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第6話「魔王軍、勇者討伐に燃える」

ベルドは重苦しい空気をまといながら魔王城へと帰還した。王の間へと足を踏み入れると、四天王をはじめとする幹部たちが揃って彼を迎えた。すぐに魔王ヴァルゼルの視線がベルドに突き刺さる。


「……どうだった?」


王の問いに、ベルドは深く頭を下げる。


「申し訳ありません、勇者討伐は失敗しました。」


広間がざわめいた。魔王軍の幹部たちが驚愕の表情を浮かべる。彼らは当然のように、ベルドならば勇者を仕留められると考えていたのだ。


「ほう……」


魔王は椅子に身を預け、鋭い眼光でベルドを見下ろした。


「ベルド、お前が負けるとはな……相手はどれほど険悪で強力な存在だった?」


「……単純な戦闘力だけなら、確かに規格外でした。そして、やはりそれ以上に厄介なのは、あの勇者が“好かれることを誰からも拒絶された存在”だということです。」


「好かれない……? やはり、我々が抱くこの憎悪にも似た勇者の存在を心底拒絶する感情はそのせいであるか?」


四天王の一人が怪訝な表情を浮かべる。ベルドは拳を握りしめながら言葉を続けた。


「奴には『好感度が低いほど強くなる』というスキルがある。つまり、誰からも嫌われるほど、その力を増すのです。その対象わ我々をも含みます。」


その言葉に、場の空気が凍りついた。


「なるほど……では、貴様も好感度を上げぬように戦ったのか?」


「もちろんです。むしろ、私など敵としては最適だったでしょう。」


ベルドは苦々しく笑う。


「ですが、問題はそこではありません……勇者がどれほど嫌われていようと、彼の隣には巫女がいるのです。」


リリエル——その名を口にした瞬間、幹部たちの顔色が変わる。


「あの女か……」


「あれがいる限り、勇者は討ち取れぬというのか?」


「……彼女は勇者とは対照的に、誰からも愛される存在です。勇者の手足となり、時には盾となる。好感度の呪縛を受けない彼女がいる限り、勇者は本来受けるべき不利益すらも帳消しにしてしまうのです。」


魔王はしばし沈黙し、考え込む。そして、低く笑った。


「……面白いではないか。そんな理不尽な力を持つ勇者、我が手で叩き潰すにふさわしい。そして憎らしい。」


ヴァルゼルの言葉に、四天王たちの表情が変わる。先ほどまでの驚きや困惑は消え、戦意が宿っていく。


「全軍に通達せよ。勇者討伐作戦を本格的に始動する!!」


「おお……!」


「勇者には、好かれぬ地獄を、巫女には、絶望を与えてやろう!」


その瞬間、魔王軍全体に新たな戦意が生まれた。


ベルドは静かに目を閉じながら、その場を後にした。


——これでいい。


勇者よ、お前の戦いはこれからが本番だ。


次回予告:第7話「勇者、ついに風を操る…が?」


・勇者、またもや依頼をこなすことに!

・新スキルを獲得! …が、息を吹いたほうが早いレベル!?

・さらに、好感度上昇で雑草操作のスキルにも微妙な変化が…?

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