01.召喚される
そこは体育館のようだった。
中には大量の人がおり、秩序のない卒業式、もしくは災害時の避難所の印象を受けた。
人数は俺の勤めていた工場の社員全員、大雑把に3000人くらいか。
そこに半導体工場で仕事をしていたはずの俺、こと工藤 圭が立っていたのであった。
(いったい何が起こった?)
周りのざわめきを感じつつもとりあえず記憶を辿ってみる。
確か、昨日は久しぶりの休みで自宅にてぐだぐだと艦○れとCiv4をしていたはず。
今更4という突込みは受け付けない。異論は認める。
お昼にカルボナーラを食べてゲーム再開した所までは覚えているんだが…。
やっぱりそういうことだよなあ。
周囲のざわめきは日本語だらけ、まず確実に日本在住者だ。
見た目外国の人っぽい方も混じっているから日本人限定ではない…と思う。
男女比は6:4くらいか?
眺めているとどこかで見た優男が見えたため、声をかける。
「よお、シンじゃないか?」
「なんだケイ、お前いたのか」
こいつの名前は佐藤進。カッコいいという理由でシンと知り合いには呼ばせている奴だ。
おかげでいたずら電話に引っかかることはないというのが自慢らしい。
システムエンジニアとして働いていると噂に聞いている。
「他に知り合い見たか?」
「いんや、全然いねえ。持ち物も全く無くて連絡すらできん」
そう、財布や携帯、腕時計といったものが全く無くなっているのである。
流石に服は着ているが、私服ワンセット、ハンカチ、ティッシュ程度である。
と思っていたら体育館の舞台のような場所に5人と1匹が現れた。
「召喚された諸君!我々は神である!」
一番偉そうな男神がそう宣言した。
説明によると、北神・東神・西神・南神の4柱の代理戦争を行うため、
日本から召喚について知識のある連中を4000人呼び出したとのこと。
なんともひどい話である。なお、18歳以上を召喚したためR18EもR18Gも問題ない。
ちなみに強姦・拘束対策として自殺コマンドとプロテクトも実装しているとのこと。
まるでVRMMOのようなサポートである。元プログラマーなんじゃないだろうか。
次に各神様のアピールタイムが始まった。
北神は戦争の神であり、土属性を支配している長兄だ。
土属性は、土・鉱石・宝石の操作・生成と重力制御が可能である。
とはいえ、鉱石・宝石類は生成するより掘ったほうがコストが安いため、無価値というわけではない。
重力制御はブラックホール生成なんて無茶はできず、せいぜい重量軽減や加速程度とのこと。
神の恩恵としては耐熱・耐寒。
主な人種はドワーフ・鬼人であり、器用さ・腕力が高く集団行動が得意だそうだ。
戦いに関してはこの神様が一番強そうだねえ。
東神は豊穣・恋愛の神であり、水属性を支配している長姉。
水属性は、水や液体の操作・生成、回復魔法を使えるのが強み。
神の恩恵としては高い自然回復力、繁殖力、そして若さ。
マナ・生命力の自然回復力が高く、子供が生まれやすく、
いち早く成長し成年後は老いないというえげつない性能だ。
主な人種はヒト族、いわゆるヒューマンであり、どの種族よりもタフである。
きっとG並の生命力があるに違いない。
西神は闘いの神であり、火属性を支配している次兄だ。
北神とは異なり、個を重んじる戦うこと自体を楽しむ神である。
火属性と名前は付いているものの内容としては熱操作・生成。
火を付ける、加熱する、冷却する、自己を加速し強化する、相手を減速させるなど優秀な属性だ。
ただし、全ての魔法は触れていなければ発動しないため、相手にかけるのは至難。
神の恩恵としては五感の強化。
主な人種は獣人であり、ベースの獣によって個性は異なる。
単純な肉体能力・魔法火力だけならこの神様が最強だろう。
南神は隠者の神であり、風属性を支配している末っ子。
風属性は風、つまり気体の操作・生成を司る。
字面だけ見ると大人しい神様だがそんなことは決してない。
神の恩恵として隠密・狙撃・暗殺があり、見えにくい風魔法と相まって恐怖の強さである。
人種としてはエルフで器用さ・高魔力・長寿であるが数が少なく、
ハーフエルフ、ヒト族を含めた人種構成となっている。
5番目に親神である上級神が登場。
この代理戦争は神の後継者を決める戦いであり、生き残った神が次の上級神となるそうだ。
世代交代のために呼び出された俺達にとっては迷惑でしかない。
ああ、最後に一匹、妖精ナヴィが壇上で説明役として登場した。
いかにも適当に付けました的な名前に同情せざるを得ない。
なお男である。もう帰っていいですかね?




