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風薫る  作者: しょーた
第一部 居場所
3/61

いやったらしいアカ

 私は71部隊のほとんどの人間を殺したのだ。

 戦争が始まって私はたくさんの人を殺したのだけれど、味方も同じようにたくさん殺した。その方法は銃も弾丸もいらなかった。口だけであった。


 剣で殺すのは正直簡単でもあった。それは覚悟のできている人間同士では殺し合いでも、ある意味スポーツのような認識であるからだ。要するに敵も味方も、敗れる方が悪であり、勝つものが正義だからである。

 その考えが正しいとは思わない。しかし、私は斬り合いなら勝つ自信はあるし、相手がどんなに強かろうと命まで取られることは決してないと思っていた。だから最近のクマソ国では 暗殺が流行っていても私はなんとも思わなかった。


 少なくともそれまでのクマソ国では、どれだけ悪い連中に対しても暗殺だけは禁じていたはずであった。前のシマヅ卿の許可があったから大久保少将の父は島流しになり、アカマキ先生は暗殺されることもなかったのだ。

 しかし、今のクマソ国では事情が違った。むしろ暗殺を利用しているフシもある。要するに暗殺の需要が高まってしまったのだ。


 私が幼い頃のクマソ国はそんな国ではなかった。暗殺などなく、皆がシマヅ卿の考えに従い、臣は君を思い、時には命を捨てた。臣が命を惜しむことはなかった。それが美徳でさえと思われていた。それは社会というものの在り方からすれば間違っているのかもしれない。しかし私は、そんな人々を軽蔑する気にはなれなかった。

 だから私は軍人になった。つもりはなかったのだが、この国では貧乏の子供は大抵軍人になるしかなかった。


 私はこの国の士官学校を卒業した後、抜刀隊、騎兵隊、工作隊、海兵隊、参謀部隊の五つに分かれてあるが、参謀部隊に配属された。 血気盛んな抜刀隊、騎兵隊からは「隠れた蛇」と呼ばれる事があった。この名前は、我々が血を流すこともなく出世していく侮蔑でもあった。

 そういうわけで私は、イズモ国とのコクラグチの戦闘での新人幕僚の一人であった。


 敵がどのように攻めてきてどのような部隊が配置されているか、工作員の情報ですでに明らかになっていた。

 これだけの情報が明らかになっていれば、幕僚の人間はだいたいどこの部隊にどれだけの人数を割けば、どれだけの被害がでるかある程度予測ができた。そしてその一番被害がでるであろうというところに、私の同僚がたくさんいる71部隊が配置されようとしても、新人の私には発言権はなかった。というのも参謀本部というのは、一番効率のいい作戦が採用されるわけではなく、その時の権力者の一声、この時は大久保大佐が、司令官であったが、そういう人物の一声で作戦が全て決まってしまうからだ。そういう現場でくだされた作戦で我々下っ端ができるのは、その作戦のアフターケアで、つまり決められた作戦は変更できないのだからいかに被害を減らすかに苦心していた。


 つまり作戦に違和感覚えても誰も意見をしてはいけないのが我々クマソ国の掟であった。


 しかし、あらかじめ敵の情報が漏れていたとしても、その通りにいかないのが戦争というものだ。敗北の将軍の数だけ予想外のことがある。戦争というものは決して人間だけの手に負えるものではない。


 そうとわかっていても私は大久保大佐に意見をした。その言葉が意味するのは、結局私は同僚を殺したくないだけのわがままであった。

 大久保大佐は優しく「ではどの部隊なら、君はここに配置してもいいと考えるのだね」と私に問いかけた。周りは私を冷めた目で見ていた。私は老人の多い部隊の名前を言った。


 つまり私は今後老人は国のためにならず、お荷物であるから、若い未来ある士官候補生が何人かいる部隊を変わるべきだと主張していたのだ。


 多分私は最低の人間だろう。そんなことすら頭の隅に浮かばなかったのは、私がそれほど焦っていたに違いないからである。今考えると、私はどちらを優先すべきであったかわからない。

 もちろん、私の提案は却下された。それでも食い下がらない私は参謀本部の上司に取り押さえられ、みすみす同僚が死んでいく戦闘を丘の上で眺めていたのである。



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