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Holy Nightに口付けを

作者: 三月やよい

恋愛色強いものに初めて挑戦してみました。

初めて「恋愛」のジャンルを選んでみました。

どうしようもなくべったべたに甘ったるいお話が

衝動的に書いてみたくなったのです・・。

ちょうど12月23日が舞台です。


甘ったるいのが苦手な方にはちょっと胸焼けしそうかも?です。

「うーん・・・」

実希は自宅の物置として使っている3畳間のドアを開け放した状態で

頭を悩ませていた。

(きっと・・・ここにあるのだけれど・・・)

物置とは言っても掃除好きな同居人・純一が

かなりマメに掃除をしているのでほこりっぽさなどはない。

両壁一面に棚を置き細々としたモノを

そして奥には季節外の服や季節限定でしか使わないモノたちが

実に整然と段ボールに詰まった状態で置いて・・・あるはず。

でも目的のものが何処にあるのか実希には皆目見当が付かなかった。

綺麗に整えられていると返ってそこを荒らすのが躊躇われ

家捜しのように大捜索するのは一時保留とした。

(純一に聞いてみよっと)

ここは片付け担当の同居人・・・・もっと甘ったるい表現で言えば

一緒に住んでいる恋人に助けを求めることにした。

二人は「恋人」には違わないが普通の恋人同士とは少し・・・

いや、かなり違っていた。

純一は吸血鬼と人間のハーフ。

そして実希はその純一によって吸血鬼一族へ転化した

元・人間、現・吸血鬼。

永遠の命と純一とを引き替えに実希はそれまでの人生

・・・・家族や友達などを失ったのだった。

吸血鬼一族へ迎え入れる者はその命ある限り

添い遂げなくてはならないと吸血鬼一族の掟で決まっているらしい。

もし、心変わりして別れたいのならば、

純一は実希を殺さなくてはならないのだ。

「ま、もしもそうなったらそうなったできっと寿命なんだわ」

なんて実に達観した意見を持っている実希は

それでも構わないと純一と生きていくことを選んだのだった。

実はハーフが人間を吸血鬼に転化させるのは

一族始まって以来の珍事らしく当初、一族のお偉方は

大層反対もしたらしい。

が、一族族長・・・つまり吸血鬼一族で

一番権限を持っている純一の幼なじみとも言える存在・京介の

が一切の責任を持つということで二人の婚姻は認められたのだった・・・・

ってこれはまた別のおハナシ。


「ねぇ純一・・・・お願いが・・・」

純一の部屋をノックしドアを開けると

ローソファで読書している純一が目を上げた。

栗色の髪に栗色の瞳、中性的で穏やかな顔立ちが理知的で

本を手にしている姿が非常によく似合っていた。

「あ・・・そっか、さっきお風呂入ったんだよね・・・

 じゃあ・・・いいや」

ふわり、と部屋からシャンプーの香りが漂ってきた。

現在の時刻は午後8時。

夕食は夕方早めに取り祝日でもある土曜日の夜をのんびりとすごしていた。

(そういえばさっきお風呂はいるねーなんて言っていたっけ)

「ん?いいよ。どうしたの?

 丁度本も一区切り付いたとこだし」

純一は読んでいた本をソファに置き立ち上がった。

オフホワイトのネル地パジャマ姿でくつろいでいる純一に

一仕事してもらうのも忍びないので

実希はちょっともじもじしながらも

「ううん。いいの。

 汗かくかもしれないし・・・汚れちゃうかもだし・・・・」

とドアを閉めようと踵を返した。

「ん?なぁに?意味深だなぁ・・・・

 いいよ、一緒に汗かく?」

純一は実希を後ろから抱きすくめ頬にキスした。

「なっ!?

 そゆ意味じゃないもんっ」

腕を離そうとしたがしっかりと実希を抱え込んでいた。

「え?そゆ意味でもいいじゃん」

すっくと実希を抱え上げ・・・155センチほどしかない

小柄な実希は比較的華奢な純一に軽々と抱き上げられてしまった。

「汗かいたら一緒にもう一度お風呂入ろうね」

なんてキスしながら実希のワンピースのファスナーを下ろし始めた。

「ちょっと!え?だめ・・・そんな・・・・」


「・・・・純一のいぢわる・・・」

ベッドの上、純一の腕の中で実希は恨めしそうな声で膨れながら

不満を口にした。

実希の左首筋には小さな牙の痕が2つ・・・この傷は

ほんの1時間ほどで消えてしまうだろう・・・くっきりと付いていた。

「ごめんね、

 もじもじしている実希があんまりに可愛いからついつい、ね」

純一は悪びれるでもなく実希の髪を指で梳きながら額にキスをした。

ふにゃふにゃとした疲労感に心地よい純一の感触に

眠くなってしまいそうだ。

「血・・・吸い過ぎちゃったかな?」

神経質そうな細い指で純一は実希の首の傷をそっとなぞった。

その傷はもうふさがりかけており吸血鬼の快復力の早さが伺えた。

「ううん。大丈夫・・・・痛くもないし・・」

吸血行為に痛みは感じない。

もっとちくりとした感じがするかと初めて血を吸われた時、身構えていたが痛いってよりも口唇が触れた箇所が温かくて何かくすぐったく感じたのを覚えている。

「ただ・・・・」

言いかけてちょっと考えて言葉を止め、毛布を顔の辺りまでずりあげた。

「ただ、なぁに?」

そんな実希を毛布越しに抱きしめた。

「ん?ただね・・・あの・・・力抜けちゃう・・かな」

ちょっと恥ずかしそうに視線を逸らしながら言った。

「実希はあんまり血吸わないからね。

 俺ばっかりもらっちゃってるね。」

「んー・・・・やっぱり私って吸血鬼としてはハンパ者なのかな?

 血ってそんな欲しいと思わないなぁ」

実希は吸血時に現れる牙も小さく殆ど吸血衝動も起きない。

「俺もハーフだしね。

 でも血なんて吸わなくても一応、生きていけるしね」

純一はうつぶせになるような体勢で実希を見下ろし

そのさらさらしたセミロングヘアを指で弄んだ。

「京介が実希はどれくらいの吸血衝動が現れるのか気にしていたなぁ

 ・・・・あ、京介といえば、だ。

 折角だからメイド服着ようか?」

「え?はい?」

突拍子もない提案に実希は素で素っ頓狂な声を上げてしまった。

「いやぁ・・・・昨日、アンナさんから荷物届いたんだけれどさ、

 それが『実希さんへどうぞ』って新作メイド服が送られてきたんだよ

 京介といえば何かアンナさんが浮かんでさ、思い出した。」

邪気のない笑みで語った。

「やだよぅ・・・メイドって・・・だってこの前着たメイド服って何か・・・

 肌出し過ぎで・・・・」

「大丈夫、ちゃんと今回はクラシカルなヤツだって言っていたから」

と純一はベッドサイドに置いてあった籐編みの籠から

ワインレッドの包みを取り実希に渡した。

アンナは吸血鬼一族族長・京介の元・メイドで

現在は趣味と実益を兼ねた仕立屋をしている女性だ。

彼女は・・・・純一と趣味があうというか・・・

悪のりするというか・・・要するにコスプレってヤツが大好きで

たまに実希向けに純一好みの非常に実用的ではない服をプレゼントしてくれた。

「あけてみてよ」

と言われて開けた包みの中には焦げ茶色のワンピースに

白いエプロンが確かに可愛いクラシカルなメイド服が入っていた。

そしてこの前の下着と紙一重のようなメイド服とは違って

ちゃんと典型的なカンジ・・・・いやいや、そうじゃない、

そうじゃなくて何でメイド服?

実希は一瞬、「着てもいいかな」なんて思った自分が

いかに純一に感化されているかを思い知った。

「ね、着せてあげるから・・・」

なんて言いながら毛布をめくりあげた。

「だめっこらーっ」

「着てくれないとこのままベッドから出してあげないよぉ?

 ね、ちょっとだけ・・折角アンナさんが作ってくれたヤツだし・・」

純一は楽しそうに実希の着替えを手伝い、

エプロンのリボンを後ろ腰で器用に結んでくれた。

「いつもびっくりするんだけれど・・・

 やっぱりアンナさんってすごいなぁ。

 ホントにサイズぴったり」

腕の長さも胸もウエストも肩幅も完璧だった。

まさにあつらえたようにぴったりで着心地もよく

特にビロードの肌触りは何だか一度触るとやめられない感触だった。

「あ、ホントだ。手触りいいね。コレ」

「あんっだめ!くすぐったい・・・・

 何でわざわざくすぐったいお腹さわるのぉ?ばかーっ」

「くすぐってるんだもん、そりゃくすぐったいよ?

 ほらほら、実希。

 だめ、じゃなくてメイドだったら『やめてください』でしょ?」

「バカ言わないでよっそんなこと・・あっ」

「反抗的なコにはお仕置きっ」

純一は実希のお腹をくすぐりながら耳をぺろりと舐めた。

「きゃっ!」

「ほぉら、ちゃんと言わないと実希が弱い耳に色々しちゃうよぉ?」

何だか今日はいつにも増して純一は茶目っ気があるというか

いたずらっ子というか・・・

「・・・んっ・・・やっ・・辞めてください・・・

 辞めてください・・・ご主人様ぁ・・・」

素直に言うなんて余程にくすぐったくて苦しかったのだろう。

しかし、その涙目で純一を見上げる姿が何かのツボに見事はまったらしい。

「・・・か・・かわいい・・・」

純一はそのまま実希を離すことなくベッドに

押し倒してしまったのだった・・。


「ホントにいぢわるっこ・・・」

いつもだったらもっと威勢良く怒る気の強い実希だが

今日は貧血といろいろな脱力から何だかしおらしかった。

「ごめんね、つい・・・ね」

さっきと同じ詫びの言葉を口にしながらも

流石にさっきよりはすまないと思っているらしかった。

今度は右首筋に牙の痕・・・そして胸元には数カ所

咬み痕とは明らかに異なる赤い痣ができていた。

「もう・・・・あれ・・・・?」

吸血されることによる貧血は人間だったときに較べると

随分と楽にはなったが、2回も立て続けに吸われたことと

ふかふかしたベッドの心地よさから

実希はそのまますーすーと寝息を立て始めてしまった。


「あ・・・れぇ?」

目が覚めると自分の部屋のベッドではなく純一のベッドだった。

「・・・・ん・・・・・あれ?」

二度目の「あれ?」。

隣にいると予想した純一はそこにはおらず、

起きあがり部屋を見回しても純一の姿はなかった。

(リビング・・かな?)

実希はベッドの上にかけてあった純一のシャツを羽織り

灯りが漏れているリビングへ足を向けた。

純一はリビングでお気に入りの女性ジャズボーカリストのCDを、

音量を抑えつつ流しながらクリスマスツリーの飾り付けをしていた。

「あ、起きた?

 良かった。何だか気持ちよさそうに寝ていて

 起こすの忍びなかったんだよね。

 シャンパン飲む?クリスマスイブまであと5分だよ」

壁に掛けてある時計は夜11時55分をさしていた。

もう少しで12月23日が終わりクリスマスイブだった。

パイン地のテーブルの上にはガラス製のワインクーラーで

ピンクシャンパンのボトルが冷やしてあった。

「あ・・・・ツリー・・・・」

こんな見事なツリーがあったなんて、と実希は

大きな瞳を更に大きく見開いた。

生木ではないが精巧に作られたモミの木は実希よりも・・・

純一よりも更に10センチは高く、てっぺんには大きな金色の星が飾られていた。

天使にリースにベルに・・と様々なオーナメントが

多少あちこちに偏りがありつつも全体的には華やかで

見事としか言いようがないツリーだった。

「これでしょ?実希がもじもじししていた理由」

「何で解ったの!?」

実希は興奮で何故かきょろきょろと辺りを見回しながら尋ねた。

「ひとつ、午後のTVでクリスマスツリー特集していたのを

 目を輝かせてみていた。

 もう一つ、さっき俺の部屋来た時に物置の匂いがした・・・・

 この季節で探してるものっていったらコレかなって」

純一はシャンパンのコルクを開けながら説明し用意してあった

グラス2つに薄ピンク色の液体を注ぎ入れた。

「私って単純なのかなぁ?」

「違うよ、俺が実希にたいしては敏感なの」

 さ、じゃあクリスマスイブを祝おうか。

 明日は一緒にプレゼント買いに行こうね」

『乾杯』

かちん。

実希はシャンパングラスをあわせピンク色のシャンパンの気泡越しに

純一の顔を見て「あ、やっぱり私この人が好きなんだろうなぁ」と

何だか再確認してしまった。


Merry X'mas!

全ての人に幸せな聖夜を。

挑戦したはいいが甘ったるいのは・・・難しいかもです。でもまた書いてみたいです、はい。

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[一言] はじめまして、読ませていただきました。 この作品のノリ、大好きです。 甘いと言っても、爽やかな感じで可愛らしい茶目っ気があって。 微笑ましい感じでした。 文章は改行が多いので、それがちょ…
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