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美少女の巫女にこういうことを言わせられるようになったのも天になったからです

みなさんも天になりたいと思いませんかね?

いいと思いますよぉこういうの

 どうやら、神様っていうのは大体が暇を持て余すらしい。目覚めてから俺に与えられた仕事は何一つなく、ぼけ~と座っているだけだ。この一人で使うにはあんまりにも広すぎる部屋では大抵のことはできるだろうけど、大抵のことは一人でやるには虚しすぎる。

 途中、顔を真っ赤にして出ていった綾音が済まし顔で戻ってきた。何も聞き入れないという雰囲気で声がかけづらかった。彼女は正座してずっと待機している。その表情は凛としていて、背筋には一本の棒のようにまっすぐと伸びている。正直、さきほどの痴態が嘘としか思えない。

「ねぇ、綾音」

「いかがなさいましたか、神様」

 腿に置いていた手で六十度ほど回転。こちらに正対する。視線はこちらに向いているが、俺は違う方向を向いている。さすがに神様の力は思い知ったから、真面目に話したい時に緊張させるわけにはいかない。

「俺が視線を外しているときは無理に合わせなくてもいいからね。あと、ここでの俺のお役目って具体的にはなんかあったりするの?」

「ご命令、了解いたしました。また、ここにおいての神様のお役目というのは主に三つ存在いたします。一つは村の祭事への参加、とは申しましても供物を差し出す、祈祷をするなどのもののため神様がここから移動なさることはありません。二つ目は穢れをお払いになることです。村に悪神や祟りが降りかかった際には申し訳ありませんが、神様に下界にご足労いただきそれらの穢れを払っていただくことになります。つきましては、神様は再臨なされたばかりで穢れに慣れていないことが十二分に考えられますので、何度が下界に降りていただき慣れていただく必要がございます」

 綾音の話を、聞いていて思った以上に普通の仕事だなと思った。二つ目は危なそうだが、巫女である綾音の言うことを聞いてしっかりやれば大丈夫なのだろう。あのおっさんが問題ないというくらいだ。

「三つ目は子を成していただくことです」

「ぶっ!?」

「だ、大丈夫でございますか?」

「うん、大丈夫……」

 慌てて駆け寄ろうとする綾音を手で制す。え、は?

 子を成す?

「子を成すって、何? 女神様でもいるってこと?」

「いえ、神様に成していただくのは神の子にございます。人間と神様の間に産まれた子にございます」

「え~っとそれは俺と君たち巫女の間ってことになるのかな?」

「お恥ずかしながら、神様のお相手を務めさせていただくのが巫女ということになります」

「じゃあ、綾音が俺の相手を?」

 瞬間、綾音はそれを想像したのか、顔を真っ赤にして、動揺を見せる。びくっと震えていた。

「それはまだ不明にございます。現在、この神殿には多くの巫女がいますが、誰が神様のお相手に相応しいのか適正を見極めている段階です」

「ふ~ん、でも、やっちゃったら、血が出るし、神殿では流血沙汰は御法度じゃないの?」

「あ……あの、いえ、それは――」

「あれ、想像しちゃった?」

 そこで俺は始めて綾音に視線を向けた。それは言葉にしなくても、綾音には伝わるように、言わないとわかっているよね、というほんの小さな悪戯に過ぎない。

「あ、はい。お恥ずかしながら、申し訳ありません」

「いや、いいよ。それくらい、女の子なら当然だ。続きをお願い」

「はい。流血沙汰はともかくと致しまして、過去にそのような試みが行われたことがあることも確かです。しかし、その場合、巫女の方が耐え切れなくなったと記録されています」

「それはやっぱり、生物、あ、いや俺は生物だとは限らないのか。え~と、それは存在としての格が違いすぎるから、なのかな?」

「現在ではその説が濃厚とされています。そのため、あくまで間接的に受胎する方法が主流にございます」

「へぇ~具体的にはどうするの?」

「神様がお持ちになられる生命の樹々から種子を我々の腹部にかけていただくことです」

 ……はい?

「ごめん、もう一回言ってくれる?」

「種子を我々の腹部にかけていただくことです」

 うん、どうやら間違いではないみたいだ。というか、普通になんともなく言えちゃうんだね。

 だってそれってぴーーをぴーしてぴーしてもらうってことじゃん。まぁ、神聖なことだから恥ずかしくないもんってことかもしれないし。

「じゃあ、君たち人間相当だとどういうことなの?」

「だ、男性、器をぼっ、勃起させて、精液を……腹部にかけて、も、もらうことです」

 あ、やばい。こういう恥ずかしがってる表情がマジでいい。ゾクゾクする。綾音は本当にいじめがいがあるな。

「はい、よくできました。ありがとうね、綾音」

「ひぁ、は、はい。ありがとうございますっ」

「はぁ、でもそれでも受胎するんだねぇ。で、そうして君たち巫女が孕んだ神の子はどうなるの?」

「はい。神の子は一般的な人間と同じほど、母体で成長し、そのまま降臨します。人間のように母体の股を通って出産ということはございません」

 便利だなぁ。というか、妊娠、出産までの流れで巫女の処女性も失わせていないあたり、マジで都合のいいくらいに整ったシステムですこと。

「その後、一週間ほどで人間の外見年齢でいう十五、六歳まで成長したあと、村の運営に関わるようになります。寿命の方はむしろ人間よりも短く三十年ほどとされています」

「なるほど、人間と神の間、神性を持ってはいるけど入れ物は人間だから、むしろ持たないのかね?」

「十分に解明されてはいませんが、その可能性は十分にあるかと」

「ところで、女の子が産まれたら、どうするの? また巫女にするの?」

 言ったところで、綾音はきょとんとした顔になる。あんまり見たことのないレアな表情だ。やったぜ。

「あ、いえ、今のところは女児が産まれたことは記録にございません」

「ふ~ん、もし女の子が産まれたらさらに神性の濃い神の子を作れると思ったんだけどなぁ」

「な、なるほど。その考えはなかったかも……」

 おいおい、本当に大丈夫なのか、神の子。そんなんでちゃんと運営やっていけんの?

「と、とりあえず、神様のお役目は神の子を我々に授けていただくことです。現在、前任の神様の際にはうまくいかず、この村の神の子は非常に少なくなっているため運営などにおいての脆弱性を抱えています。そのためなるべく多くの神の子が待望されています」

 ……あのおっさん、熟女好きだもんな、あの人にとっちゃ二十五歳とか、娘とか、孫にしか見えないのだろう。それと子作りしないといけないとかああ、辛いかったんだろうなぁ。いや、もうなんか逃げたくなる理由もわかるというか。綾音しか知らないけど、巫女って見た目も麗しそうだしなぁ。

 余計に気を使いそうだ。

「……事情はわかったけど、それなのに適正とか調べてるの? たとえばの話、綾音とかじゃダメなの?」

「い、いえ、わたっ……わたくし如きが受胎など、め、滅相もございませんっ!」

「あれ。俺って振られた?」

「あの……私たち巫女にとって受胎させていただくということは望外の喜びにございます。しかし、私は陰の気が強く、男児を産むのに適しているとは言い難く、おおよそ選ばれないかと……」

「せっかく綺麗なのにもったいないね」

「あ、ありがとうございます」

 綾音は恥ずかしそうに身を縮める。う~ん、こういう自信のなさは謙虚というべきか。巫女は基本的にこういうもんだとするとあのおっさんもやりづらかっただろうねぇ。

「そういえばさ、巫女って基本的に綾音みたいな子なの?」

「私みたいとはどういうことでしょうか?」

「奥ゆかしくて、謙虚。相手を立てるみたいな」

「一口に巫女と言っても様々な人がいますが、仰られた特徴を陰性とさせていただけば、私より陰性の強いものはこの中にはいません」

 いや、別に奥ゆかしく、謙虚、相手を立てるを女らしさって言ってるわけじゃないんだけどなぁ。まぁ、どういう世界観かは知らないけれど、旧時代的な男女観で固定されてるのかね?

 とは言っても、神の子を産むのが巫女だから、多少女性優位もあるのかもしれない。やっぱり外の世界を知らないことにはわからないことだってあるか。

 ……綾音の話を聞く限りでは当分外に出られそうにはないけどな。

「つまり、男を産ませたい立場としては陽性の強い巫女を相手に選びたいから、綾音は相当優先順位が低いってことになるのかな?」

「……恥ずかしながら」

「ああ、いや、責めてるわけじゃないから。えっと、じゃあ、どうして側付きは綾音なの? 単純に考えれば受胎する巫女が世話をしたほうがよくない?」

「それは私の陰性が強く、神様の陽性を中和できるからです。受胎を受け持つ巫女では、神様と長時間接するには持たないと考えれています」

「うわ~、ガバガバな設定だなぁ……」

 というか、効率を考えたら一週間で成人するくらいの成長速度なら陰性の強い巫女に女の子を産ませて、満を辞して男の子を産ませればいいと思うのだけど。そっちのほうがわざわざ陽性の強い巫女に危険を犯させる必要はないわけだし。

 まぁ、こういうのって伝統とか慣習とかが何より大事みたいなところはあるし、そうそう変えられるものでも……ってあれ。

「ねぇ、綾音。受胎する巫女を決めるのって巫女なの?」

「いえ、この村の神の子たちの合議ですが、それがいかがなさいましたか?」

「それで、ここでの巫女って俺、つまり神様の言葉を伝える役割があったりするよね?」

「はい、それはもちろんでございます」

「じゃあさ、さっき話してたこと、神の子たちに伝えてよ。この村って結構少ないんだったら、神の一声ってことでゴリ押しできるかもしれないしさ」

「し、しかし、私如きでは、そ、そのような器量もございません……」

「大丈夫、大丈夫。最悪、比較実験ってことで両方試せば問題ないし、綾音が疑われるなら直筆の手紙ってことでも構わない」

「そ、それでも、私は適格とは――」

 綾音はムキになってい否定する。それはどういうことか。謙虚さもあるだろうか、恥ずかしさもあるだろうか。

 いずれにせよ、自信がなく、まさか自分にこんなこと幸運(俺が言うのもなんだけど)が降りかかるのが信じられないのだろうか。陽性が強いものが受胎を受け持つ。ということは必然的に陽性の強い巫女が偉いということになるのだろう。言い換えれば、陰性の強い巫女である綾音はかなり立場的に良くないということでもある。綾音の人格形成において、陰性が強いからこういう性格になってのか、こういう性格だから陰性が強いのかはわからない。

 いずれにせよ、このままでは押し問答になることは間違いない。

「何? 綾音は俺の言うことが信じられないと?」

 だから、強く出る。神様のチートみたいな能力は極力使わないようにすると決めたばかりだけど、これくらいは問題ない。

 綾音は顔を真っ青にする。巫女である自分が神様を否定するなど、あってはならないことだからだろう。

「い、いえ、そんなことは……」

「そっか、じゃあ、問題ないでしょう?」

「はい……」

「それに俺の子供、孕みたくない?」

「そ、それは……無論です」

「駄目。ちゃんと言って。きちんと文を組み立てていいなさい」

「わ、私は……か、神様の子供を、はらっ……孕みたい、です」

「はい、よく言えました」

 ここに来て、まだ半日も経っていない。

 俺、見た目麗しき女の子に『孕みたい』と言わせることに成功。我ながら中々鬼畜の所業だとは思う。

 そして、やっぱり神様の力ってチートだわ。

ハーレム、と言っておきながらまだ一人の巫女とぐだぐだ会話しているだけ……おう、あくしろよっていう人は色々妄想してみるといいでしょう。ほら、大抵のことなら巫女さんはしてくれますから

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