16.最上級ダンジョンはじめました
<<最上級ダンジョン:竜へ至る水路が中央エリアに登場しました>>
<<最上級ダンジョン:竜の縄張りが中央エリアに登場しました>>
<<最上級ダンジョン:世界樹が南エリアに登場しました>>
<<最上級ダンジョン:東京駅が北エリアに登場しました>>
<<最上級ダンジョン:ドラキュラ城が東エリアに登場しました>>
<<最上級ダンジョン:迷いの森が西エリアに登場しました>>
ダンジョンが発生するなど重要なイベントについては上級神より神託がなされる。
これは全世界の神殿及び召喚者に通知される。
各最上級ダンジョンが発生したのはノア歴202年、召喚されてから2年後だ。
皆の努力の結晶と言えるだろう。
色々気になる名前があるがいずれわかるだろう…たぶん。
1年報告会?そんなもんカットだカット。特に何もねえよ!
色ボケ連中は放置だ。戦争に支障が出てもそいつらの自業自得だ。
東も西も色ボケだらけでやってられねえ!俺の担当はどうなってやがるんだ。
私は東軍所属のセイコ、既に9児の母だ。
三度の出産で、双子、三つ子、四つ子を産んでいる。
とてもかわいい、愛しい夫のリュータとの愛の結晶だ。
妊娠期間は戦闘行為を制限されてしまうため、ちょうど中休みとなったタイミングで
新しいダンジョンを調査する、という名目で気分転換に出かける事にしたのだ。
もちろんリュータも一緒だ。ヨーコとアキラの夫婦も今回の調査に参加する。
「そういやヨーコ、ダンジョン初めてじゃないの?」
「セイコも初心者ダンジョンいったきりでしょ」
東軍の鍛錬は客観的に見ればぬるい。
それは悪い事ではなく、東エリアでは軍が不要という意味もある。
治安が良く豊かな平和な国なのだ。
「まあね。でもいきなり最上級ダンジョン調査とはびっくりだよ」
「いくらなんでも1層くらいは簡単だと思うのよー」
ケラケラと笑うヨーコ。男達は男達で話をしている。
今から向かうのは中央湖の<<竜へ至る水路>>。
中央湖はカルデラ湖であり、やや高い場所に位置する。
その横っ腹に洞窟が穴を開いているのだ。
もちろん立て看板もある。
<<最上級ダンジョン:竜へ至る水路 東口>>
「これは入口が複数あると考えていいのか?」
リュータがリーダーなのか先頭に、その脇にアキラが控える。
「もしかしたら他所の軍との遭遇もあるかもしれないな。
どうする?方針だけでも決めておこうぜ」
「面倒事起こしても責任取れないから放置でよくねーかな?
セイコ、ヨーコ、それでいくぞ」
私はそれで構わないのでヨーコとともに承諾し、洞窟の中をのぞき込む。
表現するなら現代の自動車用地下トンネル、しかも二車線。
ただし、一車線は水路だ。底は残念ながら暗くて見えない。
陸路のほうはアスファルトではなくコンクリートになっている。
陸路には警備員なのか掃除員なのか変なスライムがいて、
水路にはマーメイド?みたいな女の子がこっちのほうを窺っていた。
「なんか変なのがいるよリョータ」
「はいはい、怪しいと思ったら鑑定しろ。講義で教えられただろ」
ごめん寝てたんだよ。
■イエローマシュマロ(水属性、不定形種族)
高密度に圧縮されたスライム。溶解力が非常に強く、物理耐性が高い。
何もしなければ襲ってこない。快楽物質を出す。爆発する。
強さ C
■マーメイド(水属性、水棲種族)
水魔法と槍を使う魔物。人語を話し、友好的。
強さ E
「イエローマシュマロ?」
確かに見た目はマシュマロっぽいかも?
黄色いゼリーの中に餡子みたいな赤黒いコアみたいなのが浮いている。
ああ、マシュマロ食べたいなあ。
槍でつついてみよう。
ずぶっ!
槍がスライムに吸い込まれる。
「きゃああああ」
とっさになんとか槍を手放せた。
槍がどんどんスライムに飲み込まれていく。
「馬鹿野郎!スライムはなんでも喰うんだ!絶対触るなよ」
「ああ、支給品の鉄の槍があ……」
あっという間に溶けてしまった。悲しい。ああ、帰ったら罰則だよぉ。
「あはは、まーちゃんおいしそ~」
なんかマーメイドに馬鹿にされてる気がする。とりあえず下手に出てみようしかしら。
「え、えーとこんにちは?」
「こんにちは~ どうしました~」
「私、東軍のセイコと申します。後ろにいるのがリュータ、アキラ、ヨーコです」
「リリアといいます えーと、めっせんじゃーです。何かおいしいものありませんか~」
おおう、いきなり要求されました。とりあえずリンゴを渡してみます。
「はい、どうぞ」
「どうも~あら、おいしい! 何か聞きたいことがありましたらどうぞ~」
パーティメンバーを呼び集めて相談する。
「あなたメッセンジャーなのよね?何か伝えることとかないのかしら」
「あ、そうだ言われてました~ 中央湖にアユ、イワナ、サケ、マグロ、サンマなどを
放流したのでご自由にどうぞ~ですって。漁船は10人以下にしてね!」
凄くありがたかった。湖畔に街を作って生活も出来るのではなかろうか。
「でもどうして?」
「よくわからないけど支援ですって」
ん?ダンジョン製作者が支援?そういえば説明でそういわれた気もする。半分寝てたけど。
「いや、10人以下のほうはどうして?」
ヨーコから質問があった。確かに気になる。
「んー、それ以上は警備のイカさんが襲いにくるんですって。水中にも潜らないようにっていってた」
イカさん…魔物のイカってクラーケンとかテンタクルスとかそういうヤバいのじゃ…。
「わ、わかったわ。気を付ける。ところでこの洞窟の道案内頼める?」
「いいよ~ まっすぐ行くと大広間があって東西南北に道が伸びてるよ!
あとは水路から下に潜る以外道はないよー」
「へえー。シンプルなのね」
「うん!水中には水中にはくらげさんとか首長竜さんとかサメさんとかいっぱい友達がいるんだ!」
うん、私達が入ったら即死するね。
「このスライムさんは?」
「ここの掃除屋さん!」
とんでもないヤバいのに掃除屋さんかあ…ははは。
(あと聞いておきたいこととかある?)
小声でメンバー内の相談をする。特に異議も出ず、リリアに礼を行って奥に進むことにした。




