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12.エルフの朝は早い

南軍、エルフ達の朝は早い。


私は南軍資源調達隊隊長のケイタ、召喚者のエルフである。

森の中に位置する南軍は山がなく、鉱山資源が貴重なため

ダンジョンにいるストーンゴーレム、カッパーゴーレム、アイアンゴーレムすべてが貴重品なのだ。

弓があっても矢じりが無ければ矢は撃てないし、武器を作るにも必須だ。

南軍の資源では斧や長剣のような鉱物大量消費する武器なんて製造する余裕はない。

資源調達は地味だが重要な仕事であり、待遇もそれなりにいいのである。

また、自分の担当ではないが別のダンジョンからは高品質なスパイダーシルクも入手していると聞く。

防具についてはそれで製作する計画だ。


自分の管轄である<<初心者ダンジョン:人形の踊場>>は2階層で構成される簡単なダンジョンだ。

何故わかるのかと言うと、入口に立て看板があるからだ。

神からの神託(説明)では、ダンジョンというものは訓練や資源調達、装備入手用だという。

自領土にあるものは保護し、他領土にあるものは破壊・妨害せよ、と。

もし破壊された場合は1年間使用不能になる。

その場合、装備調達の遅れは致命的になるだろう。

資源調達隊は資源調達と同時に緊急時にはダンジョンの防衛もしなければならないのだ。

そんなことはまず起こらないだろう、そう油断していたのだ…




「おい、中の連中がやられてる!隊長にすぐ連絡しろ!」


ゴーレムを倒せる最低限で運用していたのもまずかった。

中にいたのはほとんどが住人であり、復活出来ないのも大きな損失になる。

Mobドロップ品が自動でアイテムボックスに入るという仕様(神の設定)のため、

ボックス持ちの召喚者1名にボックス無し住人数名でPTを組み回収していたのだ。


(くそったれ!状況がわからねえ!)


ケイタが連絡を受けたのは入口近くに建ててある詰所だ。

朝の勤務交代のタイミングでやっと発覚したのである。


(何人やられた?まず調査か?その前に連絡だな。つーか一番大切なのはなんだ?)


ダンジョン入口へ走りながら考える。


(そうだ、ダンジョン破壊されるのが一番やべーじゃねえか!)


かなり追い込まれていることにやっと気付くケイタ。


「ソラ、お前は防衛隊に連絡し応援を呼べ。

 リョータは他の人と組んで入口封鎖、誰も逃がすな。

 俺は数名連れて中の確認をする」


ソラは召喚者のハーフエルフ、リョータは召喚者のエルフ。

出来ればもっと護衛を付けたいがメンツが足りない。頭痛がしてくる。


(俺だって死にたくはねえんだがなあ)


2名の護衛を付けてダンジョン内の確認に向かう。

交代まで気づかれなかったということは最悪夜勤開始直後の24時侵入の可能性もある。

ダンジョンが残っているってことは破壊はされていない。

破壊中だったらやばいが…。

どちらにしろ確認せねばならない。


(中に誰もいませんように…それはそれで責任問題か)


まず入口チェック。敵無し。仲間無し。ゴーレムは…復活している。


(リポップが4時間のはずだからもうとっくに帰ったか?)


念のため敵軍による奇襲を警戒、慎重にダンジョンを進める。


「警戒! 周囲確認!」


自軍の死体だ。召喚者は青く光り転送され死体は残らない。

逆に住人は転送されず死体が残る。


(打撲痕持ちと首斬られ即死か。ゴーレムに斬撃は無いから敵軍確定だな)


血が乾いていることからも時間が経過していることがわかる。

東軍は剣と槍ばかり使うのはよく知られており、西軍の獣人である可能性が高いと睨む。

だが、証拠として弱い上にそもそもダンジョン内の出来事は”なんでもアリ”なのだ。

何が起こっても文句は言えないし文句を言わせない、という約束である。


「よし、1層はクリアだ。2層に行く。引き続き奇襲の警戒をせよ」


2層、カッパーとアイアンゴーレムの出現する階層である。

2層でも数人の自軍の遺体を確認、冥福を祈りつつもそのまま放置し探索を続ける。

ゴーレムが徘徊しているのを確認し、ボス部屋手前まで到着する。

護衛が息をのむ音が聞こえた。

ボス部屋は静かに佇んでいる。こっそりと扉を開け、中を確認する。


(ボス生存確認…助かった)


「よし、ボスまで確認、撤収する!」


やっと開放された気がした。もう隊長辞めようかな…




その日より、敵軍の資源調達隊は増員された上に昼夜問わず護衛がつくことになった。

相手の目論見通りとはいえ、リスク回避を優先したのである。

それに合わせ、南軍も西軍への破壊工作を開始した。

この事件は西南対決きっかけでもあり、工作合戦の始まりでもあったのである。

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