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恋愛未満な恋  作者: 野波香乃
第一章:When love comes off
4/9

3.イケメン社長現る

ついに登場。

(初回掲載日6月20日22時)

 三階の社長室の前にあるエレベータ前で待つこと五分。

未だ待ち人来ず。



 申し送れましたが、私の名前は柳井加絵(やないかえ)、年齢26歳もちろん独身。

株式会社ThreeNext(スリーネクスト)という建築デザイン事務所に入社して二年目。

建築デザインということで、主に家、ビルをデザイン設計する会社の事務を担当。

身長はでかくもなく、小さくもない160センチで、髪型は流行にあわせてボブカット。

デザイン事務所なので、普通の企業みたいなスーツ着用とか所謂オフフィースカジュアルとかそういった服装に規定はないので、髪型のボブに合うカジュアルな服装で勤務していることが多いと思う。

容姿はというと、どちらかというと童顔だと言われることが多く、ボブにしたのでさらに童顔になったとかで、『若返った。』と言われているところ。

まぁ、どこにでも居る普通の人間です。


 ちなみに私がこの会社に入社二年目なわけは、転職して入社したから。

そもそも大学では第二言語としてスペイン語を専攻していたのを活かし、大学卒業後は商社に入社するも色々訳あって四年で退社。

でっ現在に至るというわけ。


 特にこれといった趣味などはない。

あるとすれば、平和にただ毎日を過ごすこと。

それ以外に興味のあるものはない。

と言いましたが、一つだけ挙げるとすれば、貯金くらいなものかな。

 

 そんな私に突如として投げられた石。

当然平和しか興味のない私はその石を遠くから眺めているだけ。

間違っても近づいてみようとか、手にとって触れるなんてことをする気はありません。

だって人って少しでも近づいてしまったらそれに触れたくなるものでしょ。

だったら最初から近づかなければ、触れたいなんて思いを抱かなくてすむもの。


 漸く社長室の扉が開き、こちらに歩いてきた一人の男性。

待ちに待った社長の登場。


「柳井さん?」

「はい、柳井です。よろしくお願いします。」

「よろしく。だいぶ待たせてしまったか?」

「いいえ、大丈夫です。」

「そうか、では行こうか。」

「はい。」


 社長が乗り込んだエレベーターの後ろに乗り、下まで降りる。

うちの会社は一応自社ビルと言うやつだ。

ただビルと言うほど建物としては大きくはない。

それに見た目もビルという感じではない。

設計者は当然目の前にいらっしゃるこの会社の社長。


 建物は全体的に白い壁で統一されていて、一階は格子で覆われているのに対し、二回は格子はなく、ただの白い壁。

そして、三階はまた格子で覆われているという外装。

こんな会社に勤めてはいるけど、私には専門的な知識はまったくといっていいくらいない。

なので、自社を説明しろと言われてもこんな素人のような説明しかできない。

そうしている間にエレベーターは一階に到着。

一階はカフェスペースにもなっていて、社員の憩いの場。

そこを抜けて玄関を出て敷地内に駐車されている社長の車の前に来た。


「柳井さん、嫌いなものとか食べられないものは?」

「いいえ、とくにありません。」

「そうか、それなら今日は俺に付き合ってくれるか。」

そう言うと、社長はポケットから取り出したキーで車ののロックを解除した。


「どうぞ、乗って。」

「お邪魔します。」


 案内されて座った助手席。

社長と言うと、これ見よがしにベンツとかBMWとかの高級車を乗り回してるイメージしかなかったけど、この人の愛車は普通の国産車。

それも環境に配備したとかいうあの車。


 外に居たときと比べ断然近くなった距離。

目的の場所までは社内で二人きりでいることになる。

訪れる沈黙をどうやり過ごせばいいのかなんてことを考えていたとき隣から話し声。


「今から行くところなんだけが…。」

「はい。」

「先日仕事帰りに車で通ったときに建物が目に付いただけでな。だからどんな店なのかもわからないし、味の保障もできない。」

「はぁ。」

「ということで、はずれだったら悪いな。次からはきみの食べたいものも聞くから。」


 そう言われても…。

厚かましくも社長に向かって食べたいなんて言える分けないのに。

それに普通の会社員である私がランチをする場所なんて限られている。

だいたいは同じ事務の佐伯まどかとランチに行くか、コンビにのおにぎりだったり、給料日前になると、お弁当を持ってくることだってある。

ランチにお金をかけていたらいくらお金があっても足りたものじゃない。

そんなことをこの隣で運転をしている人はわかっているのかな…?


 紹介がくれましたが、今私の隣で車を運転中なのがうちの会社の社長で、名前は市川丞人(いちかわつぐと)年齢はまどか調べによると40歳。

一級建築士として、色々な物件をデザインし、私には業界のことは詳しくはわからないけど、幾つか大きな賞も受賞しているとか。

その道ではまぁまぁ有名な建築士だそうです。

社長がデザインした物件などが雑誌に社長の顔を載せて掲載されることもあって、イケメン社長ともてはやされた事もあったとか。


 そんな社長の今日の服装はと言うと、当然サラリーマンのような上下スーツではなく、ストライプのボタンダウンの長袖シャツに、ネイビーのテーラードジャケット、下はベージュのチノパンに靴はスウェードレースアップシューズといった組み合わせ。

最後まで手を抜かない靴にも気を遣ってるところはさすがだなって思う。


 それに、社長は細身で身長も高い人だから何気ない組み合わせでもかっこよく見えるのはおっさんでもイケメンのなせる業だなって思う。

だからこの社長にはクタビレタサラリーマンなんていう言葉は無縁の代物ってところ。


 26歳の私みたいな小娘が言うのも微妙だけど、社長を見ていて思うのは、服装とか雰囲気がいい年のとり方をしている大人の男って感じさせるところだって思う。

若手の社長にありがちないかにもって感じでもなく、デザイナーとかにありがちな個性的な格好でもないところもこの社長っぽいところ。

やっぱりこういう仕事上、見た目も大切だから仕事と同じくらい気を使っているのが伺える。

落ち着いた大人の男という表現がぴったり。

あとは年齢を重ねた分だけ若者にはない包容力がありそう。



 そっと運転中の社長の横顔を盗み見る。

至近距離でおまけに二人きりの車内。

ちょっと緊張。

雑誌でイケメン社長って取りあがられるのにも納得してしまう。

久しぶりかも。男性の車の助手席にこうやって乗るのは。

そんなことを思いながら社長の顔を見ていたとき思い出したのは別の人の横顔。

当然だけど、そこに居るのは彼ではない。

楽しかったときの事を思い出しそうになって、これ以上は思い出したくなくて、慌てて違うことを考える。


『そういえば、社長って結婚してるのかな?』


ステアリングを持つ手に指輪は見当たらない。

でも男の人って指輪しない人も結構いるからなあ。




「この店。」


 会社から車で走ること10分。

思った通り会話ははずまなかったけど、意外と近場だったのでよかった。

掲げられた大きな看板には、店の名前と手打ちそばの文字。


店の隣に併設された駐車場に社長が運転する車が止められた。

次話もお楽しみに。

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