「ごめん。僕好きな人がいるんだ。それでもいい?」
当て馬は、切ない。。
「ごめん。僕好きな人がいるんだ。それでもいい?」
初対面、最初に王子に言われたのがその言葉だった。当て馬令嬢とは言っても、意外と王子に好かれるのではないかと淡い期待を描いていたが、早々に打ち壊された。
王子は、とても優しかった。初めて会った時から緊張していた私に微笑んでくれたし、たくさん話しかけてくれた。それにイケメンだから、好きになってしまうのも無理はない。ゲームの主人公の威力は途轍もなかった。
王子は、その優しさからそう言ったのだと思う。下手に期待を抱かせるのも悪いと思ってのことだろう。
「は、はい。全然大丈夫です!」
多分、町で出会ったヒロインのセレーヌだ。契約書の設定の中で書いてあった。小さいころ町で迷子になり、セレーヌと出会う。王宮貴族では、考えられないぐらい自由で無邪気なセレーヌに心を奪われるのだ。そして、聖女として力を目覚めたセレーヌが学園に入学し、王子と偶然出会うところからゲームがスタートする。
少しがっかりしたが、私は今の幸せをかみしめることにした。今は6歳。普通なら死んでいるところ、こんな贅沢な身分で王子とも関われる何て、幸せなことだと思わないといけない。
「私も、実は好きな人がいるのです。だから、気にしないでください。」
心地の良い関係でいたくて私はそう答えた。しかし、王子は微妙な顔をしている。
「ごめんね。気を使わせたくて言ったわけじゃないんだ。こういうこと、最初に言ったほうがいいんじゃないかと思って。ずっと考えてたんだけど。」
王子は、私が強がってそう答えたと思ったのだろう。申し訳なさそうにしている。
その様子を見て、私は本当にいい人と出会ったと思った。私のことを好きになってくれなくても、私と関わってくれるだけで凄く尊いことだと感じた。
「・・・実は強がりました。本当は好きな人、いないです。」
「でも、ありがとうございます。最初に言ってくれてよかったです。・・・友達になっていいですか?たまには、遊んでくれたら、嬉しいです。。」
そういうと王子は、ほっとしたように微笑んだ。綺麗な金髪が、光に当たってきらめいている。
・・・振られた笑顔に、ときめいてしまうなんて、やっぱり当て馬気質だ。
「もちろん!いっぱい遊ぼう!僕のこともため口でいいよ。何したい?」
これまで、友達ができてもすぐに死んでしまうから、自然と作らないようになっていた。作っても、死んでしまって友達を悲しませるからである。6回目の人生ぐらいから引きこもりがちになっていたメリンダは、久しぶりに友達が出来て本当にうれしく思った。
本当は、こうやって友達と仲良くしてみたかった。相手は王子で振られた相手だけど、友達というだけで心がポカポカしてきて、不意に泣きたくなった。
「っえ。なんで泣いてるの?やっぱり、僕のせいかな?」
子供だからか、上手く涙腺が管理できない。涙があふれてしまった。
「ち、違う。初めて、友達、出来たから嬉しくて。」
それに、まだ20年もずっと友達でいられるのが、嬉しい。。
これは言えないけど、本当にそう思った。
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