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焔刻の彼方 ―Rebellion of Wings―  作者: ぺこいぬ
第1章 名もなき翼
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第6話 心に灯るもの

 ─砦の廃墟に、静かな風が吹き抜けた。


 今日も、小さな戦いを終えた。


 勝った。

 でも、疲れた。


「……少し休もう」


 司が呟き、崩れた壁の影に腰を下ろした。


 レオは、少し離れた場所で見張りに立つ。

 疲れていないわけではない。

 それでも、誰かが気を張っていなければならなかった。


 ふたりきりになった場所で、朋也が、ぽんと司の肩を叩いた。


「なあ、司」


「……なんだ」


「疲れただろ。少しぐらい、肩の力抜けよ」


 司は、短く息を吐いた。


「抜いたら、どこかが崩れる気がする」


 朋也は、ふっと笑った。


「そんなわけあるかよ。

お前一人で、この世界全部背負うつもりか?」


 司は答えなかった。

 答えたら、本当に壊れてしまいそうで。


 朋也は、遠い空を見上げた。


「誰より強いくせに、ほんっと不器用だな、相変わらず」


「強いから守れる──

そんなふうに思ってるんだろ」


「でもな、たまには守らせろよ」


 司は、そっと目を伏せた。


 胸の奥に、何か重いものが降り積もっていくのを感じながら。


「……悪いな」


「バカ」


 朋也が、軽く司の頭を小突いた。


「俺ら、そういうために一緒にいるんだろ」


「お前だけが、特別背負う必要なんかねぇよ」


「……わかってる」


 司は、小さく、でも確かに呟いた。


 朋也は、それで満足したように、また空を見上げた。


 どこまでも青い空。


 奪われるためにあるんじゃない。

 誰もが、自由に見上げるためにある空。


「なあ、司」


「……なんだ」


「絶対、勝とうな」


「──ああ」


 迷いのない返事だった。


 ふたりの間に、静かに風が吹いた。


 その風は、遠いどこかにいる、まだ見ぬ小さな光へと、そっと繋がっていった。

 

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― 新着の感想 ―
この展開大好きです! ラストの「その風は、遠いどこかにいる、まだ見ぬ小さな光へと、そっと繋がっていった」という締め方がしびれます! 引き続き読み進めていきます!
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