プロローグ
妄想でしかないんですが、こういう設定が好きです。
私は、寿命が決まっている。というのも、これは自分で望んだのだ。
最初の転生は、5歳で死んだ。次の生まれ変わりは、3歳、馬に踏まれて死んだ。次の生まれ変わりは、8歳、強盗を目撃して殺された。・・・このように、私はあまりに早く死ぬからなのか、記憶がずっと続いている。そして、必ず平均年齢5歳で死ぬのだ。
辛い、あまりに辛い。
だって、ハイハイを卒業して、離乳食を卒業して、やっと人生エンジョイ!というところで死ぬのだから。学校も、大人も経験したことがない。
今回は、6歳。ふと空を見上げると、きらりと光るものが落ちてきた。
あ、あれは、、、宝石!
カラスが落とした大きな宝石が頭に振ってくるのを見た最後に、私の記憶はブレークアウトした。
気が付くと、おかしな空間にいた。こんなことは初めてである。大抵は、いきなり次の人生が始まるのだ。
空間がぐにょぐにょ動いていて、ピンク色や紫色やオレンジ色の靄が、薄くかかっている。しばらくすると空間が安定してきて、役所のような場所だと気が付いた。白くてふわふわしたものが右往左往している。
前から人のような存在が現れた。
「あ、あなたどこから来たのですか?人の姿ですが…。」
「・・・知らないです。死んで、気が付けばここにいました。」
スーツを着た男の人は、手で頭を押さえて何かを思い出したようだった。
「ああ、あ、あああ。そういえば、今日閻魔様が、短命な人が来るって言ってましたね。」
短命な人・・・?私のことだろう。
「実は、10回連続で短命なのは珍しくてですね。この契約書にサインしてくれる人は、あなたしかいないと思って呼び出したんです。」
スーツの男の人は、メモをパラパラとめくると、契約書の内容を読み上げ始めた。
「人生:当て馬令嬢。寿命:20歳。役割:ヒロインと王子の当て馬」
「と、このような人生があるんです。とある女性がこの人生を歩むはずだったのですが、女性があまりにおっちょこちょいで、雲の上から落ちてしまって、違う人生に割り当てられることになってしまったのです。」
「でも、可哀想な役なので、あえて指名するのも忍びなくて、この人生を喜んでくれる人をたまたま見つけたんです。それがあなたです。」
私は、それを聞いて正直嬉しかった。なぜなら20歳も生きられるからだ。それもご令嬢!美味しいデザートも食べられるし、ふわふわの布団で寝られるし、かわいい服も着放題!・・・最高だ!
私は頷きながら答えた。
「正解ですよ。」
「・・・え?」
「私にその人生を振って、大正解です。私が一番その人生を楽しく生きられるにふさわしい人材です。」
スーツの人は、それを聞き少し引いていた。
「は、はい。それはよかったです。」
スーツの人は、一枚の契約書を私に差出した。
「当て馬令嬢、ヒロインと王子の当て馬として生まれる。20歳までは絶対死なない代わりに、20歳の誕生日で必ず死ぬ。」
この契約に、私は喜んでサインした。