時には自分も皮を被る
中学生の夏、となりのクラスの女子に告られた。
5月の熱い朝
騒がしいクラスメイトの声が教室に響く中、机の中に一枚の手紙を見つけた。
「こんな俺にも春が来たのか!」
そう思いながら俺は手紙を隠れて開いた。
相手は幼稚園からの幼馴染だった。小学生の頃では、一番親しい女友達だったと思う。
でも、中学生になって彼女は不登校になっている。
理由は知らない。
そんな彼女からの手紙を読んでみた。
はじめてのラブレターに、俺は身体が熱くなってしまった。
正直言って自分がキモい。。
手紙の返事を伝えに行きたかったが、あいにく彼女は休んでいた。
家に帰って、メールごしに承諾をした。
彼女は喜んでいた。。。
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定期的にメールを送りあった。
夏祭りに一緒に行った。
体育祭を一緒に楽しんだ。
だけど、
8月の下旬。
あっさり別れた。
理由は単純だ……
俺は恋愛には向いていない。。。
「恋愛に向いてる向いてないなんてないだろ」
「別れたからって、それが理由じゃないだろ」
友達は、そんな感じに俺に返答してきた。
俺だってそんな考え方はおかしい……と思う。
だけど、振り返ってみたらわかる。
自分からも遊びに誘わないし、会話もしない。
ましてや、相手のことを知ろうとしない。
……今思っても、
「何でこんなんで付き合ったんだろう、」
ってなる……。
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ここからが地獄だった。
今まで相談にのってくれた友人や、共感してくれたサッカー部の仲間が敵になった。
ホームルームから帰りの号令までの休み時間、いっつも別れ話をネタに俺を嘲笑う。
部活前の準備中、チームメイトから元カノの名前で呼ばれ続ける。
本っっ当に嫌気がさした。
でも終わらない……
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俺は進級し、中学三年生になった。
「中学校最後の一年、切り替えて受験を頑張ろう!」
そう意気込んで学校へ向かった。
俺は逃げたかった。
元カノと同じクラス。
そして自分を嘲笑ってきた元サッカー部の奴らも同じだった。
神なんていない。
そう思いながら教室へ向かった。
薄暗い教室。うるさい男らの声。ほかのクラスへ急ぐ女子の鬱陶しい足音。
全てを呪いたい。
新学年初日。思ってもいなかった一日。壊したい一日。
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春。夏。秋が過ぎて、冬になった。
「早く受験が終わって高校生になりたい。そして変わりたい。」
毎日そう祈った。
ピコンッ
スマホに通知が来た。
「久しぶりぃ!小学校ぶりだなあ~」
小学生の頃、仲の良かった友人Aからだ。
「今度メシいかね?」
「おけ」
俺は無意識に返信してしまった。
12月上旬。俺は友人Aと久しぶりの再会をした。
身長は俺より少し小さく、旅行先にある顔ハメパネルのような存在感だった。
「おっっす!久しぶりぃ!」
小学生のころとなんも変わってねえ。
本当に同い年かと思う。
友人Aは駅近の焼肉へ行こうと誘った。
俺はついていくことしかできなかった。
着くや否や、友人Aは一気に肉を二人前近く頼みやがった。
しかも店員さんにナンパ未遂なことまでする始末。
……でも、なんか楽しい。
友人Aの話を聞いて。一緒に笑って。また笑って。この繰り返し。
こんなにもシュールで、面白みのないことが、誕生日やゲームで勝った時よりも嬉しい。
だがもう夕方。名残惜しいが、お互いのいるべき場所へ別れる。
別れ際、友人Aは早口になって言った。
「お前は顔が暗いから笑え。小学校の頃のほうが俺は好きやったでぇ。」
友人Aは、自分と反対側の電車に乗って帰った。
――笑えか。
俺はそう呟いた。
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友人Aとの再会から二日後。学校が始まる。
俺は学校に着くと、同じ学年の奴らから視線をよく浴びた。
すごく気味が悪い。
いつも空気のような扱いで、自分より質が低いように思っているくせにどうしたんだ。
俺は少し急いでトイレに行き、鏡を覗いた。
いつもよりなんか顔が明るい。
……キモっ
変だな。何で学校の奴らも学校も嫌いなのに笑ってんだ?
そう考えながら教室へ向かった。
教室につくと、
俺はみんなのことを何とも思わなくなってる。
なぜだ。俺はコイツらに侮辱されてんだぞ。おかしい。
おかしいのはそれだけではなかった。
元サッカー部の奴らは俺を拒絶なんかしていないし、ましてや遊びに誘ってくる。嘲笑うことなく。
元カノの方は、他の女子のようにただのクラスメイトとしての扱いで、元々付き合っていた気配をなくすような雰囲気になっている。
どうしてだ。なんでこうも変わってしまったんだ。
あっ
俺は気がついた。
俺は勘違いをしていた。
とうに俺は恋愛に興味がなくなっていた。ていうか女子に対する恋愛感情すらなくなっていた。
今まで自分が抱いていたのは、ただの過去のしょうもない出来事の一つだった。
例えていうなら、スーパーでお母さんと知らないおばさんを間違えて、一日中恥ずかしがっている少年のようなものだった。
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それからのこと。
俺は家の近くの高校へ進学が決まった。
同じだった中学の奴らも来るだろう。
だけど、過去のことなんてどうでもいい。
元カノとの恋愛なんて、ただの夏の気まぐれだと思う。
高校の入学式の前夜。俺は友人Aと土手を歩いていた。
「友人Aには助けられたわ」
「何のこと?」
「あぁ、いや忘れてくれ」
「なんやねん」
俺は無意識に右足が前に出ていた。




