に到着した。

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