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中は、なんてことない普通の部屋…ということなどあるわけなく。
優美で古風な洋館に似合った絢爛豪華な家具が設えてある、そんな部屋が目の前に広がっていた。
その中央には大きな玉座が存在し、そこには一人の人間が座っていた。
見ただけで分かるような王者の風格。誰もが平伏すようなそんな風貌。
…そこに座っていたのは、そんなカリスマ性に溢れた人間だと誰もが思ったことだろう。勿論少年も例外ではなかった。
「…よく来た。歓迎するぞ、新しい仲間よ」
その、玉座に座っている人間は言葉を発する。言葉自体は非常に堂々たる様であるのだが。
「…え、幼女?」
少年の口から漏れた言葉はそんな間の抜けた発言ではあったが、正しい反応と言わざるを得ないだろう。
金髪をツインテールにした髪型に、いかにもゴスロリといった格好。
その体格とは不似合いな大きな玉座に座って足を組むその姿は、誰がどう見ても幼女であることは明白だった。
「…すまない、ちゃんと聞こえなかった。君は『何と言った』のかな…?」
少年の不躾な反応が、その幼女には気に入らなかったらしく怒りの感情が言葉の節々に現れる。
「す、すいません…。何でもないです…」
少年は慌てて取り繕う。確かに初対面の人に対して幼女呼ばわりは失礼であった。
が、しかし。周りを見てみると、少年のその反応はあながち間違ってもいなかったらしい。
「くくく…!! あははははは!!! 幼女だってよ!!! 的を得すぎだろ!!! あははは!!!」
「ちょっと、笑い過ぎですよ…。確かに間違ってはいませんが」
その幼女の左右にいた人間は少年の発言を否定しない。それどころか一方の男に関しては大爆笑をしている始末であった。
「にゃははは!! 絶対言われると思った~!!」
さっき会った女も腹を抱えて笑っている。驚いたことに、少女ですら少しだけ口元が緩んでいる。
「幼女は、的確。大正解」
そして止めの一言。先程まで偉そうにふんぞり返っていた玉座に座る幼女は、肩をプルプルと震わせている。
「…もういいもん!!! 今日だけはカッコつけようと思ってたのに~!!! うわーん!!」
挙げ句泣き出してしまっているところを見ると、本当に幼女らしい。随分と豪快な泣きっぷりだ。
少年がこの異様な光景に、今日一の困惑をしていたのは想像に容易いだろう。