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焔刻の彼方 ―Rebellion of Wings―  作者: ぺこいぬ
第1章 名もなき翼
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第3話 夜空の下で

 ──砲火が、夜空を裂いた。


 あの町で子どもたちを保護してから、三日が経った。


 司たちは今、国軍が占拠する小規模な通信拠点の奪還作戦に参加している。

 この場所を落とせば、周辺地域への連絡網が繋がる。

 革命軍にとって、次の作戦への要となる拠点だった。


 数では、圧倒的に不利。

 けれど、彼らには退く理由がなかった。


「司さん、右っす!」


 レオの声が飛ぶ。


 金色の髪をなびかせ、彼は雷光を纏って駆ける。


 雷迅らいじん

 空気を裂き、電撃と共に超高速で突き抜ける能力。

 ――雷を操る、天使因子の力。


 司は、一瞬の判断で剣を振り上げた。


 焔刻えんこく

 自然界に宿る“火の理”を借り、内なる力として具現化する能力。

 ――炎を操る、天使因子の力。


 その身体にも、確かに天使因子が刻まれている。


 剣を走る焔が、闇を切り裂くように燃え上がった。


 ふたりの“天使”の力があれば、たとえ敵が数倍いても、道をこじ開けられる。


 ──だが、それでも。


 この世界には、力を持たない者もいる。


「ったく、また無茶すんなっての、司」


 軽口を叩きながら、朋也が後方から援護に回る。


 彼は、生まれつき何の能力も持たなかった。どんな因子も、焼き印も、その身には刻まれていない。


 けれど、剣一本で。

 知恵と経験で。

 命を張って、司とレオを支え続けている。


 力がなくても、戦える。

 力がないからこそ、信じられるものがある。


 それが、朋也だった。


 だが、敵の援軍は止まらない。


 泥のように重たく、戦いは続いた。


 小さな勝利を、必死に掴み取りながら。


* * *


 夜。


 司たちは、丘の上で、静かに星空を見上げていた。


「……この星空も、誰かに奪われるなんて、馬鹿みたいだよな」


 朋也が、ぽつりと呟いた。


 司は、何も言わなかった。


 ただ、この空の下――

 まだ救われずにいる誰かを思っていた。


 力の有無に関係なく。

 生まれた世界がどれだけ不条理でも。

 誰もが、自由に笑える世界を。


 ──そのために、戦う。


* * *


 冷たい部屋。


 錆びた空気。


 少女は、拘束されたまま、かすかに目を開けた。


 虚ろな瞳。

 誰にも届かない、細く震える手。


 それでも。

 彼女は、どこかにある光を――

 ただ、それだけを探していた。


 見上げた天井は、

 果てしなく遠かった。


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― 新着の感想 ―
描写と能力がかっこいいです♪ 書き方も読みやすくて、綺麗だなと思いました。 ブクマ押しました♪ 執筆お互い頑張りましょう(*´ω`*)
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