表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

乙女ゲームのメインヒーローに転生したのに、誰も攻略に来ない件〜俺様王子、人気ない?〜

作者: はなまる

「今どき、俺様キャラとか無理よね」

「結婚したら、絶対にモラハラされるわ」

「強引で男らしいとかって、自分勝手で無神経ってことでしょう?」

「平気で浮気しそう。それで『妻はお前だ。なにが気に入らない?』とか言いそう」

「あー、わかる! 言いそー!」


 ふと気まぐれで参加した、夜会で聞こえて来た会話だ。それが自分に関する噂話だと気づいた時、俺の信じていた世界は根底からガラガラと崩れてしまった。


 えっ、俺様王子、人気ないの?


 夜会の会場から、どうやって戻ったのかも覚えていない。気がつくと城の中庭で花占いをしていた。


「来る、来ない、来る、来ない……。また来ないだ! この庭には偶数の花しかないのか!」


 小動物系ヒロインは、なぜ攻略に来ない! 美人の悪役令嬢は何をやっている!


 自分がこの国の、王子だと自覚したのは三歳の頃だ。同時に転生者だということも思い出した。


 この世界は『ロマンスを貴方と』という乙女ゲームの世界観を、忠実に形作っている。国や王都の名前からはじまって、王族や主な貴族の家名や政治形態、宗教に至るまで。


 なぜそんなにも詳しいかと言うと、前世の俺がその乙女ゲームを作った会社に勤めていたからだ。開発者ではなかったが、テストプレイにも参加したし、設定資料は暗記する程度には熟読した。


「ふん。あんなモブ令嬢ごとき、俺の方こそ相手にするわけないだろう! 俺様王子の良さがわからないなんて、どこの家門の者だ!」


 そもそも俺は、なぜ逃げるように帰って来てしまったんだ。これではまるで、負けたみたいじゃないか!


 ゲームの中のメインヒーローである『レヴァイン王子』は、モテモテの俺様王子だった。文武両道で自信に満ち溢れ、全ての者を従えて覇道を突き進む。


 実に男のロマンに満ち溢れている。乙女ゲームなのに。


 ヒロインサイドから言うと、パラメーターを完璧な良妻賢母型へと成長させないと、レヴァインルートの完全攻略は出来ない仕様になっている。


 レヴァインに転生したと気づいた俺は、高笑いが止まらなかった。なんせ、完璧に俺を立てる慎ましく有能な妻と、輝かしい王としての未来が待っているのだ。笑わずにはいられない。


 俺はメインヒーローに恥じないよう努力を重ねた。勉強を怠らず、身体を鍛えた。『努力? 凡人のすることだな』というポーズの裏で、こっそりと泣いた日もあった。それこそ、白鳥が湖面を優雅に滑るように進む水面下で、必死に脚を動かしているみたいに。


 それなのに。


 学園に入学しても、一向にヒロインが現れない。それどころか、婚約者になるはずだった公爵令嬢にさえ、一度も会ったことがない。


 聞くところによると、外国に留学しているらしい。父親である公爵は『来年には戻る予定です』と、五年前から言っている。


 実はヒロインのことも探しに行った。


 見つからなかった。母親が経営しているはずの食堂さえ見あたらない。近隣の住人によると三年前に引っ越したらしい。


 どういうことだろう。実は似ているだけで、ゲームとは違う世界なのか?


「それとも、誰か他の転生者が邪魔をしているのか?」


 web小説などで、脇役やモブキャラが物語を変えてしまう話もあったはずだ。


『モテモテ』の設定が機能していないのは、そのせいか?


 自分で言うのも何だが、俺はかなりのイケメンだ。少し癖のある金髪、瞳は高貴なロイヤルパープル。身長も高いし細マッチョ。ヒゲも濃くない、顎も割れていない。へそ毛も生えていない。文句のつけようのないハイクオリティなイケメンだ。


「なぜ、モテない?」


 もちろん、丸っ切り女が寄って来ないわけではない。それなりにキャアキャアと騒がれてはいる。だが、距離を詰めようとすると、スッと引かれるのだ。


 先日、剣術の授業中に、女生徒が群がっていた。


「ふっ、全く……他の生徒の迷惑になるだろう」


 最前列に、ちょっと好みのタイプがいたので、タオルを受け取り、壁ドンを披露してやった。


「俺が欲しいなら全力で来いよ。集団に紛れて、あわよくば……とか浅ましいんだよ」


 耳元で囁いてやった。自慢のバリトンボイスで。


 クールで最高に格好いいセリフだ。


 それなのに、その女生徒はそれきり見かけていない。まあ、俺も本気じゃなかったからな。すぐに忘れた。ふん。


 母上に見合いのように、令嬢とのティータイムをセッティングされたこともあったな。気位の高そうな女だった。


 俺は椅子の背もたれに片腕を乗せて、長い足を見せつけるように組んで座った。女の機嫌を取ったり、会話に気を使ったりなんかしない。そんなのは女の側の仕事だろう?


 その女は、しばらく自分の得意なことや、家の自慢話をしていたが、そのうちに黙った。


「それだけか? 下らないな。俺のために生きて死ね。それが国を背負う男の妻となる条件だ」


 我ながら痺れるな。こんなセリフが似合う男は、他にはいないだろう。


 その令嬢も、二度と王宮には来なくなった。なぜだ。



 夜会で(さえず)っていた女どもは、こんな完璧な俺様を『無理』『モラハラ』『無神経』とはどういうことだ?


 前世の俺は平凡な男だった。顔も年収も身長も中の下。学歴も普通、社会的な地位もないサラリーマンだ。女性にも周囲にも、気を使いまくって生きていた。


 それがどうだ? 極上のイケメン、至高の能力、最高峰の富と権力。国中の女が『抱いて!』と縋りついて、当たり前だろう。俺にはその価値がある。


 ぶつぶつと愚痴りながら、花壇の花を千切っていると、キャッキャウフフと、浮ついた声が聞こえて来た。


「あら、レヴァイン兄さま」

「レヴァイン殿下、ご機嫌麗しゅう」


 末の妹王女のアリステアと、その婚約者のレオンだ。まだ八歳の癖に婚約者とか……。


「ああ」


 俺は鷹揚に応えて、持っていた花をポイと投げ捨てた。


「ごきげん、ななめですのね。レオ、先にティールームに行っていて下さる? 少し、お兄さまと話してから行くわ」


「はい、アリス。お茶受けは何がいい? ぼく、準備しておくよ」


「ありがとう。レモンパイが食べたいわ」


「わかった。任せて! では、レヴァイン殿下、御前失礼致します」


 アリステアは神童と呼ばれている。まだ幼いが三人いる王女の中で一番厄介で生意気だ。


「ふん。お前の婚約者は、相変わらず女々しいな」


「お兄さま、何度も申し上げていますが、私のことを“お前”と呼ぶのはやめて頂けますか?」


「なぜだ? 家族を“お前”と呼ぶのは当たり前だろう?」


「当たり前なんですね? じゃあ私もお兄さまを、これから“お前”と呼びますね」


「……」


 何だ? ムカッと来るな。


「ね? ムカつくでしょう? この国の価値観や慣習を鑑みると、“お前”という呼称は、見下している相手に使うのです」


「そんなことは……」


 いや、あるな。俺は父上と母上を“お前”とは呼ばない。ん? そういえば、両親も最近は“お前”を使わなくなったな。


「はい。“お前”以外はみんな、説明したらわかってくれましたから」


 ……まじでムカつくな。それと俺の心の声と会話するなよ。


「“お前”と呼ぶことによって、見下し、自分が上だと押さえつけているんですよ」


「だが、お前は年下で妹だし……」


「お前には、年齢以外に誇れるものがないんですか? 先に生まれると何か偉いんですか? だったら動物園にいる陸亀のジョージが国で一番偉いですね。百四十歳ですから」


「……わかった。お互いの精神衛生上、お前呼びはやめよう」


「はい、お兄さま」


 アリステアがにっこりと笑った。こいつ、黙って笑っていれば極上の美少女なんだよな。


 ……“こいつ”も突っ込まれそうだな……。


「あと、私の婚約者は女々しいではなくて、“思いやりがある”が正しい形容詞です」


 ちんまい身体で胸を張って言う。


「なぜ、おま……アリステアが得意そうに言うんだ?」


「私の好きな人ですから、誇らしいですわ」


 八歳なのに、好きとか言うのか。いっちょまえに。


「今なんか、失礼なこと考えましたね?」


「気のせいだ。……なあ、人を好きになるって、どういう気持ちだ?」


 ちっ、幼児に何を聞いているんだ? 俺としたことが。弱気になっているのか?


「お兄さま……」


 やめろ! 可哀想なものを見るような目をするな!


「はぁ……。お兄さまは“共感性”が、致命的に欠如していますからねぇ……」


 きょうかん、せい……? 何だソレ?


「きょとんとしないで下さいませ……。共感性とは、“他者の感情や立場を理解し、疑似体験したかのように感じ取る能力”ですわ」


「……それは人間に必要な能力か?」


「それがあるから、人類は群を維持して進化したんですよ」


 噛んで含めるように言うな。居た堪れなくなる!


「壁ドンは、脅迫行為にあたります」


「えっ、」


「浅ましいなどと言われて、喜ぶ女性はいません」


「あ、あ、何で知って……」


「下らないも、同様ですね。“俺のために生きて死ね”。それでは奴隷ではないですか……」


「おまっ、おま、アリステア……! 貴様、何者だ!」


「やっと気づきましたか? ()()転生者ですよ」


「貴様がシナリオを変えたのか! 俺のルートの邪魔を……」


「いいえ……。『王太子レヴァイン』は、昭和的な男尊女卑の部長の趣味で、ゴリ押しで作られたキャラですが、女性社員からのクレームが多くて発売前に削除されたんです」


「なん、だと……?」


 もう立っていられなかった。メインヒーローだったのに、削除済みだと……? 俺は……レヴァインは……生まれる前に殺されてしまったのか……!


「レヴァインは格好いいだろう! 男の夢とロマンが……」


「だからですよ。『ロマンスを〜』は、女性向けの恋愛シミュレーションゲームです。男尊女卑のキャラがウケるわけないじゃないですか。ちなみに部長はモラハラとパワハラで地方へ飛ばされました」


「レヴァイン……パッチで復活とか、外伝で隠しキャラとかは……」


「ないです」


 うっ、うう、涙が止まらない。人前で泣いたのなんて五歳の時に、馬に糞を頭に落とされた時以来だ……!


「お兄さま、元気をお出しになって。あなたは削除されていないじゃないですか」


 そうだ……。絶望するのはまだ早い……。


 俺がゲームキャラじゃないなら、リセットボタンがなくとも、いくらでもやり直せるはずだ!


「……そうだな……俺の伝説は、ここからだということだよな?」


「違います」


「俺は諦めない。次は“歩み寄る俺様”を目指す!」


「そんな属性ありません! なんか這い寄って来るみたいで怖い!」


「ふっ、教えてもらおうかアリステア……! 他人との、寄り添い方ってやつをさ……」


「すぐそうやって、倒置法で喋る……。だから悪役っぽいって言われるんですよ!」


 そうか? 俺は格好良いと思うんだけどなぁ。


「うむ……特定の相手にだけを特別扱いして、デレデレに甘やかすのはどうだろう?」


「それはスパダリですね。一定の需要があります。ですが、婚約者が決まってからにして下さい」


「……その相手にだけ、弱みを見せるのは?」


「それはツンデレですよ」


「そう、それだ!」


「若干、時代遅れです」


「えっ、そうなのか……じゃあ、例えば……」



 お兄さまったら……。ご自分が“歩み寄る”や“人の意見に耳を傾ける”が出来ていることに、気がついていないのかしら。


「よーし、俺様改革、第一章の幕開けだ! アリステア、ありがとう! これからも頼むな!」


 お兄さま、わかりました……。あなたに一番合っている属性は“ポンコツ王子”です。


「次の夜会で見せてやる、“進化した俺様”をな!」

 

 また倒置法で言ってる……。こんなお兄さまを、愛して下さるご令嬢、募集中……です……。




                     おしまい





最後まで読んで頂き、ありがとうございます。『レヴァイン、まあ頑張れよ』『ポンコツ王子、痛かわいい』と思ってくれた方、☆やブクマでの評価・応援、よろしくお願いします。

また、作者のお話を気に入ってくれた方、こちらの連載もよろしくお願いします。


電子書籍化企画進行中

『ドアマット幼女は屋根裏部屋から虐待を叫ぶ』

→ https://ncode.syosetu.com/n0736lc/


または、作者の名前→作品→タイトル名と飛んで下さい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 い、一応己の改善すべき点を見つめ直したり、他者の意見を遅まきながら書き入れて取り入れる成長性と反省の余地はあるんですね。  身体鍛えるのがあまり苦にならない辺り、努力家でもあるようですし、今後は時折…
やめようぜ…倒置法は。
頭悪そう・・・ これしか浮かばなかった 王子ごめん
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ